怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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アルバイト勧誘編

実力確認②

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 蹴り上げられたボールを着地点でトラップする。
 相手は全員、鷹山高校と入ったユニフォームを着ていたことから黄色のビブスは俺達が着ている。蛍光色なので見分けはバッチリだ。

「さて…………」

 まずは様子見からか、お互いに動きはスローペース。
 相手は特にプレスをかけてくる様子もない。
 俺は山田に一度預けた。山田がさらに山田弟へとパスを回す。山田弟は前を向くが、仕掛けず再度俺へと戻した。
 その戻したボールをワンタッチで俺は縦にいる大城国へと鋭く出す。
 奴は現役のFC横浜レグノスのユース選手だ。
 シュート性に近いパスだが問題はないだろう。

「あ」

「えっ」

 ボールはトラップをしようとした大城国の右足の下をすり抜け、そのまま相手キーパーへと渡ってしまった。

「だっはっは!! ボールが小さすぎて距離感見誤った!」

 おいおい……初手から不安にさせてくれるなよ。
 さっき練習はしただろうに。

 相手はキーパーからパスを受け、ボールを持っていない選手が流動的に動き出す。
 フットサルでは極度の接触プレーはNGとされており、ディフェンスでは前を向かせない措置か、ボールをカットする技術が求められる。つまり相手の動きを読み切り、ここぞという場面でボールを奪取するのが正しい。
 特に俺の場合はスペースを作られてしまうと走って追いつくことができなくなるため、適切な距離感を保つことが大事だ。

 小慣れたようにパスを回しつつ、一瞬の隙をついて俺のマークしている選手が縦に走り出す。
 そのタイミングに合わせてスルーパスが出された。
 俺は相手が縦に走り出したタイミングで人ではなく、パスが出されるであろう軌道上に足を伸ばした。

(届くか!?)

 俺の伸ばした足にボールがなんとか当たり、山田がこぼれ球をキープした。

「ナイス高坂!」

 賢治なら自分でカットできただろうが、俺の予測と反射神経では今のところこれが精一杯か。

 ボールは山田から大城国へ。
 今度はしっかりトラップをした大城国が前を向く。
 すかさず山田弟が前へ、俺が右へと展開した。

「大城国、右!」

「あらよっと」

 大城国がシンプルに俺へとパスした。
 俺は前から来た敵の股を抜いて一人かわす。
 左足で中へとカットインをし、二人目をパスフェイントからの左足のバックヒールでL字に縦へと抜け出した。

「うわうっま!!」

「フリーだ高坂!」

 キーパーと一対一、キーパーが前に飛び出してきたが横に並走していた味方を俺は確認していた。
 優しく左へパスを出し、山田弟が誰もいないゴールへと流し込んだ。

「うおおおおお点取るの早あああ!」

「上々上々! 戦術高坂だなこれは!」

 山田と大城国が寄ってきたのでハイタッチをした。
 中々に身体の調子は悪くない。イメージ通りに上手く運べた。

「ナイスゴール」

 良いところに走り込んでいてゴールを決めた山田弟ともハイタッチをした。

「うわぁぁぁ…………もう手洗えないぃ……」

 洗えよ。
 ばっちいな。

「ナイスプレーすぎー高坂っちー!!」

 ネット裏から桜川が興奮しながら大声をあげていた。

「おお、応援団も大盛り上がりだな」

「シンプルに恥ずかしいんだけど」

 梨音は腕組みしながら『彼はやる奴だと思っていました』みたいにウンウン頷いてるし、前橋はネットにかぶりついてるよ。
 ネットにかぶりつきって現代っ子か。

「これぐらいの相手なら問題ないな」

「そりゃ元日本代表と現日本代表がいるからな。そこらの同い年に負けてたらどんだけ俺らが足引っ張ってるんだよってことになる」

「だっはっは! 俺は今のところ空気だがな!」

「キーパーの方が空気だぞー…………」

 キーパーは空気の方がいいんだよ。

 続けて相手のキックオフで試合がリスタートした。
 一緒に山田とフットサルをしてみて分かったが、流石に経験者なだけあってポジショニングが上手い。
 ディフェンスをする時にパスコースを片方カットするわけだが、空いたパスコースに敵が出した時にきっちりとパスをカットしてくれる。
 それに、俺の出したいタイミングで寄ってきてくれるからパスの選択肢が増える。
 実際に俺は介護されているわけだ。

「山田! 大城国へ!」

 俺の出したパスを山田がワンタッチで前線の大城国へと繋ぐ。
 大城国は相手を背負ったまま無理矢理に反転し、そのままシュートを撃った。
 強烈なシュートがゴールネットに突き刺さり、追加点を奪った。
 体幹を活かした奴らしいプレーと言える。

 そこから先もこちらが攻勢のまま、試合は5ー0で終了した。単純に個々の実力差が大きかった試合結果だった。
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