怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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生徒会勧誘編

会計担当②

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「生徒会の人…………でいいんですかね?」

「あ……いや、正確にはまだだけど…………」

 違うのか?
 でも会計専用の部屋にいたってことは生徒会関係者の誰かだとも思ったんだが。

「あれですか? 神奈月先輩から俺のこと聞いてたりとかしてます?」

 なんか俺のこと知ってそうな感じだしな。

「未来さんからは…………別に」

 ふいっと目線を逸らされた。

 会長から聞いてないとしたら、昔か?
 どこかで会ったことあったか……?
 うーん、人の顔を覚えたりすんのは苦手だからなぁ。
 流石に元同級生とかの顔を忘れたりはしないから、元同級生ではないはずだし……。

「会計…………の人じゃないんですか?」

「…………まだ違う。私、あなたと同じ1年だから。敬語とかも使わなくていい」

「タメだったのか」

 元同級生か!?
 元同級生の可能性出てきたのか!?

「一応……改めて自己紹介しとくけど、1年7組の高坂修斗だ」

「…………1年3組の前橋まえばしきい」

 ……名前聞いても覚えがないな。

「前橋は何でここにいるんだ? 生徒会じゃないんだろ?」

「次期会計候補だから。未来さんとは昔から顔馴染みで、中学の頃から生徒会だったから今回も誘われてる」

「だからこの部屋にいたのか。中見ても?」

「……うん」

 部屋の中を見せてもらうと、パソコンと大量の資料が机の上に置いてあり、隅には一人が寝転がれるほどのベッドが置いてあった。
 なんというかネットカフェとかの個室のちょっと広め版みたいな感じだ。

「会計の仕事してたのか?」

「……会計はほぼ私になるって未来さんが言ってたから」

「ふーん。まだ生徒会に入ってないのに仕事するとか偉いな」

「べ、別にヒマだったし……」

 とはいえボランティアでやってるってことだよな。
 高校入って間もないのにすぐ雑務をこなすってすげーよ。
 金銭関係のことも任されるってことは、相当信頼されているんだろうな。

「ま、神奈月先輩がいないんなら話はまた今度だな。それじゃあ前橋、俺が来たこと伝えといてくれよ」

「………………」

「前橋?」

「…………あ、わ、分かった」

 今すげー見られてたけど何だ?
 なんか言いたげな気もするが……まぁいいか。

「高坂……」

「ん?」

 帰ろうとすると前橋に呼び止められた。

「どうして……この高校にいるの?」

「家から一番近いから」

「………………」

 え? なんか答え方ミスったか?
 それとも俺なんかが来ていいところじゃないとかそういう話?
 そんな格式高いところじゃないよなここ。
 偏差値も平均ぐらいだし、スポーツ関係の部活が強いのは有名だけど。

「そうじゃなくて…………高坂はサッカーで有名でしょ」

「……知ってたのか」

 前橋も中学時代の俺のことを知っていたから、最初から知り合い感出てたのか。
 良かった俺が忘れてるだけじゃなくて。
 だとしたらまた怪我してサッカー出来なくなったことを説明しないといけないのか。
 もはや宿命だなこれは。

「大怪我したっていうのは……知ってる」

 知ってんのか。
 なら話は早いな。

「その怪我の影響でサッカーが出来なくなったんだよ」

「…………!!」

「だから高校ではサッカーやらないからここにした」

「そうだったんだ……。答え辛いこと聞いてごめん」

「最近はそうでもないんだなこれが。怪我したことを説明する機会が多くてね。段々慣れてきたところだ」

「なにそれ。変なの」

 クスリと少し笑みを見せる前橋。
 無愛想な表情の時より数倍可愛く見えた。

「私、中学の時に高坂の試合を見に行ったことがある」

「まじ? 前橋ってサッカー興味あるの?」

「中学まで女子サッカーやってた」

「おおー」

 桜川といい前橋といい、スポーツ強い高校は女子もスポーツやってた子が集まってくるのか。
 というか前橋はスポーツやりそうには見えないけどな。
 身長も結構低いし、文化系ってイメージだ。

「高校ではやらないのか?」

「…………身長が伸びないからやめた」

「それは…………おう」

 よかった身長のことに触れないで。
 たぶんコンプレックスだろうな。

「大丈夫だって。高校でも成長期はあるから。これからグングンよ」

「それは主に男子でしょ」

「そんなことないさ。牛乳飲んで早寝早起きしてれば伸びるさ」

「小学生に言うセリフだよ」

 そんなことないと思うんだけどな。
 現に梨音のやつはそれで身長も胸も成長しまくりだったわけで。
 褒めるつもりでそれ言ったらテーブルの角で頭をいかれたのは記憶に新しい。

「高坂のプレーはなんというか…………凄く参考になった」

「そうか? 結構その場の勢いでプレーしてることが多かったから派手な奴は無かったと思うけど」

「そんなことない。まるで海外サッカーを見てるようでワクワクした」

「そんなにレベル高くないって。海外サッカー好きなん?」

 その何気ない俺の一言が前橋のスイッチを押したみたいだった。

「凄い見てる! 最近だとエムバペとかハーランドとか若いのに大活躍してる選手とか見るのが好きだし、プレミアリーグは相変わらず強いチームが多いし、意外とセリエAが再建してきてるのも凄いよね! ブンデスリーガには日本の選手がいっぱいいるし、リーガエスパニョーラもレアルとバルサが相変わらず──────はっ」

「お……おお」

 あまりの饒舌っぷりに思わず圧倒された。
 前橋は顔を真っ赤にさせて俯いてしまった。

 なんというかあれだな。
 前橋はいわゆるサッカーオタクだな。
 自身がやるのもいいんだろうけど、どちらかというと見る方が好きそうだ。
 ずっとツンケンな性格だと思ってたけど、可愛いところあんなぁ。

「…………ごめん」

「何で謝んの」

「急に話しだしたりして……気持ち悪いし」

「自分の興味あることになったら話が止まらなくなるのは誰でも一緒だろ。それこそ俺だって試合見てる時はずっと独り言呟いてるからね」

 この間だって桜川にそれ見られてニヤニヤされたし。

「むしろサッカーの話題だったら俺だって臨むところだ。知識なら負けねーよ」

 そう言って俺は胸を叩いた。

「…………やっぱり変なの」

 またクスリと前橋が笑った。
 それにつられて俺も笑う。

 なんだか仲良くなれたみたいだ。
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