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11・弟よ、お前もか
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※本日2話投稿してます。
念の為前話御確認ください。
☆☆☆
「御魂を鎮め、天の翼に乗って、心安らかに…」
此度の帝国による王城制圧の際、犠牲となった王女の夫君、エリック殿下の葬儀が、王城にてしめやかに執り行われている。
本来ならば大神官様が祈りを捧げるその傍に立っている筈の、王女の姿がそこにはない。
国王夫妻が後ろに立っているのみで、彼らはこれが終わるとエリック殿下の祖国であるバルゴ王国へ、帝国対策も兼ねた話し合いに出向かねばならない。
色々違った部分はあったものの概ねイエ国のシナリオ通りに王城は奪還されたが、やはり王女は人質達の中にも、アンダリアスが隔離していたと自供した部屋の中にも発見できなかった。
本来のシナリオでは、王女を連れ出したのは、ファルコとアンダリアスの一騎打ちの時に現れる筈の仮面の男の部下たちなのだが…実際にはファルコが飛び込んでくる前に、メルクールが場を制してしまったので、仮面の男は出てこなかった。
やはりヒロインがいない事でシナリオが変化しているという事なのだろうが、何故あの場に現れたのがメルクールだったのか。
こう言っちゃなんだがうちの弟、ただの商人の卵だからね?
彼も一応事業家というくくりではあるわけだが、商会の後継者に相応しいと正式に認められるまでは『シュヴァリエ』の名を出すなと父から厳命されているので、仕事の時は別の名前を使……アレ?
今なんか引っかかったけど、何だっけ?
「神官長?」
と、隣の高い位置から声がかけられて、声の方向に顔を向ける。
「…なんでもないわ、ファルコ。
それより、貴方は私の後よ。手順は覚えていて?」
「手前で花を受け取って、卓に置く。
去るときに一礼。
みんなが同じ動きをしているから、そろそろ覚えたよ。」
「いい子ね。」
「…そんなふうに言われるのは、嬉しいけど面白くない。」
んー?褒めたのに何故か拗ねられたんだが。
弟は昔、こう言うと素直に喜んでくれたんだけどな。
けど、そういえば同じ褒め方をしてもダリオは喜ばなかったかも。
……うん、男の子はよくわからない。
☆☆☆
ゲームでは、この王城奪還イベントの後、アンダリアスを倒したファルコとその教官であるマリエルは王宮預かりとなり、ファルコの近衛騎士にバアルが任命される。
これは王宮が、勇者を王族待遇で迎えたという事だ。
本来なら王宮の騎士団の団長を勤めていてもおかしくない実績と実力をもつバアルが、一部隊長という地位から持ち上げられるのを固辞していたのは、12年前の離宮での、王太子ロアンの暗殺事件に端を発する。
一般的に発表されている王子の死は、滞在していた離宮の火災に巻き込まれたという事実のみだが、当時の神殿幹部クラスに所属していた者が計画して、配下が実行した事であるというのは公然の秘密だ。
この事件は、当時王子の近衛騎士を務めていた彼が、家の事情で不在だった時に起きたもの…というか、明らかに彼が不在だったこのタイミングを狙われたものであり、つまりは王子の死に責任を感じている故のことだったわけだ。
王宮としては出世を固辞する彼を表舞台に戻すまたとない機会であり、武勲を挙げた勇者の近衛にする事は、その第一歩に繋がる…はずだった。
…何故『はずだった』と敢えて強調したかというと、実際にはそうなっていないからだ。
私はただ酔っ払っていただけなのだが、なんだかよくわからないうちに、アンダリアスを捕らえたのは私という話になっており、ファルコは既に縛り上げられて騎士たちに引き渡された彼としか顔を合わせていない。
武勲を挙げていないファルコは、神託の勇者とはいえ、今はただの神殿の騎士見習いに過ぎず、私の従者として連れて来たのでなければ、この席に参列など到底叶わなかった。
勿論、王宮預かりになどなる筈もない。
私も、神官見習いであったマリエルと違って、神殿においてある程度高い地位にいる人間の為、やはり王宮に呼ばれるなんて事にはならなかった。
というか、王宮は私を置きたがったが大神官様が断固拒否した。
曰く『あの子が居ないとわたしの仕事を、半分こっそり押しつける先がなくなるのよ!』だそうだ。
そうか、私が忙しいのは大神官様の仕事が半分回ってきているせいだったのか。
ひょっとしたらこの先婚期が更に遅れたら、私はあのひとが引退したと同時に大神官にさせられてしまうかもしれない。
そ、そうなる前に結婚相手を、なんとしてでも見つけなければ…ぐぬぬ。
うん、結婚退職するという事になれば、いくら大神官さまとて、それを阻んでまで私を、神殿に引き止めることはしない筈……たぶん。
…話を戻すが、私たちが神殿を動かないから、バアル様がファルコの近衛騎士になる事もなく、それでもアンダリアスを欺き(いや、アイツが勝手に彼を味方にしたと思い込んだだけだが)神殿の協力を仰いだ事実は評価されて、彼は間もなく騎士教官に任命される事が決まっている。
これは名目上は役職と言えるものではなく、本来は閑職に近い立場だ。
何故なら、騎士見習いとして一通りの講義を卒業し、騎士になるとその時点で、教官は彼らより階級が下になるからだ。
だがこれは、出世を固辞するバアル様と彼を重用したい王宮の、互いにとってギリギリの妥協案であり、これにより全ての近衛騎士がこぞってバアル様を『先生』と仰ぐ事になった。
こうなると事実上、彼の立場は騎士団長と同等、下手すればそれより上となったも同様だった。
正直、彼が自分より下の地位にいる事に、やりにくさを感じていた後輩騎士たちにとっては、とてもありがたい事だったらしい。
ついでに言えばゲームの中でもバアル様は屈指の物知りキャラであり、王宮での育成パートが始まると、カリキュラムを実行する時には、最初は必ず彼の教えを受けることとなる。
攻略対象キャラが出揃ってからは、マリエルとの親密度によって、実行時に登場するキャラが変わるのだが。
ちなみにネタバレをすれば、彼のストーリーでトラウマ案件となっているロアン王子は実は死んではいない。
王家御用達の豪商が事前に情報を得て、密かに配置していた私兵に、危ういところで助けられている。
その王子こそが、本来なら王城奪還イベントに登場していた筈の仮面の男である。
助けられた王子は、大きくなるまでは国境付近の街にある、彼を助けた商人の生家で、商人の兄の息子として育てられており、成長して密かに王都に戻ってからは、やはりその商人が派遣した男を側近として、立場的に自由に動き回れない自分の『目』として働かせていた。
ちなみにこの主従も勿論攻略対象キャラであるが、王子の方は攻略できるのが2周目以降の、所謂隠れキャラだ。
キャラクター名はアローン……うん、安直だな!
本名のロアンを少し逆さにしただけだもんね!
それはともかく、ゴロー・ホランという名の側近の方は、1周目でも攻略は可能で、王城解放後に必ず協力者として登場する。
だが彼のシナリオでは、単なる遊び人の豪商のボンボンが、理想の女性を探す中でヒロインと出会い、勇者を育成する中で共に成長していくというだけの物語に過ぎない。
アローンのシナリオを追って初めて、この2人が主従であることが判明するのだ。
このシナリオのゴローは彼自身のストーリーよりも数倍カッコイイと専らの評判で、実際にプレイしたファンの間からは『騙された』『ゴロー2人いる説』『こっちを攻略したかった』という声が絶えなかった。
ちなみにゴロー・ホランは本名ではない。
父親から、後継者に相応しいと正式に認められるまでは商会の名を出すことを禁じられており……なんか、どっかで聞いたなそんな話。
………………………………
…ゴロー・ホラン。23歳。声優:小野田伊助。
攻略対象者のひとりで、商人の道楽息子。
不仲な仮面夫婦である両親の間で、ほぼ使用人に育てられた為、恋愛や結婚に対する理想が高い。
それ故に完璧な女性を探しており、行く先々で女性に声をかけて、軽く口説きながらもその実、女性をシビアな目で見つめている、ロマンチストなのかリアリストなのかよくわからない遊び人。
実家の事業の末端部分を任され、遊び歩きながらも一応は商売の為、市井の情報を集めているという彼は、帝国の侵攻を退けた勇者と彼を育てるヒロインに興味を示して、協力者となる。
…が、実は遊び人の顔は表向きで、遊び歩く態で諜報活動に従事する、『仮面の男』アローンの側近。
エンディングでようやく明かされるその本名は……
メルクール・シュヴァリエ………だ。
「お前もか─────ッ!!!!!」
「え、神官長!?」
なんで今まで気付かなかった私(2回目)!!
うちの弟攻略対象者だったわ!!
てゆーかそうだよね!王宮御用達の豪商って、まさしく実家のことだよね!!
…王族の葬式の最中にいきなり叫んで注目を浴びた事に気付いた私は、とりあえず倒れて誤魔化すことでその場を切り抜けた。
ファルコとダリオにものすごく心配された。
反省はしている。
・・・
献花を終えた後、体調を理由に早々に王宮を辞した私は、ファルコをダリオに預けて、3日ほど実家に帰る事にした。
そもそもメルクールからは、一度帰ってこいと言われている。
弟は一週間ほどと言っていたが、そんなに休んだら帰ってから積まれる不在中の仕事の量に発狂する未来しか見えない。
これくらいでちょうどいいだろう。
……気がついてみれば名前も、あとよく思い出してみれば確かに顔も一緒だけど、うちの弟と攻略対象の『ゴロー』は、キャラクター設定とその背景が全然違う。
そもそもゴロー・ホランはひとりっこで姉も妹も居なかったし、ダイダリオンとの親交だってなかった筈だ。
両親は2人きりの生活に突入した途端妹作ったくらい夫婦仲良好だし、うちのメルクールはむやみやたらに女性に声をかけるようなナンパ男じゃない……たぶん。
王城で会うまでは、ほぼ4年近く手紙だけのやり取りしかしておらず、顔合わせて話をする機会がなかったから、ひょっとしたらその間に何か、心境の変化があったのかもしれないが。
念の為前話御確認ください。
☆☆☆
「御魂を鎮め、天の翼に乗って、心安らかに…」
此度の帝国による王城制圧の際、犠牲となった王女の夫君、エリック殿下の葬儀が、王城にてしめやかに執り行われている。
本来ならば大神官様が祈りを捧げるその傍に立っている筈の、王女の姿がそこにはない。
国王夫妻が後ろに立っているのみで、彼らはこれが終わるとエリック殿下の祖国であるバルゴ王国へ、帝国対策も兼ねた話し合いに出向かねばならない。
色々違った部分はあったものの概ねイエ国のシナリオ通りに王城は奪還されたが、やはり王女は人質達の中にも、アンダリアスが隔離していたと自供した部屋の中にも発見できなかった。
本来のシナリオでは、王女を連れ出したのは、ファルコとアンダリアスの一騎打ちの時に現れる筈の仮面の男の部下たちなのだが…実際にはファルコが飛び込んでくる前に、メルクールが場を制してしまったので、仮面の男は出てこなかった。
やはりヒロインがいない事でシナリオが変化しているという事なのだろうが、何故あの場に現れたのがメルクールだったのか。
こう言っちゃなんだがうちの弟、ただの商人の卵だからね?
彼も一応事業家というくくりではあるわけだが、商会の後継者に相応しいと正式に認められるまでは『シュヴァリエ』の名を出すなと父から厳命されているので、仕事の時は別の名前を使……アレ?
今なんか引っかかったけど、何だっけ?
「神官長?」
と、隣の高い位置から声がかけられて、声の方向に顔を向ける。
「…なんでもないわ、ファルコ。
それより、貴方は私の後よ。手順は覚えていて?」
「手前で花を受け取って、卓に置く。
去るときに一礼。
みんなが同じ動きをしているから、そろそろ覚えたよ。」
「いい子ね。」
「…そんなふうに言われるのは、嬉しいけど面白くない。」
んー?褒めたのに何故か拗ねられたんだが。
弟は昔、こう言うと素直に喜んでくれたんだけどな。
けど、そういえば同じ褒め方をしてもダリオは喜ばなかったかも。
……うん、男の子はよくわからない。
☆☆☆
ゲームでは、この王城奪還イベントの後、アンダリアスを倒したファルコとその教官であるマリエルは王宮預かりとなり、ファルコの近衛騎士にバアルが任命される。
これは王宮が、勇者を王族待遇で迎えたという事だ。
本来なら王宮の騎士団の団長を勤めていてもおかしくない実績と実力をもつバアルが、一部隊長という地位から持ち上げられるのを固辞していたのは、12年前の離宮での、王太子ロアンの暗殺事件に端を発する。
一般的に発表されている王子の死は、滞在していた離宮の火災に巻き込まれたという事実のみだが、当時の神殿幹部クラスに所属していた者が計画して、配下が実行した事であるというのは公然の秘密だ。
この事件は、当時王子の近衛騎士を務めていた彼が、家の事情で不在だった時に起きたもの…というか、明らかに彼が不在だったこのタイミングを狙われたものであり、つまりは王子の死に責任を感じている故のことだったわけだ。
王宮としては出世を固辞する彼を表舞台に戻すまたとない機会であり、武勲を挙げた勇者の近衛にする事は、その第一歩に繋がる…はずだった。
…何故『はずだった』と敢えて強調したかというと、実際にはそうなっていないからだ。
私はただ酔っ払っていただけなのだが、なんだかよくわからないうちに、アンダリアスを捕らえたのは私という話になっており、ファルコは既に縛り上げられて騎士たちに引き渡された彼としか顔を合わせていない。
武勲を挙げていないファルコは、神託の勇者とはいえ、今はただの神殿の騎士見習いに過ぎず、私の従者として連れて来たのでなければ、この席に参列など到底叶わなかった。
勿論、王宮預かりになどなる筈もない。
私も、神官見習いであったマリエルと違って、神殿においてある程度高い地位にいる人間の為、やはり王宮に呼ばれるなんて事にはならなかった。
というか、王宮は私を置きたがったが大神官様が断固拒否した。
曰く『あの子が居ないとわたしの仕事を、半分こっそり押しつける先がなくなるのよ!』だそうだ。
そうか、私が忙しいのは大神官様の仕事が半分回ってきているせいだったのか。
ひょっとしたらこの先婚期が更に遅れたら、私はあのひとが引退したと同時に大神官にさせられてしまうかもしれない。
そ、そうなる前に結婚相手を、なんとしてでも見つけなければ…ぐぬぬ。
うん、結婚退職するという事になれば、いくら大神官さまとて、それを阻んでまで私を、神殿に引き止めることはしない筈……たぶん。
…話を戻すが、私たちが神殿を動かないから、バアル様がファルコの近衛騎士になる事もなく、それでもアンダリアスを欺き(いや、アイツが勝手に彼を味方にしたと思い込んだだけだが)神殿の協力を仰いだ事実は評価されて、彼は間もなく騎士教官に任命される事が決まっている。
これは名目上は役職と言えるものではなく、本来は閑職に近い立場だ。
何故なら、騎士見習いとして一通りの講義を卒業し、騎士になるとその時点で、教官は彼らより階級が下になるからだ。
だがこれは、出世を固辞するバアル様と彼を重用したい王宮の、互いにとってギリギリの妥協案であり、これにより全ての近衛騎士がこぞってバアル様を『先生』と仰ぐ事になった。
こうなると事実上、彼の立場は騎士団長と同等、下手すればそれより上となったも同様だった。
正直、彼が自分より下の地位にいる事に、やりにくさを感じていた後輩騎士たちにとっては、とてもありがたい事だったらしい。
ついでに言えばゲームの中でもバアル様は屈指の物知りキャラであり、王宮での育成パートが始まると、カリキュラムを実行する時には、最初は必ず彼の教えを受けることとなる。
攻略対象キャラが出揃ってからは、マリエルとの親密度によって、実行時に登場するキャラが変わるのだが。
ちなみにネタバレをすれば、彼のストーリーでトラウマ案件となっているロアン王子は実は死んではいない。
王家御用達の豪商が事前に情報を得て、密かに配置していた私兵に、危ういところで助けられている。
その王子こそが、本来なら王城奪還イベントに登場していた筈の仮面の男である。
助けられた王子は、大きくなるまでは国境付近の街にある、彼を助けた商人の生家で、商人の兄の息子として育てられており、成長して密かに王都に戻ってからは、やはりその商人が派遣した男を側近として、立場的に自由に動き回れない自分の『目』として働かせていた。
ちなみにこの主従も勿論攻略対象キャラであるが、王子の方は攻略できるのが2周目以降の、所謂隠れキャラだ。
キャラクター名はアローン……うん、安直だな!
本名のロアンを少し逆さにしただけだもんね!
それはともかく、ゴロー・ホランという名の側近の方は、1周目でも攻略は可能で、王城解放後に必ず協力者として登場する。
だが彼のシナリオでは、単なる遊び人の豪商のボンボンが、理想の女性を探す中でヒロインと出会い、勇者を育成する中で共に成長していくというだけの物語に過ぎない。
アローンのシナリオを追って初めて、この2人が主従であることが判明するのだ。
このシナリオのゴローは彼自身のストーリーよりも数倍カッコイイと専らの評判で、実際にプレイしたファンの間からは『騙された』『ゴロー2人いる説』『こっちを攻略したかった』という声が絶えなかった。
ちなみにゴロー・ホランは本名ではない。
父親から、後継者に相応しいと正式に認められるまでは商会の名を出すことを禁じられており……なんか、どっかで聞いたなそんな話。
………………………………
…ゴロー・ホラン。23歳。声優:小野田伊助。
攻略対象者のひとりで、商人の道楽息子。
不仲な仮面夫婦である両親の間で、ほぼ使用人に育てられた為、恋愛や結婚に対する理想が高い。
それ故に完璧な女性を探しており、行く先々で女性に声をかけて、軽く口説きながらもその実、女性をシビアな目で見つめている、ロマンチストなのかリアリストなのかよくわからない遊び人。
実家の事業の末端部分を任され、遊び歩きながらも一応は商売の為、市井の情報を集めているという彼は、帝国の侵攻を退けた勇者と彼を育てるヒロインに興味を示して、協力者となる。
…が、実は遊び人の顔は表向きで、遊び歩く態で諜報活動に従事する、『仮面の男』アローンの側近。
エンディングでようやく明かされるその本名は……
メルクール・シュヴァリエ………だ。
「お前もか─────ッ!!!!!」
「え、神官長!?」
なんで今まで気付かなかった私(2回目)!!
うちの弟攻略対象者だったわ!!
てゆーかそうだよね!王宮御用達の豪商って、まさしく実家のことだよね!!
…王族の葬式の最中にいきなり叫んで注目を浴びた事に気付いた私は、とりあえず倒れて誤魔化すことでその場を切り抜けた。
ファルコとダリオにものすごく心配された。
反省はしている。
・・・
献花を終えた後、体調を理由に早々に王宮を辞した私は、ファルコをダリオに預けて、3日ほど実家に帰る事にした。
そもそもメルクールからは、一度帰ってこいと言われている。
弟は一週間ほどと言っていたが、そんなに休んだら帰ってから積まれる不在中の仕事の量に発狂する未来しか見えない。
これくらいでちょうどいいだろう。
……気がついてみれば名前も、あとよく思い出してみれば確かに顔も一緒だけど、うちの弟と攻略対象の『ゴロー』は、キャラクター設定とその背景が全然違う。
そもそもゴロー・ホランはひとりっこで姉も妹も居なかったし、ダイダリオンとの親交だってなかった筈だ。
両親は2人きりの生活に突入した途端妹作ったくらい夫婦仲良好だし、うちのメルクールはむやみやたらに女性に声をかけるようなナンパ男じゃない……たぶん。
王城で会うまでは、ほぼ4年近く手紙だけのやり取りしかしておらず、顔合わせて話をする機会がなかったから、ひょっとしたらその間に何か、心境の変化があったのかもしれないが。
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