10 / 44
秘密のお茶会1
しおりを挟む
楽譜を手に、レイナは自室へと戻る。
あの後、レイナは1時間ほどレッスンを受けた。
リストの教え方は今までの教師たちと異なり、ひたすらに正確さを求めるのではなく、音楽を作っていくことに注力していた。
次回までの課題も出たが、それすらもレイナの好みに合わせたもので、練習の憂鬱が少しだけ軽くなった。
長い廊下を歩く足取りは、ピアノのレッスン後にしてはものすごく軽い。
その事に気づいたレイナはにやけそうになる頬を両手で抑えた。
こうやって誰の目も気にせずに歩けることもにやける要因の一つだ。
本当は、1人で屋敷の中を歩き回るのも良しとはされていない。
今はまだ、子供だからと見逃されているだけ。
成人すれば、少なくとも護衛騎士はずっと付きっきりとなる。
でも、それも気心のしれたラエルだと思えば、そんなに苦ではない。
「早く伝えたい……」
ラエルたちもこのモラトリアムが終わる時を近づいていることを感じている気がする。
今までに増して、一緒にいる時間を大切にするようになった。
このモラトリアムが延長されることを知っているのは、今の所レイナのみ。
4人に今後レイナの専属となることを伝える日が待ち遠しかった。
そんなことを思いながら廊下を歩いていると、レイナの部屋の前に人影が見えた。
横並びで3人。そこから頭1つ飛び抜けているのが騎士見習いのラエルだ。
「あ、レイナ!」
いち早くレイナに気がついて声を上げたのはラエル。すらっとしたスタイルと鍛え抜かれた身体、金髪青眼というどこかのおとぎ話から飛び出してきたような姿は、女子たちの注目の的だ。
「レッスンお疲れ様、お茶にしましょ」
「ピアノのレッスンの割には疲れてなさそうね」
バスケットを抱えて微笑んでいるのはスミカとフレナ。その奥でラエルの影に隠れそうになっているのがリアンだ。
この4人とレイナは時間を見つけてはレイナの部屋で秘密のお茶会を楽しんでいる。
大人たちにお目こぼしをされている特別な時間。
たぶん、城の中でこのことを知らないのは、レイナとアイリスの母であるルナリア=アイドクレースぐらいだろう。
「スミカ、今日のお菓子は何?」
「レーズンたっぷりのバターサンドよ」
定期的に秘密のお茶会が行われていることを知っている厨房の人達は、こうやっていつもお菓子を横流ししてくれる。
茶葉はレイナが行商人から買い上げているものが自室に保管されているため、お菓子さえ揃えば、楽しいティータイムの始まりだ。
あの後、レイナは1時間ほどレッスンを受けた。
リストの教え方は今までの教師たちと異なり、ひたすらに正確さを求めるのではなく、音楽を作っていくことに注力していた。
次回までの課題も出たが、それすらもレイナの好みに合わせたもので、練習の憂鬱が少しだけ軽くなった。
長い廊下を歩く足取りは、ピアノのレッスン後にしてはものすごく軽い。
その事に気づいたレイナはにやけそうになる頬を両手で抑えた。
こうやって誰の目も気にせずに歩けることもにやける要因の一つだ。
本当は、1人で屋敷の中を歩き回るのも良しとはされていない。
今はまだ、子供だからと見逃されているだけ。
成人すれば、少なくとも護衛騎士はずっと付きっきりとなる。
でも、それも気心のしれたラエルだと思えば、そんなに苦ではない。
「早く伝えたい……」
ラエルたちもこのモラトリアムが終わる時を近づいていることを感じている気がする。
今までに増して、一緒にいる時間を大切にするようになった。
このモラトリアムが延長されることを知っているのは、今の所レイナのみ。
4人に今後レイナの専属となることを伝える日が待ち遠しかった。
そんなことを思いながら廊下を歩いていると、レイナの部屋の前に人影が見えた。
横並びで3人。そこから頭1つ飛び抜けているのが騎士見習いのラエルだ。
「あ、レイナ!」
いち早くレイナに気がついて声を上げたのはラエル。すらっとしたスタイルと鍛え抜かれた身体、金髪青眼というどこかのおとぎ話から飛び出してきたような姿は、女子たちの注目の的だ。
「レッスンお疲れ様、お茶にしましょ」
「ピアノのレッスンの割には疲れてなさそうね」
バスケットを抱えて微笑んでいるのはスミカとフレナ。その奥でラエルの影に隠れそうになっているのがリアンだ。
この4人とレイナは時間を見つけてはレイナの部屋で秘密のお茶会を楽しんでいる。
大人たちにお目こぼしをされている特別な時間。
たぶん、城の中でこのことを知らないのは、レイナとアイリスの母であるルナリア=アイドクレースぐらいだろう。
「スミカ、今日のお菓子は何?」
「レーズンたっぷりのバターサンドよ」
定期的に秘密のお茶会が行われていることを知っている厨房の人達は、こうやっていつもお菓子を横流ししてくれる。
茶葉はレイナが行商人から買い上げているものが自室に保管されているため、お菓子さえ揃えば、楽しいティータイムの始まりだ。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる