60 / 135
遅延新入生勧誘編
説明責任①
しおりを挟む
そして現在に至るわけだが……。
「全員落ち着けー。静かにしろー」
「高坂、どういう関係なんだ!?」
「もしかして昔の恋人とか!?」
「修斗てめぇぇぇぇ!! 殺されても文句は言えねぇよなぁ!?」
「きゃーだいたーん!!」
「羨ましすぎる!」
…………新之助だけ殺意の衝動強すぎだろ。
というかそろそろ離れてもらわないと、周りの視線が痛すぎる。
見られることに慣れていると言っても、こんな見られ方に耐性はねーよ。
それにアイツも見てるのにこんなのなんて思われるか………………アイツ?
なんで俺は今、梨音のことを気にした?
「静かに」
「えーやばー!」
「とんでもねー!」
「盛り上がってきたー!!」
「…………私のチョークを喰らいたいか?」
ピタリとクラス内が静かになった。
騒がしかった雛鳥達は親鳥もとい、宇佐木先生の脅迫という名の注意によって口を紡いだ。
「鷺宮もそろそろ離れろ。お前の席は一番右後ろだ」
「はーい。また後でね、修斗」
そう言って弥守は俺から離れ、指定された席である梨音の後ろへと座った。
さて…………ともすればホームルームが終わった後、どんな状況になるかはだいたい予想がつく。
質問責めに合うのはもちろんのことだが、それよりも注意すべきなのは……!
「───以上でホームルームは終了にする。日直、号令」
「起立、礼」
「さらば!」
「待てや修斗ぉぉ!! 状況説明無しに逃すかよぉ!!」
頭を下げると同時に宇佐木先生よりも先に教室を飛び出す。
見てはいないが、背後からずっと歯軋りする音が聞こえていたので、新之助が俺の頭と胴体を切り離す妄想でもしていたのだろう。
殺られる前に逃げてしまえ。
─────────
そして中庭の木陰に隠れて身を潜めること5分。
「どこ行きやがった修斗ー!」
間もなく1限が始まるというのに新之助がしつこく探し回っていた。
「あのシスコン野郎……! 俺にだって意味が分からんのに全員が納得できる答えなんか言えるかよ……!」
「…………何してるの?」
「うぉあ!?」
突然、声をかけられて驚きのあまり口から五臓六腑が飛び出しそうになったが、声を掛けてきたのは前橋だった。
不思議そうに覗いてくる小さい女の子は、俺の驚いた声に逆にビクリとしていた。
「急に声を掛けるなよ焦るじゃん」
「…………じゃあなんて声掛けるのが正解?」
「それは………………『大変恐縮ですが、お声掛けさせて頂いても宜しいでしょうか』……とか?」
「馬鹿じゃないの」
おいおい、サッカーIQの高い俺を捕まえて馬鹿とは酷い言い草だが客観的に見たら確かに馬鹿っぽい発言なので今回の所は不問にしておいてやる。
「前橋こそ何してるんだよ」
「私は1限から体育だから……」
なるほど、手に持っているのは体操着か。
中庭の通路を抜けないと体育館には行けないからな。
ということは男子が校庭で女子が体育館か。
ここの体育は基本男子と女子で別れてることが多いんだよな。
「それで、一人で移動か」
「うっ…………べ、別に誰かと移動しないといけないわけじゃないし……」
「それはそうだが……。昨日の今日で一人なのを見ると役員仲間としては心配になるんだよな」
「……心配不要。見ての通り私、コミュ力高いし」
「どのあたりが!?」
どこから出てくるんだその謎自信は!
見た目からコミュ力低めなのが察せれるんだが!?
「無理はするな前橋……! お前にコミュ力というものは、無い」
「ある」
「無い」
「む~……」
膨れても可愛いだけだ。
絶対に譲らんぞ俺は。
「そんな膨れてばっかいないで、笑ってる時の方が前橋は可愛いんだから」
「ふぇっ!?」
「元々可愛いんだから笑ってりゃすぐに友達の一人や二人できんだろ。そしたらコミュ力あると認めてやるよ」
「~~~~!」
「聞いてるか? ほら、いーって笑ってみ? 笑って…………」
「随分楽しそうだね修斗くん」
「…………よぉミスターシスコン」
俺が前橋のコミュ力向上に夢中になっている隙に、いつの間にか背後には新之助がおり、俺の頭を鷲掴みにしていた。
元野球少年を彷彿とさせる素晴らしい握力だ。
「っ……!」
「あっ」
そして前橋もその隙に逃げるようにして去っていってしまった。
「鷺宮の事もまだ聞けていないというのに、君はまた俺の知らない可愛い子と楽しく談笑していたみたいだね」
「いやいや、談笑なんてとんでもない。あの子は俺と同じ生徒会役員だからさ、今のはそう、業務連絡ってやつよ」
「そっか。それなら君にはまだ教室に戻って説明責任を果たすという仕事が残ってるからね。さ、戻ろうか」
「そうだな親友」
「分かってくれたか知り合い」
友情ランクめっちゃ下がってる!!
「全員落ち着けー。静かにしろー」
「高坂、どういう関係なんだ!?」
「もしかして昔の恋人とか!?」
「修斗てめぇぇぇぇ!! 殺されても文句は言えねぇよなぁ!?」
「きゃーだいたーん!!」
「羨ましすぎる!」
…………新之助だけ殺意の衝動強すぎだろ。
というかそろそろ離れてもらわないと、周りの視線が痛すぎる。
見られることに慣れていると言っても、こんな見られ方に耐性はねーよ。
それにアイツも見てるのにこんなのなんて思われるか………………アイツ?
なんで俺は今、梨音のことを気にした?
「静かに」
「えーやばー!」
「とんでもねー!」
「盛り上がってきたー!!」
「…………私のチョークを喰らいたいか?」
ピタリとクラス内が静かになった。
騒がしかった雛鳥達は親鳥もとい、宇佐木先生の脅迫という名の注意によって口を紡いだ。
「鷺宮もそろそろ離れろ。お前の席は一番右後ろだ」
「はーい。また後でね、修斗」
そう言って弥守は俺から離れ、指定された席である梨音の後ろへと座った。
さて…………ともすればホームルームが終わった後、どんな状況になるかはだいたい予想がつく。
質問責めに合うのはもちろんのことだが、それよりも注意すべきなのは……!
「───以上でホームルームは終了にする。日直、号令」
「起立、礼」
「さらば!」
「待てや修斗ぉぉ!! 状況説明無しに逃すかよぉ!!」
頭を下げると同時に宇佐木先生よりも先に教室を飛び出す。
見てはいないが、背後からずっと歯軋りする音が聞こえていたので、新之助が俺の頭と胴体を切り離す妄想でもしていたのだろう。
殺られる前に逃げてしまえ。
─────────
そして中庭の木陰に隠れて身を潜めること5分。
「どこ行きやがった修斗ー!」
間もなく1限が始まるというのに新之助がしつこく探し回っていた。
「あのシスコン野郎……! 俺にだって意味が分からんのに全員が納得できる答えなんか言えるかよ……!」
「…………何してるの?」
「うぉあ!?」
突然、声をかけられて驚きのあまり口から五臓六腑が飛び出しそうになったが、声を掛けてきたのは前橋だった。
不思議そうに覗いてくる小さい女の子は、俺の驚いた声に逆にビクリとしていた。
「急に声を掛けるなよ焦るじゃん」
「…………じゃあなんて声掛けるのが正解?」
「それは………………『大変恐縮ですが、お声掛けさせて頂いても宜しいでしょうか』……とか?」
「馬鹿じゃないの」
おいおい、サッカーIQの高い俺を捕まえて馬鹿とは酷い言い草だが客観的に見たら確かに馬鹿っぽい発言なので今回の所は不問にしておいてやる。
「前橋こそ何してるんだよ」
「私は1限から体育だから……」
なるほど、手に持っているのは体操着か。
中庭の通路を抜けないと体育館には行けないからな。
ということは男子が校庭で女子が体育館か。
ここの体育は基本男子と女子で別れてることが多いんだよな。
「それで、一人で移動か」
「うっ…………べ、別に誰かと移動しないといけないわけじゃないし……」
「それはそうだが……。昨日の今日で一人なのを見ると役員仲間としては心配になるんだよな」
「……心配不要。見ての通り私、コミュ力高いし」
「どのあたりが!?」
どこから出てくるんだその謎自信は!
見た目からコミュ力低めなのが察せれるんだが!?
「無理はするな前橋……! お前にコミュ力というものは、無い」
「ある」
「無い」
「む~……」
膨れても可愛いだけだ。
絶対に譲らんぞ俺は。
「そんな膨れてばっかいないで、笑ってる時の方が前橋は可愛いんだから」
「ふぇっ!?」
「元々可愛いんだから笑ってりゃすぐに友達の一人や二人できんだろ。そしたらコミュ力あると認めてやるよ」
「~~~~!」
「聞いてるか? ほら、いーって笑ってみ? 笑って…………」
「随分楽しそうだね修斗くん」
「…………よぉミスターシスコン」
俺が前橋のコミュ力向上に夢中になっている隙に、いつの間にか背後には新之助がおり、俺の頭を鷲掴みにしていた。
元野球少年を彷彿とさせる素晴らしい握力だ。
「っ……!」
「あっ」
そして前橋もその隙に逃げるようにして去っていってしまった。
「鷺宮の事もまだ聞けていないというのに、君はまた俺の知らない可愛い子と楽しく談笑していたみたいだね」
「いやいや、談笑なんてとんでもない。あの子は俺と同じ生徒会役員だからさ、今のはそう、業務連絡ってやつよ」
「そっか。それなら君にはまだ教室に戻って説明責任を果たすという仕事が残ってるからね。さ、戻ろうか」
「そうだな親友」
「分かってくれたか知り合い」
友情ランクめっちゃ下がってる!!
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説



隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~
くまたに
青春
冷姫と呼ばれる美少女と友達になった。
初めての異性の友達と、新しいことに沢山挑戦してみることに。
そんな中彼女が見せる幸せそうに笑う表情を知っている男子は、恐らくモブ一人。
冷姫とモブによる砂糖のように甘い日々は誰にもバレることなく隠し通すことができるのか!
カクヨム・小説家になろうでも記載しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる