59 / 135
遅延新入生勧誘編
代表選抜④
しおりを挟む
「修斗ー!」
「おっ」
試合を終えた俺の元に弥守がやってきた。
「どうだった? 試合は」
「かっっっこよかった!! 修斗が一番目立ってたよ!!」
「試合内容を聞いたんだけどな……。でもサッカーが面白いって分かってくれたろ?」
「ええ! 凄く好きになったわ!!」
よしよし、これでまた一人サッカー信者が増えたわけだ。
こうやってサッカー人口を増やしていくのが選手としての務め───。
「よぉ修斗! 何をまた女の子口説いてねん」
ちっ、うるさい奴が来たな。
「弥守ちゃん言うんか? 俺、城ヶ崎言います、宜しゅう!」
「気安く話しかけないで」
「風当たりきっつ」
つ、冷たぁ……。
何で優夜に対してこんなに冷たいんだ。
確かにこの馴れ馴れしさ、気持ちは分からんでもないが……ほぼ初対面でそんな強く当たる?
「な、なんやねん。俺、なんかしたか?」
「関西弁が気に食わないんだろきっと。標準語に戻せよ」
「俺のアイデンティティやぞ!」
涼介が優夜に言った。
「なぁ弥守さん」
「気安く話しかけないで」
「俺もかよ」
涼介にさえもその態度なのか……。
俺と最初に話した時はこんな感じじゃなかったんだけどな……。
「弥守、一応俺のチームメイトだからあんまり冷たくしないでやってくれよ」
「うん! 修斗が言うならそうするぅ」
「はぁ!? 何やねんこの扱いの差はよぉ!」
「きっと、先制点を決めきれなかったお前が悪いんだ」
「何でやねん! そのあと2点決めたやないか!」
「何事も2番じゃダメなんだよ1番でなきゃ」
言い合う涼介と優夜を尻目に、弥守を連れて少しグラウンドから離れた。
「俺はこの後も練習あるからさ、弥守は先に帰ってなよ」
「何日ぐらいドイツにいるの?」
「5日ぐらいかな」
「自由時間は? 遊べる日はある?」
自由時間……もしかしたら昨日みたいにあるのかもしれないが、そもそも合宿という名目で来ているわけだから、遊ぶ時間なんてものは無い可能性の方が高い。
それに俺自身も遊びたいわけじゃない。
せっかくドイツまで来ているんだ、時間があるのなら少しでも練習をしていたい。
「悪いけど弥守と遊んでいる暇は───」
「私のパパ、プロサッカーチームのオーナーやってるよ」
「マジで!?」
「うん。パパに言えば試合見せてもらえるかも」
なんという棚からぼた餅……!
ドイツブンデスリーガの試合が間近で見られるとなれば話は別だ。
「…………なんとか監督に話を通してみるから、お父さんに試合を見せてもらえるようにお願いできる?」
「うん!」
弥守がパァッと笑顔になった。
弥守のコネを利用しているようで気が引けるが、プロの試合観戦と天秤に掛けたら答えはすぐに出る。
こんな貴重な機会を逃すことはしない。
「これ、泊まってるホテルと連絡先。携帯は使えないから何かあればここに連絡して。もしくは毎日ここで練習してるはずだからその時でも」
「はーい」
こうして俺は弥守に連絡先を渡し、それからの5日間毎日弥守はグラウンドに来て俺達の練習を見ていた。
最終的に涼介や優夜達とも仲良くはなったが、俺と話す時と態度が違うと優夜はブー垂れていた。そんなん知らんわ。
弥守はお父さんに話を通してくれたみたいで、俺達は全員招待され、ホームの試合を見ることができた。
弥守のお父さんのチームはあまり有名なところではなかったが、相手がシャルケだったこともあり充分に盛り上がり、貴重な経験を得ることができた。
そして別れの日。
「じゃあな弥守、色々勉強になったよありがとう」
「私もまた日本に戻るから、その時にまたね!」
「俺は東京Vにいるから。もし日本に戻ったら来てくれよ」
「うん! 絶対!」
そう約束して俺達は先に日本へと帰国した。
その数ヶ月後、俺は怪我をして東京Vには行かなくなり、弥守と会うこともこの時以降無かった。
「おっ」
試合を終えた俺の元に弥守がやってきた。
「どうだった? 試合は」
「かっっっこよかった!! 修斗が一番目立ってたよ!!」
「試合内容を聞いたんだけどな……。でもサッカーが面白いって分かってくれたろ?」
「ええ! 凄く好きになったわ!!」
よしよし、これでまた一人サッカー信者が増えたわけだ。
こうやってサッカー人口を増やしていくのが選手としての務め───。
「よぉ修斗! 何をまた女の子口説いてねん」
ちっ、うるさい奴が来たな。
「弥守ちゃん言うんか? 俺、城ヶ崎言います、宜しゅう!」
「気安く話しかけないで」
「風当たりきっつ」
つ、冷たぁ……。
何で優夜に対してこんなに冷たいんだ。
確かにこの馴れ馴れしさ、気持ちは分からんでもないが……ほぼ初対面でそんな強く当たる?
「な、なんやねん。俺、なんかしたか?」
「関西弁が気に食わないんだろきっと。標準語に戻せよ」
「俺のアイデンティティやぞ!」
涼介が優夜に言った。
「なぁ弥守さん」
「気安く話しかけないで」
「俺もかよ」
涼介にさえもその態度なのか……。
俺と最初に話した時はこんな感じじゃなかったんだけどな……。
「弥守、一応俺のチームメイトだからあんまり冷たくしないでやってくれよ」
「うん! 修斗が言うならそうするぅ」
「はぁ!? 何やねんこの扱いの差はよぉ!」
「きっと、先制点を決めきれなかったお前が悪いんだ」
「何でやねん! そのあと2点決めたやないか!」
「何事も2番じゃダメなんだよ1番でなきゃ」
言い合う涼介と優夜を尻目に、弥守を連れて少しグラウンドから離れた。
「俺はこの後も練習あるからさ、弥守は先に帰ってなよ」
「何日ぐらいドイツにいるの?」
「5日ぐらいかな」
「自由時間は? 遊べる日はある?」
自由時間……もしかしたら昨日みたいにあるのかもしれないが、そもそも合宿という名目で来ているわけだから、遊ぶ時間なんてものは無い可能性の方が高い。
それに俺自身も遊びたいわけじゃない。
せっかくドイツまで来ているんだ、時間があるのなら少しでも練習をしていたい。
「悪いけど弥守と遊んでいる暇は───」
「私のパパ、プロサッカーチームのオーナーやってるよ」
「マジで!?」
「うん。パパに言えば試合見せてもらえるかも」
なんという棚からぼた餅……!
ドイツブンデスリーガの試合が間近で見られるとなれば話は別だ。
「…………なんとか監督に話を通してみるから、お父さんに試合を見せてもらえるようにお願いできる?」
「うん!」
弥守がパァッと笑顔になった。
弥守のコネを利用しているようで気が引けるが、プロの試合観戦と天秤に掛けたら答えはすぐに出る。
こんな貴重な機会を逃すことはしない。
「これ、泊まってるホテルと連絡先。携帯は使えないから何かあればここに連絡して。もしくは毎日ここで練習してるはずだからその時でも」
「はーい」
こうして俺は弥守に連絡先を渡し、それからの5日間毎日弥守はグラウンドに来て俺達の練習を見ていた。
最終的に涼介や優夜達とも仲良くはなったが、俺と話す時と態度が違うと優夜はブー垂れていた。そんなん知らんわ。
弥守はお父さんに話を通してくれたみたいで、俺達は全員招待され、ホームの試合を見ることができた。
弥守のお父さんのチームはあまり有名なところではなかったが、相手がシャルケだったこともあり充分に盛り上がり、貴重な経験を得ることができた。
そして別れの日。
「じゃあな弥守、色々勉強になったよありがとう」
「私もまた日本に戻るから、その時にまたね!」
「俺は東京Vにいるから。もし日本に戻ったら来てくれよ」
「うん! 絶対!」
そう約束して俺達は先に日本へと帰国した。
その数ヶ月後、俺は怪我をして東京Vには行かなくなり、弥守と会うこともこの時以降無かった。
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる