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遅延新入生勧誘編
懸念材料③
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生徒会室から図書室に向かうために下駄箱を経由して向かった際、ちょうどグラウンドへ向かおうとしている桜川に声を掛けられた。
「あっ、高坂っち! もうすぐ東京Vの人達来るよ。せっかくだから試合見てってよ!」
会って早々に桜川は俺の腕を引っ張ってグラウンドへ連れて行こうとした。
「さっき連絡したろ。生徒会の仕事があるから見に行けないって」
「そうなの? ごめん、携帯まだ確認してなかった。でも今回は観客の人とかも凄いんだよ! サッカー部がクラブチームと対戦するって聞いて、みんな見にきてるの!」
そりゃ俺だって試合は見たいが…………。
「ねーえ、高坂っちも見に来てよ。ウチのチームも強いんだから、もしかしたら東京Vも食っちゃうかも!」
高校の部活がクラブチームに勝利する……。
たぶんそれは高校側にとってとても大きな意味を持つだろう。
確かにそれは気になる。
「へぇ、Vが負けるところが見れるなんてプレミア物だな。そこまで言うなら少しだけ」
「やった! じゃあ行こ行こ!」
資料はまぁ…………試合の途中で抜け出せば多少遅くなっても大丈夫か。
遠目から見ていればアイツらにも会わないはずだ。
桜川に腕を引っ張られるようにして下駄箱から出てグラウンドへと向かった。
確かに桜川の言った通り、多くの生徒が帰宅するわけでもなくグラウンド方向へと歩いていた。
人の流れに沿うようにして俺達もグラウンドへと向かう。
「今年のチームは全国にも手が届きそうって話なの知ってる? 近年稀に見るベストメンバーなんだって」
「そうなのか?」
グラウンドへと向かいながら桜川が瑞都高校の選手について教えてくれた。
とても生き生きとした表情で、まるで自分の得意分野を自慢しているかのような口ぶりだった。
「まずキイのお兄さんでもある前橋聖先輩。あの人のラインコントロールは抜群で、体格がいいわけじゃないけど相手に競り勝てる球際の強さとジャンプ力があるよ。それにキャプテンシーがあって部員数の多いサッカー部をまとめてる凄い人」
部活紹介の時に舞台に上がって説明していた人物を思い出す。
確かにガタイが良いわけではなかったが、自信に満ち溢れた表情でハッキリとスピーチしていた様は部員を引っ張っていくには充分な立ち振る舞いだった。
「右サイドハーフの千葉先輩は足が速くてスタミナが豊富な人。左サイドハーフの山田さんはフリーキックとクロスの名手。そしてうちが今年全国を狙える最大の理由があの人!」
「「「きゃー! 隼人くーん!!」」」
ちょうどグラウンドへ到着したところで桜川が指差した人物に、多くの黄色い声援が飛んでいた。
部活紹介で一番リフティングが上手く、一度見た練習の際にも明らかな格の違いを見せつけていたエース的存在。
「3年生の狩野隼人先輩! 元々鹿島オルディーズのユースにいたんだけど、なぜか2年生の1月にユースをやめて瑞都高校に転入してきたんだって。あの人が入ってから瑞都高校の得点力はグッと上がったみたいだよ!」
「狩野隼人…………ああ、聞いたことあったな」
鹿島オルディーズは東京VやFC横浜レグノスと並んでJリーグでも上位に位置している。
ジュニアユースやユース自体はそれほど強いわけではないが、俺が中学1年に上がって最初の頃に一時期噂になっていた。
ジュニアユースで最も才能に溢れているのは、鹿島オルディーズの狩野隼人だと。
実際に戦ったことはないし、世代別代表でも被っていなかったので顔は知らなかった。
「まさか瑞都高校にいるとはな」
「でしょ? ちなみにそれ、私が高坂っちに対しても思ったことだからね」
「にしてもまるでアイドルみたいな扱いだな……」
同級生なのか下級生なのかは分からないが、何人もの女子が狩野に手を振っては騒ぎ立て、狩野もそれに対して笑顔で手を振り返しまた騒ぐ。
練習になるのかそれは。
「凄いよね。実際プレーも凄いから女の子達が騒ぎ立てるのも無理ないと思うけど」
「桜川も一緒に騒ぎ立てる系?」
「ち、違うよ! 私の追っかけは高坂っちだけだから! 高坂っち一筋! ファンクラブあったら私が会長やるレベル!」
「大声でそういうこと言うのは……頼むからやめてくれ……!」
笑顔で手振ったりとかできないから俺は。
アイドルなんかやれる器じゃないから。
「あ、そろそろ私マネージャーの仕事をやらなきゃだからまた後でベンチ裏のところに来て! 見学した時のあの場所!」
桜川は思い出したように話し、俺は頷いた。
給水作ったりしなきゃいけないんだろう。
マネージャーというのも大変な仕事だが、部員からしたらありがたい存在だろうな。
特に桜川は元気いいし。
さて、瑞都高校のメンバーがどれぐらいの実力があるのか改めて練習を見させてもら────。
「修斗…………修斗じゃないか!」
「…………涼介」
呼ばれて振り返った先には、俺のかつての親友である神上涼介がいた。
「あっ、高坂っち! もうすぐ東京Vの人達来るよ。せっかくだから試合見てってよ!」
会って早々に桜川は俺の腕を引っ張ってグラウンドへ連れて行こうとした。
「さっき連絡したろ。生徒会の仕事があるから見に行けないって」
「そうなの? ごめん、携帯まだ確認してなかった。でも今回は観客の人とかも凄いんだよ! サッカー部がクラブチームと対戦するって聞いて、みんな見にきてるの!」
そりゃ俺だって試合は見たいが…………。
「ねーえ、高坂っちも見に来てよ。ウチのチームも強いんだから、もしかしたら東京Vも食っちゃうかも!」
高校の部活がクラブチームに勝利する……。
たぶんそれは高校側にとってとても大きな意味を持つだろう。
確かにそれは気になる。
「へぇ、Vが負けるところが見れるなんてプレミア物だな。そこまで言うなら少しだけ」
「やった! じゃあ行こ行こ!」
資料はまぁ…………試合の途中で抜け出せば多少遅くなっても大丈夫か。
遠目から見ていればアイツらにも会わないはずだ。
桜川に腕を引っ張られるようにして下駄箱から出てグラウンドへと向かった。
確かに桜川の言った通り、多くの生徒が帰宅するわけでもなくグラウンド方向へと歩いていた。
人の流れに沿うようにして俺達もグラウンドへと向かう。
「今年のチームは全国にも手が届きそうって話なの知ってる? 近年稀に見るベストメンバーなんだって」
「そうなのか?」
グラウンドへと向かいながら桜川が瑞都高校の選手について教えてくれた。
とても生き生きとした表情で、まるで自分の得意分野を自慢しているかのような口ぶりだった。
「まずキイのお兄さんでもある前橋聖先輩。あの人のラインコントロールは抜群で、体格がいいわけじゃないけど相手に競り勝てる球際の強さとジャンプ力があるよ。それにキャプテンシーがあって部員数の多いサッカー部をまとめてる凄い人」
部活紹介の時に舞台に上がって説明していた人物を思い出す。
確かにガタイが良いわけではなかったが、自信に満ち溢れた表情でハッキリとスピーチしていた様は部員を引っ張っていくには充分な立ち振る舞いだった。
「右サイドハーフの千葉先輩は足が速くてスタミナが豊富な人。左サイドハーフの山田さんはフリーキックとクロスの名手。そしてうちが今年全国を狙える最大の理由があの人!」
「「「きゃー! 隼人くーん!!」」」
ちょうどグラウンドへ到着したところで桜川が指差した人物に、多くの黄色い声援が飛んでいた。
部活紹介で一番リフティングが上手く、一度見た練習の際にも明らかな格の違いを見せつけていたエース的存在。
「3年生の狩野隼人先輩! 元々鹿島オルディーズのユースにいたんだけど、なぜか2年生の1月にユースをやめて瑞都高校に転入してきたんだって。あの人が入ってから瑞都高校の得点力はグッと上がったみたいだよ!」
「狩野隼人…………ああ、聞いたことあったな」
鹿島オルディーズは東京VやFC横浜レグノスと並んでJリーグでも上位に位置している。
ジュニアユースやユース自体はそれほど強いわけではないが、俺が中学1年に上がって最初の頃に一時期噂になっていた。
ジュニアユースで最も才能に溢れているのは、鹿島オルディーズの狩野隼人だと。
実際に戦ったことはないし、世代別代表でも被っていなかったので顔は知らなかった。
「まさか瑞都高校にいるとはな」
「でしょ? ちなみにそれ、私が高坂っちに対しても思ったことだからね」
「にしてもまるでアイドルみたいな扱いだな……」
同級生なのか下級生なのかは分からないが、何人もの女子が狩野に手を振っては騒ぎ立て、狩野もそれに対して笑顔で手を振り返しまた騒ぐ。
練習になるのかそれは。
「凄いよね。実際プレーも凄いから女の子達が騒ぎ立てるのも無理ないと思うけど」
「桜川も一緒に騒ぎ立てる系?」
「ち、違うよ! 私の追っかけは高坂っちだけだから! 高坂っち一筋! ファンクラブあったら私が会長やるレベル!」
「大声でそういうこと言うのは……頼むからやめてくれ……!」
笑顔で手振ったりとかできないから俺は。
アイドルなんかやれる器じゃないから。
「あ、そろそろ私マネージャーの仕事をやらなきゃだからまた後でベンチ裏のところに来て! 見学した時のあの場所!」
桜川は思い出したように話し、俺は頷いた。
給水作ったりしなきゃいけないんだろう。
マネージャーというのも大変な仕事だが、部員からしたらありがたい存在だろうな。
特に桜川は元気いいし。
さて、瑞都高校のメンバーがどれぐらいの実力があるのか改めて練習を見させてもら────。
「修斗…………修斗じゃないか!」
「…………涼介」
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