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13・腹黒弟の愛が重い
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というか、うっかり誤魔化されそうになっていたが。
私は実家に、世界一かわいい妹(メルクールに言わせると、私の小さい頃にソックリらしいが)を愛でに来たわけでも、弟に甘やかされに来たわけでも、美味しいごはんやおやつを食べに来たわけでもない。
メルクールが『ゴロー』であるなら、あの場に…王城で、私がアンダリアスに酔ってクダ巻いていた謁見の間に、『仮面の男』の代わりに現れたのも、百歩譲って頷ける。
『アローン』は歴とした王族であり、『ゴロー』はその従者なのだから、王城の隠し通路の場所を彼から聞いていても、確かにおかしくはないのだ。
というか、王女がシナリオ通りに城から連れ出されている事を考えたら、やはりあの日城に『仮面の男』は来ていたと考えるのが自然だ。
そこまで説明はされなかったがこの展開を考えると、ゲームの展開通りであったならば『仮面の男』がファルコと共にアンダリアスと戦う間、王女を城から助け出したのは『ゴロー』だったのだろうと思う。
メルクールが出てきたのは、アンダリアスと戦っていたのがファルコではなく私だった上、負けイベントにも再戦にもならなかったせいか。
(あれをシナリオ的に『戦い』と判定していいのかどうかまでは、私にはよくわからないが)
ゲームでのゴローの登場はこの王城奪還の後日、とりあえず平和になった城下にファルコを案内したマリエルがうっかり彼とはぐれてしまい、探している時にゴローに声をかけられるという出会いになるわけだが、王城の隠し扉の向こうにゴローもいたのだと仮定すると、
「こんなきっかけの出会いでも後から振り返れば、運命だったと思えるかもしれないでしょ?」
などという歯の浮くような台詞まで吐いていたこの出会いが、もう一気に胡散臭くなる。
この場合、マリエルやファルコの存在を知っていた彼が最初から2人を監視しており、一番効果的なタイミングで自分の存在を印象付けたようにしか思えない。
うむ、確かにファンは騙されていた。
ゴロー、恐ろしい子……!!
いや、まあそれはそれとして。
ロアン王子を助けたのがシュヴァリエ商会だったとすれば、少なくとも父は最初から王子の所在を知っていたことになる。
メルクールがそれを教えられたのはいつのタイミングだったのか。
私が知らされていなかったことを考えると、私が神殿入りした後ではないかと思うけど。
母も恐らく最初は知らなかったろう。
あのひと、隠し事とかできるひとじゃないし。
けど原作での『ゴロー』の両親の不仲って、ここら辺にも原因があったんじゃなかろうか。
…もっとも、『ゴロー』との出会いが仕組まれたものと判明した今となっては、それすらフェイクだった可能性も捨て切れないけどね!
・・・
…もう完全にねむねむモードになったディーナをメイドが寝室へ連れて行き、私とメルクールは普通に夜のティータイムに突入しており、『お茶のおかわりは自分たちで淹れるから』というメルクールの言葉により、使用人たちはこの後の仕事に戻っていって、今はダイニングに私と弟の2人きりだ。
聞くなら今しかない……ないのだが。
ぐぬぬ、どう話を切り出したものやら。
顔を合わせていないのに、『仮面の男』のことを口に出すわけにはいかないだろうし。
そんな事を考えながらちらちらと弟の顔を伺っているのがまるわかりだったのだろう。
メルクールはこちらを見返してフッと笑うと、軽く肩を竦めて言った。
「質問があるのは、最初からわかってるから。
まずは、何故俺があの場に現れたか…でしょ?
あの後父さんには、どこまで姉さんに話すかは俺の判断に任せると、許可を貰ってる。
そして俺は、姉さんが望むなら王の弱みだって握って教えてあげるつもりだから、この先、俺が姉さんに隠すことは何ひとつない。
…ただ、姉さんには少し、ショックな事実もあると思うから、それだけは覚悟して聞いて欲しい。」
…王の弱みは要らないが、蚊帳の外に置かずにちゃんと話してくれるというのならば、私に否やはない。
それに前世の原作知識がある私は、彼らが思っているより遥かに現在の状況を理解している筈だから、ショックな事など、多分ない。
私が頷くと、メルクールは椅子を私のそばに寄せ、肩を抱き込むようにして距離を詰めた…いや、顔近くない!?
そこまで近付かなくても聞こえるからね?
「まず前提として、今神殿で保護して姉さんが世話してる勇者くんは、王立図書館の隣の自然魔法化学研究所の研究員のひとりが、研究所に保管されていた、かつての王子の遺伝子を勝手に使って生み出した、王子の複製の失敗作だ。」
いきなりぶっ込んで来たな!!知ってたけど!
「……やっぱり、驚くよね。」
確かに、違う意味で驚いたわ!
物語終盤に特定のルートのみで明らかになる筈のネタバレを、いきなりここでかますとか思わないからね!!
私は実家に、世界一かわいい妹(メルクールに言わせると、私の小さい頃にソックリらしいが)を愛でに来たわけでも、弟に甘やかされに来たわけでも、美味しいごはんやおやつを食べに来たわけでもない。
メルクールが『ゴロー』であるなら、あの場に…王城で、私がアンダリアスに酔ってクダ巻いていた謁見の間に、『仮面の男』の代わりに現れたのも、百歩譲って頷ける。
『アローン』は歴とした王族であり、『ゴロー』はその従者なのだから、王城の隠し通路の場所を彼から聞いていても、確かにおかしくはないのだ。
というか、王女がシナリオ通りに城から連れ出されている事を考えたら、やはりあの日城に『仮面の男』は来ていたと考えるのが自然だ。
そこまで説明はされなかったがこの展開を考えると、ゲームの展開通りであったならば『仮面の男』がファルコと共にアンダリアスと戦う間、王女を城から助け出したのは『ゴロー』だったのだろうと思う。
メルクールが出てきたのは、アンダリアスと戦っていたのがファルコではなく私だった上、負けイベントにも再戦にもならなかったせいか。
(あれをシナリオ的に『戦い』と判定していいのかどうかまでは、私にはよくわからないが)
ゲームでのゴローの登場はこの王城奪還の後日、とりあえず平和になった城下にファルコを案内したマリエルがうっかり彼とはぐれてしまい、探している時にゴローに声をかけられるという出会いになるわけだが、王城の隠し扉の向こうにゴローもいたのだと仮定すると、
「こんなきっかけの出会いでも後から振り返れば、運命だったと思えるかもしれないでしょ?」
などという歯の浮くような台詞まで吐いていたこの出会いが、もう一気に胡散臭くなる。
この場合、マリエルやファルコの存在を知っていた彼が最初から2人を監視しており、一番効果的なタイミングで自分の存在を印象付けたようにしか思えない。
うむ、確かにファンは騙されていた。
ゴロー、恐ろしい子……!!
いや、まあそれはそれとして。
ロアン王子を助けたのがシュヴァリエ商会だったとすれば、少なくとも父は最初から王子の所在を知っていたことになる。
メルクールがそれを教えられたのはいつのタイミングだったのか。
私が知らされていなかったことを考えると、私が神殿入りした後ではないかと思うけど。
母も恐らく最初は知らなかったろう。
あのひと、隠し事とかできるひとじゃないし。
けど原作での『ゴロー』の両親の不仲って、ここら辺にも原因があったんじゃなかろうか。
…もっとも、『ゴロー』との出会いが仕組まれたものと判明した今となっては、それすらフェイクだった可能性も捨て切れないけどね!
・・・
…もう完全にねむねむモードになったディーナをメイドが寝室へ連れて行き、私とメルクールは普通に夜のティータイムに突入しており、『お茶のおかわりは自分たちで淹れるから』というメルクールの言葉により、使用人たちはこの後の仕事に戻っていって、今はダイニングに私と弟の2人きりだ。
聞くなら今しかない……ないのだが。
ぐぬぬ、どう話を切り出したものやら。
顔を合わせていないのに、『仮面の男』のことを口に出すわけにはいかないだろうし。
そんな事を考えながらちらちらと弟の顔を伺っているのがまるわかりだったのだろう。
メルクールはこちらを見返してフッと笑うと、軽く肩を竦めて言った。
「質問があるのは、最初からわかってるから。
まずは、何故俺があの場に現れたか…でしょ?
あの後父さんには、どこまで姉さんに話すかは俺の判断に任せると、許可を貰ってる。
そして俺は、姉さんが望むなら王の弱みだって握って教えてあげるつもりだから、この先、俺が姉さんに隠すことは何ひとつない。
…ただ、姉さんには少し、ショックな事実もあると思うから、それだけは覚悟して聞いて欲しい。」
…王の弱みは要らないが、蚊帳の外に置かずにちゃんと話してくれるというのならば、私に否やはない。
それに前世の原作知識がある私は、彼らが思っているより遥かに現在の状況を理解している筈だから、ショックな事など、多分ない。
私が頷くと、メルクールは椅子を私のそばに寄せ、肩を抱き込むようにして距離を詰めた…いや、顔近くない!?
そこまで近付かなくても聞こえるからね?
「まず前提として、今神殿で保護して姉さんが世話してる勇者くんは、王立図書館の隣の自然魔法化学研究所の研究員のひとりが、研究所に保管されていた、かつての王子の遺伝子を勝手に使って生み出した、王子の複製の失敗作だ。」
いきなりぶっ込んで来たな!!知ってたけど!
「……やっぱり、驚くよね。」
確かに、違う意味で驚いたわ!
物語終盤に特定のルートのみで明らかになる筈のネタバレを、いきなりここでかますとか思わないからね!!
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