俺はどうしても主人公になれない

もぐのすけ

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8話 後日談

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「今日から部活出るわ」

 朝、学校に来た俺は開口1番に桐生にそう告げた。

「目標金額貯まったのか?」
「いや? 買いたいものがあるなんて嘘だけど」
「ちょっと待て」

 何か言いたげな桐生を尻目に、俺はニヤリとしながらチャイムが鳴ったからと言って席に戻った。


 放課後、俺は桐生と共に天文部の部室へと向かった。
 約2ヶ月ぶりの部活である。
 腕が鳴るぜ。
 いっちょやったりますかー。

 だけど、部室のドアをガチャリと開けて中へ入るも海野先輩も美咲ちゃんもまだ来ていなかった。
 拍子抜けしたのか、それともホッとしたのか。
 俺の心情は本人ですらよく分からない感情に襲われていた。

「昨日も言ったけど葵先輩も美咲も、キヨの事を心配してたぞ」
「その事については本当に申し訳ないと思ってるよ。俺の勝手な都合で部活休んで」

 確かに俺の勝手な都合ではある。
 それでも俺の心に今でも引っかかっているのは、合宿の時の一件だ。
 あの時の虚無感や孤独感は、言葉で言い表すのは難しいが、その時の気持ちはすぐにでも思い出すことができる。
 それだけ俺の人生において衝撃を与えられた一件だった。

 それでも。
 その一件を差し置いても俺は桐生達と一緒にいたいと思った。
 そう思い立った要因に里美の存在が大きいのはもちろんだが、天文部という居場所が俺にとって居心地が良かったという事実が後押しした。
 心に余裕が出来た今ならば、桐生や海野先輩や美咲ちゃんとの距離感を遠目から確認できるのではないかと。
 自分の立ち位置をしっかり把握できれば、地に足がついていれば、合宿の時のようなことも起こることなく俺は彼らと楽しく過ごせるはずだ。

 わだかまりは簡単には無くならないかもしれないけれど、何かのキッカケで解消されるかもしれない。
 俺と里美の関係のように。

「それにしても、キヨが部活に顔を出すのは合宿の時以来か」
「そう、だな」
「部活をやったことのなかった俺にとって、集団で何かをするってのは目新しくて面白かった」
「珍しくテンション高かったよな、桐生」
「ああ、星を観測するのも案外、悪くはない」
「初めて天文部らしいことした気がするわ」
「確かにな」

 星を見て談笑してゲームして。
 合宿というよりも旅行に近かったが、確かにその時までは楽しかった。
 その後、もし俺は起きずにそのまま寝ていたら嫌な気持ちにならずにすんだのだろうか。
 いや、結果が先延ばしにされただけで、現状は変わらないだろう。
 結局はどこかで同じようにハブかれていただろう。

「……そういや一度解散になって各々部屋に戻って寝たろ?」

 桐生から話を振ってきた。

「柔道場で寝たやつな」
「実はあの時俺、全然寝付けなくて外の空気浴びようと思って校内を歩いてたんだよ」
「1人でよく校舎ん中徘徊できんな。怖くね?」

 かくいう俺もトイレまで廊下を歩いていたが。
 その途中で3人でいるのを見つけたわけだが。

「その時偶然にも美咲と葵先輩と廊下で会ったんだ。美咲のトイレに付き添ってたんだと」
「あ~天条さん怖いやつとかすげー苦手そうだもんなぁ」
「それで俺が外の空気を浴びるって言ったら2人とも付いてきてな、中庭の芝生で3人で寝転がってた」

 …………………………。
 ちょっと待て。
 それって俺が見かけたあの場面でいいんだよな?
 つーかその場面しか考えられねーけど。
 俺はあの時3人が俺を除け者にして、示し合わせて集まったもんだと思ってたんだが、実は偶然だった??

「2人はどうせならキヨのことも呼んできたら? って言ってたんだが、キヨは寝てたしちょっと2人に聞きたいことがあったから起こさなかったんだ」

 ………………しかも海野先輩も美咲ちゃんも、俺のことを誘ってくれてた……?
 待ってくれ。
 もしかするとだけど、これってまた…………俺の勘違いか?

「き……桐生の聞きたい事ってなんだよ?」
「お前のことだよ、キヨ」
「俺?」
「お前、2人のどっちかが好きだったんじゃねーの?」
「な、なんでそう思うんだよ?」
「そんなの見てれば分かるぜ。キヨが2人と話してる時、すげー楽しそうにしてるからな」

 ちがっ……!
 お前鋭いのか鈍感なのかどっちだよ!!
 確かに俺が2人に好意を抱いてたのは間違いねーけど、2人はお前に好意を抱いてたんだっつーの!
 なぜ気付かん!

「それで2人がキヨのことどう思ってるのか直接聞いたんだよ」
「なん……! っでお前は……そんなバカなことを……!」
「結果的には仲の良い友達って答えだったが」
「だあああああ!! 別に言わなくてもいいだろそれは!!」

 分かりきってることじゃねーか!!
 お前アレだ、親切でやってくれてんのは分かるけどよ、裏目に出てっからそれ!!

「お前が寝てる間の事なんだが、一応言っておこうと思ってな」
「……………………」

 合宿の一件の真実が思いもよらない内容で驚いた反面、恥ずかしさで感情がシェイクされてる。
 どういう顔をしたらいいんだ俺は。
 でも桐生は俺のためにそういう行動とってくれたってのは分かるんだよな。

 はぁ…………。
 なんだかなぁ……。
 早とちりばっかりじゃないか俺は。
 1人キリキリ舞って、まるで劇団サーカスだ。

「桐生」
「おう」
「ありがとうな」
「気にするな。俺とお前の仲だ」

 桐生はもっと気にしたほうがいい。という言葉を言いかけて飲み込んだ。
 せっかく桐生が上機嫌なんだ。
 わざわざ下げるようなことを言う必要もあるまい。

「でも俺はマジで大丈夫だから。それより自分のことを気にしたほうがいいと思うぜ」
「何のことだ?」
「何でもだ」

 桐生が俺のことを気にかけてくれたように、今度は俺が桐生を気にかけてやろう。
 先ずは桐生が2人のことを異性としてしっかり認識するところからだな。
 楽しくなってきた。

 その時、ガチャリと音がして、部室のドアが開いて2人の女子が部室に入ってきた。
 俺はすぐに、入ってきた2人の前に立って一言言った。

「久しぶり! これからもよろしく頼んます!」
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