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遅延新入生勧誘編
新生徒会③
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「ところで話は変わるんだが、お前達のクラス…………というか私のクラスでもあるが、入学当初から親の仕事の都合で休学していた奴がいてな、それが明日から休学が解けるという話を教頭から聞いた。お前らで面倒を見てやってくれ」
「そんな人いたんですか?」
「気付かなかったか? 私のクラスは他のクラスよりも少ない35名だが、最初からクラスには34名しかいなかったぞ?」
まじか。
ずっと一人足りないことに気付かなかったわ。
余分に空席があるのは知っていたが、他クラスよりも人数が少ないからこその空席だと思っていた。
「というか何故俺なんですか」
「生徒会役員だろ? 一ヶ月も遅れて入ってきたら馴染めないのが普通だ。なんとかしてやれ」
そんな横暴な……。
だがこの人の言うことも一理ある。
既にグループが固まりつつあるクラスで、今から間に入るのは至難だろう。
「佐川とか使え。あいつは意外と気が回る」
「よく見てますね。新之助のこと、嫌っているのかと思いましたけど」
「あの程度で嫌ったりなどせんさ。確かに馴れ馴れしい部分もあるが、アレはアイツなりのコミュニケーションの取り方だ。私から見ればまだまだケツの青いガキだがな」
やっぱり…………この人は侮れないな。
語気が強く、ぶっきらぼうな所はあるが、生徒全員の名前を把握していたり、生徒の長所を良く把握している。
教師としての適正はともかく、指導者としての資質は高い。
良い先生だ。
「分かりました。俺や梨音で面倒見ますよ」
「よし、よく言った。私から注いでやろう」
「ありが…………おい酒じゃねぇかこれ!! 何であんだよ!」
注がれそうになった缶には紛れもなく『これはお酒です』の文字が入っていた。
ぱっと見ただの炭酸かと思ったのに、危うく見落とすところだっつーの!
「おや不思議だ。世界にはまだまだ知らないことがいっぱいだな」
「アンタが持ってきてたんだろ。学校にまで持ってくるなんてどうかしてるぞ」
「私が持ってきたわけじゃないが、信じるか信じないかはお前次第だ」
「都市伝説みたいに言うな」
とりあえず没収。
まったく、こっそり尊敬の念を抱いたかと思えばすぐにぶち壊しにくる。
素直に尊敬させてくれる人はいないのかこの学校には。
「ん? 何で私の方を見るんだシュート?」
「いえ、別に」
「さて、それじゃあそろそろお開きとするか。あまり長い時間ここでお茶していてもよろしくないからね」
神奈月先輩の一声により、その日は解散となった。
明日来るクラスメイト、一体どんな奴なのか。
流石にこれ以上変な奴が増えても困るから普通の人でお願いしたい。
切に願う俺だった。
─────────────────────
「HR前だが、入学当初から休学していた生徒が今日から一緒になる。全員、暖かく迎えるように」
次の日、朝のHRで宇佐木先生が先日言っていた生徒を紹介し、教壇の前へと立たせた。
その姿を見て俺はしばらく記憶を辿った後、ピンと来た。
金髪に近い明るいブラウン色の綺麗な長髪に碧眼という日本人離れした容姿に、パリコレに出ているモデル達にも引けを取らないスタイル。
他を圧倒するほどの場違いな存在感は、日本というステージのせいか以前外国で会った時よりも増しているように感じた。
「鷺宮=アーデルハイト=弥守です。よろしくお願いします」
そう言って無愛想に挨拶する彼女は、1年前の冬に日本代表選抜のドイツ遠征先で出会った女の子だった。
確かにドイツにいた間は仲良くしていたが、日本に帰ってからは一度も会ったことはないし、そもそも連絡先すら知らなかったので、今の今まで存在を忘れていた。
まさか同じ高校に入学していたとは驚いたが、一緒にいたのはたかが数日だ。
俺はドイツ遠征という大行事だし彼女のあの見た目だ、1年経って成長しているとはいえすぐに思い出すことができたが、向こうは俺のことなんて覚えていないだろう。
「日本語……」
「ペラペラ……」
ザワザワと周りがざわつく。
あの見た目でガッツリ日本人なんだ、驚くのも無理はない。
「鷺宮はハーフだが日本育ちだから当然日本語は話せるぞ。あまり奇特な目で見てやるなよ」
先生が誤解を解くように話したが、クラスのざわつきは収まらなかった。
「なぁ修斗! やばい綺麗な子が来たな! これうちのクラス始まったろ!」
何が始まったのかは知らんが、クラスのざわついている理由のほとんどが新之助と同じだろう。
「本来なら鷺宮の席は佐川の後ろだったんだが……」
「ユキセン! 本来あるがままの姿が一番だと思います!!」
「黙れ」
新之助の熱意は虚しく一蹴された。
その時、反応した佐川を見たのか、こちらを見た鷺宮と目があった。
無表情だった鷺宮の顔が一瞬にしてぱぁっと明るくなった。
「Lange nicht gesehen(久しぶり)修斗! やっと会えた!!」
「え?」
そして勢いよく近付いてきたかと思ったらいきなり抱き付かれ、俺の思考がすぐさまフリーズした。
「「「ええええええええええ!?」」」
クラス内から驚嘆の声が上がった。
というか俺も声をあげていた。
「そんな人いたんですか?」
「気付かなかったか? 私のクラスは他のクラスよりも少ない35名だが、最初からクラスには34名しかいなかったぞ?」
まじか。
ずっと一人足りないことに気付かなかったわ。
余分に空席があるのは知っていたが、他クラスよりも人数が少ないからこその空席だと思っていた。
「というか何故俺なんですか」
「生徒会役員だろ? 一ヶ月も遅れて入ってきたら馴染めないのが普通だ。なんとかしてやれ」
そんな横暴な……。
だがこの人の言うことも一理ある。
既にグループが固まりつつあるクラスで、今から間に入るのは至難だろう。
「佐川とか使え。あいつは意外と気が回る」
「よく見てますね。新之助のこと、嫌っているのかと思いましたけど」
「あの程度で嫌ったりなどせんさ。確かに馴れ馴れしい部分もあるが、アレはアイツなりのコミュニケーションの取り方だ。私から見ればまだまだケツの青いガキだがな」
やっぱり…………この人は侮れないな。
語気が強く、ぶっきらぼうな所はあるが、生徒全員の名前を把握していたり、生徒の長所を良く把握している。
教師としての適正はともかく、指導者としての資質は高い。
良い先生だ。
「分かりました。俺や梨音で面倒見ますよ」
「よし、よく言った。私から注いでやろう」
「ありが…………おい酒じゃねぇかこれ!! 何であんだよ!」
注がれそうになった缶には紛れもなく『これはお酒です』の文字が入っていた。
ぱっと見ただの炭酸かと思ったのに、危うく見落とすところだっつーの!
「おや不思議だ。世界にはまだまだ知らないことがいっぱいだな」
「アンタが持ってきてたんだろ。学校にまで持ってくるなんてどうかしてるぞ」
「私が持ってきたわけじゃないが、信じるか信じないかはお前次第だ」
「都市伝説みたいに言うな」
とりあえず没収。
まったく、こっそり尊敬の念を抱いたかと思えばすぐにぶち壊しにくる。
素直に尊敬させてくれる人はいないのかこの学校には。
「ん? 何で私の方を見るんだシュート?」
「いえ、別に」
「さて、それじゃあそろそろお開きとするか。あまり長い時間ここでお茶していてもよろしくないからね」
神奈月先輩の一声により、その日は解散となった。
明日来るクラスメイト、一体どんな奴なのか。
流石にこれ以上変な奴が増えても困るから普通の人でお願いしたい。
切に願う俺だった。
─────────────────────
「HR前だが、入学当初から休学していた生徒が今日から一緒になる。全員、暖かく迎えるように」
次の日、朝のHRで宇佐木先生が先日言っていた生徒を紹介し、教壇の前へと立たせた。
その姿を見て俺はしばらく記憶を辿った後、ピンと来た。
金髪に近い明るいブラウン色の綺麗な長髪に碧眼という日本人離れした容姿に、パリコレに出ているモデル達にも引けを取らないスタイル。
他を圧倒するほどの場違いな存在感は、日本というステージのせいか以前外国で会った時よりも増しているように感じた。
「鷺宮=アーデルハイト=弥守です。よろしくお願いします」
そう言って無愛想に挨拶する彼女は、1年前の冬に日本代表選抜のドイツ遠征先で出会った女の子だった。
確かにドイツにいた間は仲良くしていたが、日本に帰ってからは一度も会ったことはないし、そもそも連絡先すら知らなかったので、今の今まで存在を忘れていた。
まさか同じ高校に入学していたとは驚いたが、一緒にいたのはたかが数日だ。
俺はドイツ遠征という大行事だし彼女のあの見た目だ、1年経って成長しているとはいえすぐに思い出すことができたが、向こうは俺のことなんて覚えていないだろう。
「日本語……」
「ペラペラ……」
ザワザワと周りがざわつく。
あの見た目でガッツリ日本人なんだ、驚くのも無理はない。
「鷺宮はハーフだが日本育ちだから当然日本語は話せるぞ。あまり奇特な目で見てやるなよ」
先生が誤解を解くように話したが、クラスのざわつきは収まらなかった。
「なぁ修斗! やばい綺麗な子が来たな! これうちのクラス始まったろ!」
何が始まったのかは知らんが、クラスのざわついている理由のほとんどが新之助と同じだろう。
「本来なら鷺宮の席は佐川の後ろだったんだが……」
「ユキセン! 本来あるがままの姿が一番だと思います!!」
「黙れ」
新之助の熱意は虚しく一蹴された。
その時、反応した佐川を見たのか、こちらを見た鷺宮と目があった。
無表情だった鷺宮の顔が一瞬にしてぱぁっと明るくなった。
「Lange nicht gesehen(久しぶり)修斗! やっと会えた!!」
「え?」
そして勢いよく近付いてきたかと思ったらいきなり抱き付かれ、俺の思考がすぐさまフリーズした。
「「「ええええええええええ!?」」」
クラス内から驚嘆の声が上がった。
というか俺も声をあげていた。
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