怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

サマーバケーション勧誘編

プロローグ

　夏休み。
　それは学生期間においてある種の一大イベントといっても過言ではない。学生の本分はもちろん学業ではあるが、そこで得られる経験は何も勉学に限ったものだけではないのだ。
　夏休みという長期間の中で、家でゆっくりと寝て英気を養って過ごすのか、はたまた外へ出掛けて新しい何かを見つけに行くことを自身の経験として身に付けるかは己次第である。

　さて、そんな中俺はといえば今までの夏休みとはサッカーの練習時間が延びる毎日が送れるというそれはもう素晴らしいものであった。
　朝から晩までずっとボールをこねくり回すことができ、自分にとって至らない部分を克服する貴重な時間だ。

　ところが去年の俺はと言えば、夏休みといえば真っ白い病室の中で、足を吊し上げながら呑気に茶を啜すすっていた毎日である。
　時折訪れるお見舞いの友人達との会話に花を咲かせ、あるいは今まで見たこともないテレビ番組に妙に詳しくなった時期だ。
　そのなんたる苦痛な日々のことか。
　まるで今まで取ってこなかった休みというものをまとめて取らされているような気分だった。
　毎日が休みになればそれはもはや休みではなくなる。しかもろくに外にも出れない休みだ。拷問と言っても過言ではないだろう。

　とまぁ、俺のこれまでの夏休みというものの過ごし方について述べさせてもらったわけだが、じゃあ今年の夏休みはどう過ごすのかって話だよ。

　決まってんだろ？




「「「海だーーーー！！」」」



　俺は生まれて初めて海へとやってきた。