怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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遅延新入生勧誘編

懸念材料①

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 朝起きてからも俺の頭の中では昨日の桜川からのメッセージが頭に残っていた。

『明日、東京ヴァリアブルユースのBチームと練習試合することになったよ!!』

 俺のいた古巣、東京V。
 現在Jリーグにおいても首位を独走しており、15戦13勝2引き分けと無敗記録を伸ばしており、その予備軍でもあるユースにおいても高円宮杯最高リーグであるプレミアリーグで昨年は2位で終了している。
 Bチームといえど、プレミアリーグの一つ下であるプリンスリーグで優秀な成績を残していたはずだ。
 そして聞いた話によると、今年のプレミアリーグでの東京Vの成績はあまり良くないらしいが、プリンスリーグのBチームはここまで全勝している。
 理由は聞かなくても分かる。

 俺の世代がBチームで活躍しているからだ。

 涼介、光、優夜、賢治。
 あいつらがいて負けるわけがないし、他の奴らも上手い奴ばかりだ。
 そいつらが総じてユースに上がっているのだとしたら、今年のユースのタイトルも総ナメにするだろう。

 桜川の話によると、本来は土日の学校が休みの日に練習試合を組むのが当たり前だが、リーグ戦の関係もあることからBチームとなら可能ということになり、前々から打診していたところ急遽平日の時間外に決定したということだそうだ。
 それも場所は瑞都高校。
 向こうのグラウンドはAチームが使うかららしい。

(ということは…………あいつらも来るのか)

 クラブを去ってから、あいつらとは一度も会っていない。
 涼介とは連絡を何度か取り合っていたが、最近ではそれもあまりない。
 ユースに上がりたてでは競争も激しいだろうから、連絡するのを控えているんだ。

「修斗、早くご飯食べないと遅刻するよ」

「ん? おお」

 梨音に指摘されて目玉焼きを口に頬張る。

 瑞都みずと高校は県大会に出場し、過去には全国大会にも出場したことのある強豪だ。
 俺も一度練習を見たが、プレースタイルは東京Vに近かった。
 キャプテンは前橋の兄で、元FC横浜レグノスのジュニアユース選手。
 ユースには上がらなかったと話していたが、高校に進学して才能が開花したのかもしれない。
 それにもう一人気になる選手がいた。
 部活紹介の時にリフティングをしていて、練習の時にも周りとは一線を画していたエース選手。

 アイツらになるべく会いたいとは思わないが……この試合は少し気になるな。
 試合は放課後…………うーん。

「…………修斗!」

「えっ?」

「え、じゃないよ。遅刻するって言ってるでしょ。まだ寝ぼけてるの?」

 先程、梨音に言われて目玉焼きを口に頬張ってからまた箸が止まっていた。

「わ、悪い」

「もうっ。私は準備できてるんだからね」

「それだったら先に行ってていいぞ。梨音まで遅刻する必要ないし」

「遅刻すること前提……。はぁ、しょうがないわね」

 梨音は諦めたように一息つくと席に座った。

「ちょいちょい、梨音まで遅刻するって」

「ちょっとぐらい遅刻しても大丈夫でしょ。修斗が食べ終わるまで待つよ」

「なに? 俺と一緒に行きたいとか?」

「そうだよ」

 俺が茶化すように言ったのに対し、あっさりと梨音は返してきた。
 そのストレート具合に思わずたじろぐ。

「な、いや、ちょっ」

「…………って言ったらどうする?」

 意地悪く梨音が笑う。
 つ、釣られた!

「べ、別にどうもしねーよ! 勝手にしろい!」

「あはは、焦ってる焦ってるー」

「焦ってねー! おら行くぞ!」

 俺はすぐさま朝食をかき込み、身支度を終えて梨音と家を出た。
 おかげさまで学校には遅刻せずに済んだ。
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