怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

文字の大きさ
上 下
133 / 135
サマーバケーション勧誘編

閑話 女子会

しおりを挟む
【若元梨音目線】

「みんな水着持ってる?」

 美月みづきのそんな一言で、私達は新しい水着を買いに行こうという話になった。
 一昨年に買った水着もあるけど、これでも私達は成長期。それに今回は女の子だけじゃなくて男の子もいるから、少なからず意識もしてしまう。

 私、美月、冬華、きいは学校が休みの日にショッピングモールに集まった。

「梨音っちー! こっちこっち!」

 最寄り駅に着いたところで既に美月ときいが待っていた。

「お待たせー。あとは冬華だけ?」

「後ろ後ろ」

 振り返ると冬華も同じタイミングで来ていた。
 どうやら同じ電車に乗っていたみたいだ。

「初めましてだよね八幡さん。私、桜川美月って言います。今回は海に誘ってくれたみたいでありがとう!」

「企画者は私じゃないけど、こちらこそよろしくお願いします。八幡やはた冬華ふゆかです」

「じゃあ八幡っちだね!」

 やっぱりその呼び方になるんだ……。

「私の方は桜川さんのこと前から知っていたけれどね」

「ええ!? あちゃー、私ってそんなに有名人だったかー。やっぱり溢れ出るオーラみたいなものが…………」

「高坂の元ストーカー」

「黒歴史掘るのやめて!」

 私達のクラスならみんな美月のこと知ってるから……。

 挨拶もそこそこに、私達は軽くカフェに寄って飲み物を買うことになった。
 私はミルクラテというのを買ってみた。
 冬華とたまに来ることはあるけど、その時は大体季節限定メニューを頼んだりしている。

 きいはあまり来たことがないのか、メニューの多さとサイズの呼び方に手間取っているのが少し可愛かった。

「べ、別にここに来なくても生きていけるし……」

 頬を赤らめさせながらそんな風に強がっていて、無性に抱きしめたくなった。

「というか今回はさ、男の子もいるわけじゃん。高坂っちと佐川っちとニノっち。みんなは誰狙いとかあるの?」

 さらっと美月が答えにくい質問をしてきて、思わずミルクラテを吹き出しそうになった。

「な、なんでそんなこと聞くの?」

「ええ~だって気になるじゃん。梨音っちと八幡っちは普段から一緒にみんなと遊んでるわけだし、せっかく新しい水着を買いに行くんだからその人に向けてアピールとかするのかな~って」

 美月がニヤニヤと笑いながら聞いてくる。
 こういう時に元ストーカーとしての調査力を見せてくるのは厄介だなぁと思う。

「まぁ美月は修斗目当てだから隠す必要無いとして…………」

「ちょちょ! 決めつけが早い!」

 いまさら聞かなくてもみんな知ってることだし。

「周知の事実だからね」

「八幡っちまで! そんなこと言ったら梨音っちだって高坂っちの幼馴染じゃん! こっちの方がよっぽど分かりやすくない?」

「確かにそうね。普段から距離感もなんかおかしいし…………実はもう付き合ってたり?」

「な……! ないないない! 付き合ってなんかないから! 修斗とはただの幼馴染だし……!」

「ムキになって否定するところがむしろ怪しいなぁ~」

 そりゃ否定しておかないと、もしも同じ家で暮らしてるなんてバレたらそれこそ晒し上げられちゃう……!

「それに鷺宮さんが高坂に猛アタックしてた時の梨音の不機嫌さと言ったら……」

「冬華~?」

 そりゃまあ、当時の鷺宮さんの態度に少しはモヤっとしたけども…………それとこれとは話が別だし!

「鷺宮さんと言えば、この前の前橋っちの啖呵も凄かったよね~。あんな熱い一面があるなんて知らなかったし」

「あ、あれは…………」

 美月が言っているのは、河川敷のフットサルの帰り道、涼介君と鷺宮さんに偶然会った時のことだ。
 鷺宮さんが修斗のことを小馬鹿にした物言いをした時に、誰よりも早く、強く否定したのはきいだった。

「なんのこと?」

「冬華はいなかったもんね。この前、鷺宮さんの修斗に対する失礼な発言に、きいが言い返したの」

「いやぁ、アレは高坂っちに対する愛を感じました」

 うんうんと美月が頷きながら言った。

「ち、違うし! 私は高坂のサッカー選手としての能力を否定されたことに怒ったのであって、別に高坂自身についてどうこう思ってるわけじゃなくて、昔から同じサッカー選手としての憧れとかもあったからそれを馬鹿にされた気持ちにさせられたのが悔しくて言い返したのであって、高坂が気になってるとかそういう話じゃないんだから!」

「あ、うん。なんかごめん」

「凄い早口……」

「~~~~~!!」

 なんなのこの可愛い生き物。
 家に持ち帰ったらダメなのかな。

「でも前橋さんはニノとも普通に話せるよね。ニノがそもそもそんなに人と話せるタイプではいのただけれど…………仲良かったり?」

 確かにニノはいまだに私や冬華と1対1だと少しキョドりながら話す節があるけど、きいと話している時は普通だ。

にのまえはなんというか………………同類だから」

 妙に納得したように私達は頷きあった。

「佐川っちは? 佐川っちのことが気になってる人」

「新之助は…………」

「まぁ…………うん」

「私は苦手」

「冷たっ! 前橋っちに関してはストレート過ぎる!」

 悪い人じゃないんだけどね……。
 なんて言うか誰よりもクセが強くて、恋愛対象として見れるかと言われたら……。

「でもすごい気遣いできる人だと思うわね。なんていうか、普通じゃ気付かないようなところをよく見てるというか、人の懐に入るのも上手いというか」

「お、八幡っちが唯一フォローした」

「宇佐木先生にしても、ニノの家の人達にしても、そういうところは素直に凄いと思うわ。恋愛対象として見れるかという問いに対しては……頭を捻るけれど」

 あ、私と同じこと言ってる。

「まぁ3人に限った話をするなら、総合的にスペックが高いのは高坂よね。スポーツも勉強もできるし見た目も清潔感あるし」

「そんな高坂っちに相応しいのは、幼馴染枠でアイドル級の梨音っちか、比護欲が掻き立てられる美少女の前橋っちのどちらか、というわけだね」

「どんな評価の仕方なのよ。というか、なんで美月は自分のことは入れてないわけ?」

「いやいや、二人に比べたら私なんて戦いになりませんから! もうその辺に落ちてる軍手と同じですから!」

 いくらなんでも卑下しすぎ……。
 きいが庇護欲掻き立てられる美少女というのは凄く納得できるけど、私なんてそんな大層なもんじゃないよ。

「美月は運動部らしい綺麗なボディラインしてるじゃない羨ましい」

「それを帰宅部で出来てる梨音もおかしいのよ。桜川さんだって、結構男子人気高い噂も聞こえてくるし、みんなと比べたら私なんて…………」

 珍しく冬華が落ち込んだ表情を見せる。
 あんまり容姿の話なんてしたことないけど、意外と冬華も気にしてる……?

「八幡っちは………………こんなに良いものがあるでしょーが!!」

 美月が冬華の胸をガッシリと掴んだ。
 確かに服の上からでもハッキリと分かる大きさなのは冬華だけだ。
 着替えの時にいつも思わず見てしまう。

「ちょっ、やめ……! 初対面で普通人の胸揉まないでしょ!」

「ええい、男子を一番誘惑できる武器を二つも持っておいて贅沢なり!」

「美月、外で人の目もあるからその辺で…………」

「勘弁してあげよう!」

「なんて傲慢な元ストーカー…………!」

 少し涙目になりながら胸を隠す冬華。

 ふときいを見ると、自身の胸元を見ては諦めたように目を逸らしていた。

 大丈夫だよきい。
 きいの魅力は見た目には現れてないところだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~

くまたに
青春
冷姫と呼ばれる美少女と友達になった。 初めての異性の友達と、新しいことに沢山挑戦してみることに。 そんな中彼女が見せる幸せそうに笑う表情を知っている男子は、恐らくモブ一人。 冷姫とモブによる砂糖のように甘い日々は誰にもバレることなく隠し通すことができるのか! カクヨム・小説家になろうでも記載しています!

処理中です...