21 / 135
部活勧誘編
若元梨音③
しおりを挟む
「おー梨音。わざわざ待ってたのか」
修斗はベッドの上で足を吊られるようにして寝ていた。
修介おじさんからは落ち込んでいたという話だったのに、修斗に落ち込んでいる素振りは全然見られなかった。
「修斗…………足は……」
「俺は全然大丈夫。この足だって蹴れなくなる可能性があるってだけだし、リハビリを頑張ればきっとまたサッカーできるようになるさ。それに、たとえサッカーができなくなっても俺の人生が終わるわけじゃないんだ。また夢中になれるものを探すよ」
そう言ってアハハと笑う修斗。
良かった。
思っていたよりも修斗はずっと元気だった。
私が何か声をかける前に、自分の中で収拾をつけたんだ。
「修斗ならきっとできるよ」
「だろ? 頑張るぜ俺は」
その姿に安心した私は飲み物を買ってくるといって部屋から出て、1階の自動販売機でスポーツドリンクを買ってから再び部屋へと戻った。
(泣いてる声……?)
部屋へ入ろうと扉に手を掛けた私は、部屋の中から啜り泣く声がしたことに気付いた。
扉をそっと開けて中を見ると修斗がベッドのシーツを強く握って涙を流しながら泣いていた。
「うっ…………うっ……くそぉ…………! なんで…………なんで怪我なんか…………! 俺からサッカーを取ったら…………何が残るっていうんだ…………! くそぉ…………!」
その姿を見て胸の奥が熱くなり、私の目からも涙が溢れた。そっと扉を閉めて、その場に私もうずくまった。
ショックを受けていないわけがなかったんだ。
修斗は私に心配をかけないように、弱い部分を見せないようにと強がっていただけなんだ。
それなのに私は、そんな事も気付かずに「修斗ならできる」なんて無責任なことを言ってしまった。
「私は…………馬鹿だ……!」
本当に修斗のことが心配なら、強がっていることにも気付いてあげられないといけなかった。
本人が一番辛いはずなのに、本来なら他の人のことなんて気にする余裕なんてないはずなのに、気を遣わせてしまうなんて。
私は結局、修斗のことを何にも分かっていなかったんだ。
(私が修斗のために出来ることは…………)
次の日から私は学校終わりや休みの日など、行ける日は全て修斗が入院している病院にお見舞いに行った。
これまではサッカー推薦で高校を決める予定だったけど、その可能性が潰えたために一般入試を受けて高校に進学することになったため、勉強を私が教える必要があった。
修斗と同じクラスの人やサッカー関係の人達も最初の頃はお見舞いに来ていたけど、2週間後にはあまり来なくなっていた。
そして入院してから3週間後、修斗は自力で歩くためのリハビリを始めた。
最初は立ち上がることすらままならなかったけど、修斗は一度も弱音を吐くことはなかった。
少しづつだけど確実に、日々のリハビリのおかげで入院してから1ヶ月半後にはゆっくりだけれども自力で歩くことができるようになった。
「見たか梨音ほら! やっと一人で歩けるようになったんだぜ! ほれほれ!」
「はいはい分かったから。やっと1歳児に並んだね」
「何でそういうこと言うんだ」
茶化してみたけど、私も嬉しさのあまり口元がニヤニヤとしており、それを見た修斗は満足そうに笑った。
そして怪我してから2ヶ月後、修斗は無事退院した。
すぐに受験が控えていたけど、修斗は元々地頭も良く、入院中も勉強していたおかげで家から一番近い瑞都高校に合格することができた。
私ももちろん瑞都高校。
修斗との縁はまだまだこれからも続きそうと思った3月の終わり、私はお父さんからとんでもない話を聞かされることになった。
「梨音、4月から修斗がここに住む事になったから」
「……………………え?」
修斗が…………一緒に住む?
修斗はベッドの上で足を吊られるようにして寝ていた。
修介おじさんからは落ち込んでいたという話だったのに、修斗に落ち込んでいる素振りは全然見られなかった。
「修斗…………足は……」
「俺は全然大丈夫。この足だって蹴れなくなる可能性があるってだけだし、リハビリを頑張ればきっとまたサッカーできるようになるさ。それに、たとえサッカーができなくなっても俺の人生が終わるわけじゃないんだ。また夢中になれるものを探すよ」
そう言ってアハハと笑う修斗。
良かった。
思っていたよりも修斗はずっと元気だった。
私が何か声をかける前に、自分の中で収拾をつけたんだ。
「修斗ならきっとできるよ」
「だろ? 頑張るぜ俺は」
その姿に安心した私は飲み物を買ってくるといって部屋から出て、1階の自動販売機でスポーツドリンクを買ってから再び部屋へと戻った。
(泣いてる声……?)
部屋へ入ろうと扉に手を掛けた私は、部屋の中から啜り泣く声がしたことに気付いた。
扉をそっと開けて中を見ると修斗がベッドのシーツを強く握って涙を流しながら泣いていた。
「うっ…………うっ……くそぉ…………! なんで…………なんで怪我なんか…………! 俺からサッカーを取ったら…………何が残るっていうんだ…………! くそぉ…………!」
その姿を見て胸の奥が熱くなり、私の目からも涙が溢れた。そっと扉を閉めて、その場に私もうずくまった。
ショックを受けていないわけがなかったんだ。
修斗は私に心配をかけないように、弱い部分を見せないようにと強がっていただけなんだ。
それなのに私は、そんな事も気付かずに「修斗ならできる」なんて無責任なことを言ってしまった。
「私は…………馬鹿だ……!」
本当に修斗のことが心配なら、強がっていることにも気付いてあげられないといけなかった。
本人が一番辛いはずなのに、本来なら他の人のことなんて気にする余裕なんてないはずなのに、気を遣わせてしまうなんて。
私は結局、修斗のことを何にも分かっていなかったんだ。
(私が修斗のために出来ることは…………)
次の日から私は学校終わりや休みの日など、行ける日は全て修斗が入院している病院にお見舞いに行った。
これまではサッカー推薦で高校を決める予定だったけど、その可能性が潰えたために一般入試を受けて高校に進学することになったため、勉強を私が教える必要があった。
修斗と同じクラスの人やサッカー関係の人達も最初の頃はお見舞いに来ていたけど、2週間後にはあまり来なくなっていた。
そして入院してから3週間後、修斗は自力で歩くためのリハビリを始めた。
最初は立ち上がることすらままならなかったけど、修斗は一度も弱音を吐くことはなかった。
少しづつだけど確実に、日々のリハビリのおかげで入院してから1ヶ月半後にはゆっくりだけれども自力で歩くことができるようになった。
「見たか梨音ほら! やっと一人で歩けるようになったんだぜ! ほれほれ!」
「はいはい分かったから。やっと1歳児に並んだね」
「何でそういうこと言うんだ」
茶化してみたけど、私も嬉しさのあまり口元がニヤニヤとしており、それを見た修斗は満足そうに笑った。
そして怪我してから2ヶ月後、修斗は無事退院した。
すぐに受験が控えていたけど、修斗は元々地頭も良く、入院中も勉強していたおかげで家から一番近い瑞都高校に合格することができた。
私ももちろん瑞都高校。
修斗との縁はまだまだこれからも続きそうと思った3月の終わり、私はお父さんからとんでもない話を聞かされることになった。
「梨音、4月から修斗がここに住む事になったから」
「……………………え?」
修斗が…………一緒に住む?
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

転校して来た美少女が前幼なじみだった件。
ながしょー
青春
ある日のHR。担任の呼び声とともに教室に入ってきた子は、とてつもない美少女だった。この世とはかけ離れた美貌に、男子はおろか、女子すらも言葉を詰まらせ、何も声が出てこない模様。モデルでもやっていたのか?そんなことを思いながら、彼女の自己紹介などを聞いていると、担任の先生がふと、俺の方を……いや、隣の席を指差す。今朝から気になってはいたが、彼女のための席だったということに今知ったのだが……男子たちの目線が異様に悪意の籠ったものに感じるが気のせいか?とにもかくにも隣の席が学校一の美少女ということになったわけで……。
このときの俺はまだ気づいていなかった。この子を軸として俺の身の回りが修羅場と化すことに。


可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる