上 下
12 / 36
コメディ編

12話 調査

しおりを挟む
「ということで、お前達には土屋つちや柚希ゆきという女の子の素性を調べて欲しい」

 放課後、教室で席に座る俺の前に3人の男がいた。
 有馬、中西、長屋のチキン三兄弟だ。

「ふざけんな。天条さん絡みの話かと思って来てみれば、何で俺達がお前の頼み事を聞かなきゃいけねぇんだ」
「俺達はお前の下僕じゃねーぞ」
「なめんな」

 ピーピーピーピーうるさいな。
 美咲ちゃんに直接連絡先を聞くことも出来ないヒヨコ達め。

「いいか? これは先日の将を射んと欲すればまず馬を作戦の続きだ。この土屋柚希という女の子は、情報によれば桐生の幼馴染らしい」
「けっ!!!」
「ちっ!!!」
「ぺっ!!!」

 露骨に態度に出たな。
 あと教室に唾を吐くな。

「ちなみにこの女の子は割りかし可愛い。あと巨乳だ」
「おいおい、天条さんに比べたらその辺の女の可愛いなんざカスみたいなもんだ」
「かぐや姫と椎茸しいたけは比べたりしないだろ?」
「その程度の情報で俺達が動くと思うなよ」

 椎茸扱いはさすがにヒドすぎる。
 でも確かに美咲ちゃんに比べられた女の子は漏れなく虐殺されるしなぁ。
 それこそ張り合えるのは海野先輩ぐらいだ。
 仕方ない。

「この調査をお願いしてきたのは他でもない、天条さんだ」
「なんなりとお申し付けください」
「如何なることでも致します」
「我らはあなたの手足です、武将」

 変わり身はえーな!
 手首千切れるかと思うスピードで反転したぞ!
 やっぱこいつらの行動原理は美咲ちゃんか!

「あと何回も言ってるけど武将呼びやめろ。それを言ったら有馬は眼鏡を掛けてるから軍師だろ」
「望むところだ」
「望んじゃうのかよ」
「そうすると中西はあれだな。逃げ足が速いから飛脚だな」
「何でただ『足が速い』じゃダメなんだ……」
「じゃあ長屋は?」
「こいつはバカだからな」
「ああ、足し算も怪しいくらいだ」
「おいお前ら」
「じゃあ決まったな。長屋は───」

「「「足軽」」」

「ふざけんな!」

 それぞれのコードネームが決まったところで今日は解散となった。
 これで後は3人が調べてきてくれるのを待つだけよ。


 後日。
 3人が調査を終えたということで、俺の元へとやってきた。

「待ってたぜ! 早く情報を俺にくれ!」
「何をそんなに焦ってんだ」

 そりゃそうさ!
 この期間、海野先輩と美咲ちゃんからの圧力が凄かったんだからな!
「まだ分からないの?」って笑顔で聞きながらも、目は全く笑ってないあの二人を前にしたら誰でもビビるぜ。
 もう桐生本人に直接聞いたろうかなって思ったぐらいだ。

「えー代表してわたくし、有馬が報告します。まず土屋柚希は瑞都高校に通う1年C組出席番号16番身長162cm体重48kg血液型B型バスト86ウエスト60ヒップ───」
「うわわわわ怖い怖い怖い!! 何でそんなに詳しく体のラインまで分かったんだよ!」
「何言ってるんだ? 調べろと言ったのは加藤だろ」
「安心しろ。バレるようなヘマはしてない」
「それはつまり法を犯してるってことか!?」
「おっと。そっから先は知らないほうが身のためだぜ」

 何者だよこいつら!
 ストーカーよりやべぇじゃねーか!

「つーかそんなリサーチ力あるなら天条さんの連絡先ぐらい余裕だろ」
「バカか! 天条さんは俺達のアイドルだ! そんな失礼なことできるかよ!」

 マジで何したんだよこいつら……。

「発表を続けさせてもらうぞ。先にあった情報の通り、土屋柚希と桐生は小さい頃から一緒にいることが多かったらしい。家族ぐるみの付き合いがあったみたいだな」

 家族ぐるみの仲ってのは桐生も言ってたな。

「小学校まで同じだったらしいが、中学は私立に通ってたみたいだ。その後も交流はあったみたいだが、月に1回会うか会わないか程度だったみたいだな。家も離れていたみたいだし」

 だから中学時代に俺と会わなかったのか。
 頻繁に会うようだったら俺も知ってるしな

「それでお互いの高校が近くなったことで、土屋柚希の方から会いに来ることが多くなったらしい」
「じゃあ過去に桐生と土屋が付き合ってたって事実はないんだな?」
「ないっぽいな。どちらかというと土屋柚希の方から桐生に会いに行ってるらしい」

 なるほど。
 これであの2人には何もないことが確認とれたわけだ。
 俺の精神もこれ以上蝕まれることもなくなるな。

「助かったよあんがとな!」
「それで例の件なんだが……」
「ああ、よかろう。ソチらの活躍、姫の方に伝えておこう」
「「「あざーす!」」」


 その日の放課後。
 俺は海野先輩と美咲ちゃんに土屋の件を話し、何事もないということでミッションを終了した。

 今回のことで一つ思ったんだが、俺、今回何もメリットなくね?
 実際に調査したのはチキン三兄弟だけど、ハシゴ役したり無駄に圧をかけられたり。

「そういうわけで桐生、疲れたから俺になんか奢れ」
「急に何の話だ……」

 あんぱん奢ってもらいました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日の桃色女子高生図鑑

junhon
青春
「今日は何の日」というその日の記念日をテーマにした画像をAIで生成し、それに140文字の掌編小説をつけます。 ちょっぴりエッチな感じで。 X(Twitter)でも更新しています。

桃は食ふとも食らはるるな

虎島沙風
青春
[桃は食っても歳桃という名の桃には食われるな] 〈あらすじ〉  高校一年生の露梨紗夜(つゆなしさや)は、クラスメイトの歳桃宮龍(さいとうくろう)と犬猿の仲だ。お互いのことを殺したいぐらい嫌い合っている。  だが、紗夜が、学年イチの美少女である蒲谷瑞姫(ほたにたまき)に命を狙われていることをきっかけに、二人は瑞姫を倒すまでバディを組むことになる。  二人は傷つけ合いながらも何だかんだで協力し合い、お互いに不本意極まりないことだが心の距離を縮めていく。  ところが、歳桃が瑞姫のことを本気で好きになったと打ち明けて紗夜を裏切る。  紗夜にとって、歳桃の裏切りは予想以上に痛手だった。紗夜は、新生バディの歳桃と瑞姫の手によって、絶体絶命の窮地に陥る。  瀕死の重傷を負った自分を前にしても、眉一つ動かさない歳桃に動揺を隠しきれない紗夜。  今にも自分に止めを刺してこようとする歳桃に対して、紗夜は命乞いをせずに──。 「諦めなよ。僕たちコンビにかなう敵なんてこの世に存在しない。二人が揃った時点で君の負けは確定しているのだから」

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

ドッジボール

ふみや@T&F新
青春
主人公の健は、ある日の公園での少年との出会いによって小さい頃の思い出に浸る。それは少年が持っていた「ドッジボール」との深い絆の物語であり、大切な人との出会いと別れがあった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

でんぱさがし

-6℃
青春
競技人口が少ないマイナースポーツ「ARDF」。 主人公、市華の通う女子校にはなぜだかARDF専門の部活があり…

飛び出す高校受験用教材乙女用~おれさま達が第一志望へ導いてやる~

明石竜
青春
灘本昇子は高校受験を控えた中学三年生。中学時代からの親友で同じパソコン部の帆夏に影響され百合・BL・乙女・萌え系深夜アニメなどオタク趣味に嵌るようになってから成績も酷くなる一方。一学期中間テストの結果もやはり悪かったことから母にスパルタ教育式進学塾、烈學館へ強制入塾されそうになる。  翌日、昇子は幼馴染で成績優秀な森優(もゆ)と、入学以来学年トップの成績を取り続けている学実に通信教育の受講を勧められた。昇子は小学校の頃の経験からまた長続きしないだろうと初め乗り気でなかったが、部活中に通信教育をもう一度やってみようと思い直す。萌え系の女の子向け高校受験対策用の通信教育はないものかとネットで根気強く探してみるとなんと見つかった。昇子は帰宅後、母に塾行く代わりに萌え系の通信教育で勉強したいと懇願した結果、期末も成績が悪いままなら塾へ行ってもらうという条件付で認めてもらえた。数日後、教材が届いたのだが……

処理中です...