私が唯一愛した人は、双子の姉を愛していたので、友情と仕事に生きることを決めました

音楽の教師

「レイナ、アイリス、来週から2人の音楽の教師としてルチル男爵家の三男、リスト＝ルチルに来てもらうことになった」

　突如としてアイリス＝アイドクレースの部屋にやってきてそう言ったのは、アイドクレース侯爵。レイナ＝アイドクレースとアイリス＝アイドクレースの父だ。

「リスト様ってあの有名かピアノの貴公子の？」

　音楽を愛するアイリスがすぐさま食いつく。一方、音楽にはとんと興味がないレイナはきょとんとしている。

「そうだ。2人ももう15歳だ。アイリスは身体が弱いから社交界デビューは厳しいだろうが、レイナはもうすぐデビューだからね。音楽にももう少し力を入れないと、と思って先生を探したんだ。そうしたら彼が引き受けてくれてね。
　 アイリスも音楽が好きだろう？だから、2人の教師という形にした｣

　わぁ、と華やかな笑顔を見せるアイリスの横で、苦い顔をしているレイナを見つけ、アイドクレース侯爵は苦笑いする。

「2人とも、頑張りなさい。それからレイナは夕食の後に私の執務室に来るように」

　レイナはアイリスと侯爵が「お父様、もう行っちゃうの？」という会話を繰り広げている声が全く耳に入っていない様子で、憂鬱な気持ちに沈んでいた。