怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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アルバイト勧誘編

実力確認①

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 各自、受付を済ませた後に練習着に着替えてフットサルコートへと向かった。
 チームはA~Fチームに分かれており、俺達はFチームとなった。
 最初の試合はEチームと戦うということで、俺達は3つあるコートの内の一つでアップを始めることとした。
 そのコートには既にEチームがおり、会話の声がそれとなく聞こえてきたが、どうやら相手は俺達と同じ高校生で、俺達のようにフットサルではなくサッカーをやっている人達のようだ。練習着に高校の名前が入っているため、気分転換がてら参加したのかもしれない。

 改めてフットサル用のボールに触れる。
 サッカーボールとは大きさが異なり、いわゆる4号球と定義されるボールになる。ちなみにサッカーでは5号球と呼ばれる大きさになる。
 しかし、大きさが違くても重さについては意外にもサッカーボールと同じような重さだ。
 そのため、扱いやすさはあっても浮き球を出したりするには少しコツがいる。この辺りの違いを念頭に置いて感覚を掴まなければならない。

「大城国はフットサルをやったことはあるのか?」

「無いぞ! 今初めて触ってみたが、俺には少し小さ過ぎるな!」

 大城国とパス交換をしながら言葉でもパス交換をしてみる。
 こいつのプレースタイルは言わずもがなではあるが、コンビネーションフットボールにはお互いの理解が必要だ。
 他愛ないことでも、知っておくべきだ。

「高坂こそ怪我をしたと俺は聞いていたんだが? 今の状態を見る限りでは平気そうだな」

「いや、こう見えて俺の右足はボロボロさ。それでも俺はサッカーをやめられないからこうしてフットサルで慣らしにきたってわけだ」

「そいつぁ上々だな。当時のお前を知っている奴なら辞めるのは〝もったいない〟って思うだろうよ」

「つまり、高坂を誘った俺の功績は大である、ということだな」

「違ぇねぇ!」

 山田の言葉に大城国がだっはっはっと大口を開けて笑った。
 ストレッチを終えた山田、橋本、山田弟を含めた5人で試合開始の時間まで鳥籠とりかご【円の中に鬼を一人入れ、奪われないようにパスを回すゲーム】したりしてウォーミングアップを済ませた。

 そしてついに、1戦目の試合開始時間となった。

「1試合10分間。チームで空いている人がタイムキーパーをしてください。間に休憩10分間を挟みつつ、総当たりで試合を回して行きます。ビブスを着るチームはお互いに判断してください。それでは、危険プレー等ないよう、お互いにスポーツマンシップに則ってお願いします。終了後は、代表者の方が私のところへ勝敗報告をお願いします」

 この個サルの企画者であろう人が端的に説明した。
 あの人も選手の一人で、Aチームにいる。
 個サルではファールやタッチラインを割った判断等も自分達で行うみたいだ。
 基本的には自主性に任せる、といったところか。

「ポジションはどうするよ?」

「基本的にフットサルは全員攻撃、全員守備だからポジションは正直どうでもいいんだよな。強いて言えばダイヤモンド陣形か。んで、橋本はキーパー固定だろ。本職だし」

「構わないよ」

「ダイヤモンドなら大城国が前線張り付きか? 典型的センターフォワードじゃん」

「おーおー任せとけ。全てゴールにぶち込んだるわ」

「高坂、ちなみにどれぐらい走れる?」

 今の足の具合を考えると…………6割程度ってところか。

「全力じゃなけりゃランニング程度は」

「となると…………あれだな。ダイヤモンドよりも2:2で別れたほうがいいな。俺と高坂が後ろに入る。守備の面は俺がカバーする」

「介護頼むよ」

「大城国と孝四郎が前線2枚だ。パスの供給は全て高坂がする」

「おいこら」

「介護する代償だっての」

 そんなこんなでざっくりとフォーメーションは決まった。
 大城国と山田弟が前に付き、俺と山田が後ろにつく。
 ただし、あくまでこれは目安のポジションだ。実際はもっと流動的にポジションは入れ替わるに違いない。

 相手は俺達と同じ高校生。
 年齢はもしかしたら向こうの方が上なのかもしれないが、サッカーに年齢は関係ない。身長が190ぐらいある大城国がいい例だ。縦にも横にも高校生離れしている。

「よろしくお願いします」

「こちらこそ」

 向こうの人達も配置につき、挨拶をお互いに済ます。
 そして相手の人が上に蹴ったボールを合図に、俺の実力を試す試合が始まった。
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