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遅延新入生勧誘編
鷺宮=アーデルハイト=弥守①
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修斗に出会った中学2年生終わりの春休み、サッカーに興味が湧いた私は色んな試合を見るようになって、意外な才能があることに気が付いた。
それは才能ある選手を見抜くスカウティング能力。
パパに連れられて多くの試合や選手を見る中で、私の中で気になった選手はその後必ず活躍をしていた。
その関係で私はパパの仕事を手伝わされることになり、数ヶ月間、色々な若手の選手の中からコレと思った選手をクラブに移籍させるための手伝いをした。
たぶん、私が修斗に惹かれたのは修斗の才能が一際目立っていたからなのかもしれない。
ドイツ国内には修斗のようにワンプレーみたただけで心惹かれるような選手は誰もいなかった。
惜しいところで言えばマルコ=ヴィテッシュという人が近かったかもしれない。
そんなこんなで日本への帰国が遅れた私は、戻ってくるとすぐに東京Vへと足を運んだ。
一目で心惹かれた高坂修斗、その人に会いにいくために。
しかし、私が東京Vに訪れた際に教えてもらった事実は衝撃的なことだった。
『高坂修斗は致命的な怪我をしてサッカーはおろか走ることすらできなくなっている』と。
修斗の入院している病院を訪ねようにもクラブ側は個人情報云々で教えてくれなかった。
そこで私はパパに連絡して東京Vとの業務提携を結ぶようにお願いした。
東京Vにいるユース世代の有望性とメリットを事細かに説明し、最後は娘のお願いとしてダダをこねてパパを説得し、なんとか東京Vとの業務提携を結んでもらうことに成功した。
それが中学3年の秋。
私は提携先のオーナーの娘としての地位を利用し、修斗の入院している病院を聞こうとしたが、すでにその時には修斗は退院しており、クラブ側からユースにあげることはできないと申告され、家から近いという瑞都高校に通うことになったという話を聞いた。
その対応に私は酷く憤慨したが、修斗自身もサッカーを続ける気力は無かったらしく、いくつか全国クラスの強豪校と呼ばれるところも紹介したが、全て断ったという。
納得がいかなかった。
私が一目で心動かされたのはサッカーをしている修斗であり、サッカーを諦めた修斗じゃない。
素人目の私が見ただけでも分かる、修斗は日本サッカー界の至宝になるはず。
サッカーをやらなくなった修斗に価値はない。
私はそんなの許さない。
私が好きな修斗はサッカーをやっている修斗なんだ。
絶対にもう一度サッカーをさせてみせる。
私は東京Vにもう一度訪れ、保管しているであろう病院から渡された修斗の怪我の状況についての経過報告やレントゲン写真の入ったデータのバックアップをもらい、それをドイツのパパの知り合いの病院に診てもらった。
その回答は、手術を行なっているのであれば時間と共にサッカーをすることも可能である、ただしその時間がどれほどのものなのかは不明である、というものだった。
修斗自身がそれを知っているかどうかについては定かではないけれど、ともすれば私がどうにかしなくてはならないのは折れた心の方だ。
怪我でサッカーができなくなったところにクラブからの実質的な戦力外通告。
そうとう堪えたにちがいない。
だからまずはそのやる気を取り戻させなくてはならない。
私はまず修斗と同じ瑞都高校に進学することに決めた。
元々目指していた高校からは学力のランクは下がるので入る分には問題なかった。
クラブ側が修斗の自宅や連絡先までは教えてくれなかったので、一緒になるためにはこうするしかなかった。
じゃあどのようにして修斗のサッカーに対する熱意を取り戻すか。
私はヴァリアブルの同期達を利用することにした。
修斗が怪我をしてヴァリアブルを辞めていったことに一番悔しがっていたのは彼らだ。
修斗には、その彼らの成長したプレーを見てもらって対立心を煽っていく。
例えばそうね…………怪我が回復してボールが少し蹴れるようになる頃……半年後なんかが丁度いいかもしれない。
でもきっと、ヴァリアブルの試合を見に行こうと誘っても修斗は見にこないかもしれない。
自分がいなくなっても変わらずボールを蹴っている同期達を見たいとは思わないかもしれない。
それなら…………試合を見たくなるような状況を作ればいいのかしら。
調べたら運の良いことに瑞都高校も全国大会一歩手前までいける実力の高校みたいだ。
じゃあ瑞都高校でヴァリアブルと対戦するような状況を作れば嫌でも修斗は見に来るかも。
でもそもそもヴァリアブルが瑞都高校と試合をしてくれる保証がない……。
じゃあ試合をしたくなる理由を作ればいい?
噂によると、今ユースで最も有名な選手は狩野隼人という選手みたいで、プロ確実とまで言われているみたいだ。
この選手をどうにかして瑞都高校に引っ張ってこれれば、ヴァリアブル側にも練習試合を組むメリットが生まれるはず。
私は再びパパにお願いをして狩野隼人という選手を高校卒業後に契約を結んでくれるように話した。
そして狩野隼人にはユースをやめて瑞都高校に編入すればドイツブンデスリーガ1部のクラブであるクシャスラFCと契約することができると話した。
狩野隼人も海外進出を狙っており、私の提案に二つ返事でオーケーを出し、その年の冬、狩野隼人は瑞都高校に編入した。
これで下準備は整った。
それは才能ある選手を見抜くスカウティング能力。
パパに連れられて多くの試合や選手を見る中で、私の中で気になった選手はその後必ず活躍をしていた。
その関係で私はパパの仕事を手伝わされることになり、数ヶ月間、色々な若手の選手の中からコレと思った選手をクラブに移籍させるための手伝いをした。
たぶん、私が修斗に惹かれたのは修斗の才能が一際目立っていたからなのかもしれない。
ドイツ国内には修斗のようにワンプレーみたただけで心惹かれるような選手は誰もいなかった。
惜しいところで言えばマルコ=ヴィテッシュという人が近かったかもしれない。
そんなこんなで日本への帰国が遅れた私は、戻ってくるとすぐに東京Vへと足を運んだ。
一目で心惹かれた高坂修斗、その人に会いにいくために。
しかし、私が東京Vに訪れた際に教えてもらった事実は衝撃的なことだった。
『高坂修斗は致命的な怪我をしてサッカーはおろか走ることすらできなくなっている』と。
修斗の入院している病院を訪ねようにもクラブ側は個人情報云々で教えてくれなかった。
そこで私はパパに連絡して東京Vとの業務提携を結ぶようにお願いした。
東京Vにいるユース世代の有望性とメリットを事細かに説明し、最後は娘のお願いとしてダダをこねてパパを説得し、なんとか東京Vとの業務提携を結んでもらうことに成功した。
それが中学3年の秋。
私は提携先のオーナーの娘としての地位を利用し、修斗の入院している病院を聞こうとしたが、すでにその時には修斗は退院しており、クラブ側からユースにあげることはできないと申告され、家から近いという瑞都高校に通うことになったという話を聞いた。
その対応に私は酷く憤慨したが、修斗自身もサッカーを続ける気力は無かったらしく、いくつか全国クラスの強豪校と呼ばれるところも紹介したが、全て断ったという。
納得がいかなかった。
私が一目で心動かされたのはサッカーをしている修斗であり、サッカーを諦めた修斗じゃない。
素人目の私が見ただけでも分かる、修斗は日本サッカー界の至宝になるはず。
サッカーをやらなくなった修斗に価値はない。
私はそんなの許さない。
私が好きな修斗はサッカーをやっている修斗なんだ。
絶対にもう一度サッカーをさせてみせる。
私は東京Vにもう一度訪れ、保管しているであろう病院から渡された修斗の怪我の状況についての経過報告やレントゲン写真の入ったデータのバックアップをもらい、それをドイツのパパの知り合いの病院に診てもらった。
その回答は、手術を行なっているのであれば時間と共にサッカーをすることも可能である、ただしその時間がどれほどのものなのかは不明である、というものだった。
修斗自身がそれを知っているかどうかについては定かではないけれど、ともすれば私がどうにかしなくてはならないのは折れた心の方だ。
怪我でサッカーができなくなったところにクラブからの実質的な戦力外通告。
そうとう堪えたにちがいない。
だからまずはそのやる気を取り戻させなくてはならない。
私はまず修斗と同じ瑞都高校に進学することに決めた。
元々目指していた高校からは学力のランクは下がるので入る分には問題なかった。
クラブ側が修斗の自宅や連絡先までは教えてくれなかったので、一緒になるためにはこうするしかなかった。
じゃあどのようにして修斗のサッカーに対する熱意を取り戻すか。
私はヴァリアブルの同期達を利用することにした。
修斗が怪我をしてヴァリアブルを辞めていったことに一番悔しがっていたのは彼らだ。
修斗には、その彼らの成長したプレーを見てもらって対立心を煽っていく。
例えばそうね…………怪我が回復してボールが少し蹴れるようになる頃……半年後なんかが丁度いいかもしれない。
でもきっと、ヴァリアブルの試合を見に行こうと誘っても修斗は見にこないかもしれない。
自分がいなくなっても変わらずボールを蹴っている同期達を見たいとは思わないかもしれない。
それなら…………試合を見たくなるような状況を作ればいいのかしら。
調べたら運の良いことに瑞都高校も全国大会一歩手前までいける実力の高校みたいだ。
じゃあ瑞都高校でヴァリアブルと対戦するような状況を作れば嫌でも修斗は見に来るかも。
でもそもそもヴァリアブルが瑞都高校と試合をしてくれる保証がない……。
じゃあ試合をしたくなる理由を作ればいい?
噂によると、今ユースで最も有名な選手は狩野隼人という選手みたいで、プロ確実とまで言われているみたいだ。
この選手をどうにかして瑞都高校に引っ張ってこれれば、ヴァリアブル側にも練習試合を組むメリットが生まれるはず。
私は再びパパにお願いをして狩野隼人という選手を高校卒業後に契約を結んでくれるように話した。
そして狩野隼人にはユースをやめて瑞都高校に編入すればドイツブンデスリーガ1部のクラブであるクシャスラFCと契約することができると話した。
狩野隼人も海外進出を狙っており、私の提案に二つ返事でオーケーを出し、その年の冬、狩野隼人は瑞都高校に編入した。
これで下準備は整った。
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