私が唯一愛した人は、双子の姉を愛していたので、友情と仕事に生きることを決めました

紫蘭

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秘密のお茶会3

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 レイナは淑女教育というものがことごとく苦手だった。
 特に淑女の嗜みの1つとぃれる刺繍はレイナの天敵だ。
 花の図案を参考に刺繍をして禍々しい物体を創造してしまったのも、みなの記憶に新しい。
 最近ではあまりの酷さに、スミカとフレナがこっそり課題の手伝いをしている。

 曰く、「レイナ様の刺繍を人様に見せられるようにするのは、難解な図案の刺繍をするよりよっぽど難しい」そうだ。
 そのおかげか、2人の刺繍の腕が凄いスピードで上達していると専らの噂だ。

 バイオリンは早々に教師が匙を投げた。
 音階すらまともに奏でることが出来ず、酷い騒音を屋敷中に響かせたからである。

 ピアノはバイオリンほどでは無いが、得意とは言い難い。
 ただ、バイオリンと違って、鍵盤を押せば音が鳴るため、まだ音楽が成立する。

 礼儀作法に関しては小さい頃から乳母であるネカに叩き込まれたおかげか、人前では何とかなっている。
 最も、秘密のお茶会のような限られた空間では、マナーはどこへ消えたのかと言いたくなるだろが。

 ダンスに関しては持ち前の運動神経のおかげか、1番まともな仕上がりだ。
 身体を動かすのが好きなレイナが唯一熱心に取り組んだレッスンと言っていい。

 ほとんどが壊滅的な淑女教育の代わりと言っては何だが、領地経営に関しては、本来公爵家の娘が必要としない部分まで把握している。

 レイナは将来的には婿を取るか、他家に嫁ぐ立場だ。
 淑女教育は必須だが、領主教育は必須では無い。
 ただ、こと勉強に関することになると、レイナの実力は計り知れなかった。

 それともう1つ、レイナが得意とするのは剣術。
 幼い頃に騎士団の訓練に忍び込み、その才能を騎士団長に見込まれてからというもの、レイナは時折騎士団の訓練に参加していた。

 騎士団長が、「身を守るすべを覚えておくのに越したことはない」とレイナに訓練をつけてくれたお陰で、レイナの実力はメキメキと伸びた。

 領主教育と剣術。

 この2つのお陰で「レイナ様が男の子だったら」の声が絶えないのだ。
 レイナ自身、自分が男だったらと思ったことは数しれない。

 アイドクレース侯爵家には、現在レイナとアイリスしか子供がいない。
 長女は一応先に生まれたとされるアイリスだ。
 男子が居ない侯爵家としては、親戚から養子を取るか、長女が婿を取り、次女が他家に嫁いで血縁関係を広げていくのが一般的だが、アイリスには後継を産むほどの体力がないため、婿を取るのも、嫁ぐのも厳しい。

 由緒あるアイドクレース侯爵家は、今窮地にいるのだ。

 だからこそ、レイナの社交界デビューはとても重要だ。


「全部ほっぽり出して気楽に生きたい」

 ぼそっとレイナの口から本音が漏れる。

「「「「無理でしょ」」」」

 一斉に4人から突っ込みが入る。

「だよね~」

 レイナもそれをわかった上での愚痴だ。

「ね、ラエル、この後手合わせ付き合って。ストレス発散したい」

「いいけど、衣装合わせとかいいの?」

「今日は多分大丈夫。この前ある程度方向性は決めたし、今は見本の布待ちだから」

「じゃ、久しぶりにやるか」

「うん」

 ボーン、ボーン。

 時計が16時を告げる鐘を打つ。

「いけない!呼ばれてるんだった!」

 スミカとフレナが慌てて席を立つ。

「片付けやっておくから行っていいよ。今日の午後の仕事はあらかた終わってるし。レイナ様も明るいうちに手合わせしてきた方がいいでしょ?」

「ほんと?助かる~。じゃあリアン、お願いね。それ、好きにしていいから。ラエル、行こ!」

 リアンに片付けを任せて、スミカとフレナ、ラエルとレイナは部屋を出る。
 おそらくリアンはあのままあそこでもう1杯お茶を楽しむのだろう。
 全員それをわかった上で、ほぼ毎回有難くリアンに片付けをお願いしている。
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