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秘密のお茶会1

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 楽譜を手に、レイナは自室へと戻る。
 あの後、レイナは1時間ほどレッスンを受けた。

 リストの教え方は今までの教師たちと異なり、ひたすらに正確さを求めるのではなく、音楽を作っていくことに注力していた。
 次回までの課題も出たが、それすらもレイナの好みに合わせたもので、練習の憂鬱が少しだけ軽くなった。

 長い廊下を歩く足取りは、ピアノのレッスン後にしてはものすごく軽い。
 その事に気づいたレイナはにやけそうになる頬を両手で抑えた。
 こうやって誰の目も気にせずに歩けることもにやける要因の一つだ。
 本当は、1人で屋敷の中を歩き回るのも良しとはされていない。
 今はまだ、子供だからと見逃されているだけ。
 成人すれば、少なくとも護衛騎士はずっと付きっきりとなる。
 でも、それも気心のしれたラエルだと思えば、そんなに苦ではない。

「早く伝えたい……」

 ラエルたちもこのモラトリアムが終わる時を近づいていることを感じている気がする。
 今までに増して、一緒にいる時間を大切にするようになった。
 このモラトリアムが延長されることを知っているのは、今の所レイナのみ。
 4人に今後レイナの専属となることを伝える日が待ち遠しかった。

 そんなことを思いながら廊下を歩いていると、レイナの部屋の前に人影が見えた。
 横並びで3人。そこから頭1つ飛び抜けているのが騎士見習いのラエルだ。

「あ、レイナ!」

 いち早くレイナに気がついて声を上げたのはラエル。すらっとしたスタイルと鍛え抜かれた身体、金髪青眼というどこかのおとぎ話から飛び出してきたような姿は、女子たちの注目の的だ。

「レッスンお疲れ様、お茶にしましょ」

「ピアノのレッスンの割には疲れてなさそうね」

 バスケットを抱えて微笑んでいるのはスミカとフレナ。その奥でラエルの影に隠れそうになっているのがリアンだ。

 この4人とレイナは時間を見つけてはレイナの部屋で秘密のお茶会を楽しんでいる。
 大人たちにお目こぼしをされている特別な時間。
 たぶん、城の中でこのことを知らないのは、レイナとアイリスの母であるルナリア=アイドクレースぐらいだろう。

「スミカ、今日のお菓子は何?」

「レーズンたっぷりのバターサンドよ」

 定期的に秘密のお茶会が行われていることを知っている厨房の人達は、こうやっていつもお菓子を横流ししてくれる。
 茶葉はレイナが行商人から買い上げているものが自室に保管されているため、お菓子さえ揃えば、楽しいティータイムの始まりだ。
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