16 / 135
部活勧誘編
一一④
しおりを挟む
結局、俺が部活に入らない理由はボールを蹴ると足が爆発して死ぬから説に落ち着いた。
否定するのも面倒くさいので、あーはいはいそれが正解と話したら決定したみたいだ。
すこぶるどうでもいい。
放課後、ホームルームが終了したが桜川はやってこなかった。
おそらく俺達の方が終わるのが早かったのだろう。
「修斗」
梨音が呼びかけてきた。
帰る支度ができているようで、八幡も一緒にいた。
「今日はどうするの?」
「帰るよ。桜川も来てないみたいだし」
「それだったら冬華とマクドナルド寄ってくつもりなんだけど、修斗も来る?」
マクドナルド……!
あのジャンキーな食べ物が置いてあるハンバーガー屋のことか!
人生何事も経験、高校生になって学校帰りにマクドナルドに寄って買い食いする。最高だな。
「いいね行こうぜ。八幡は俺がいても大丈夫?」
「もちろんだよ。むしろ、私がリオに高坂君も誘ってみるように話したから」
「ほう」
八幡は梨音と席が近いから話すようになった、というのはこの前知った。
見た目的には女子版ニノという感じか。
地毛だと思われる茶髪のセミロングで眼鏡をかけていて落ち着いた雰囲気は少し大人びて見える。
だがやらしい話、胸はでかい。
俺と新之助の見立てでは、クラスの中で一番胸が大きいのは八幡だとつい先日結論が出た。
梨音も決して小さい方ではないが、八幡の隣に並ぶと霞むな。
「なになに? マック行くの? いいじゃん俺もついてっていい?」
ここぞとばかりに話を聞いていた新之助が割り込んできた。
こいつなら勝手に入ってくるだろうなと思っていたから声をかけなかったが、予想通りだな。
「佐川君だっけ? もちろん」
「やり! あ、あと一人誘いたい奴いるんだけどいいかな?」
「ええ。誰のこと?」
「イチ+イチだよ」
新之助の言い方に、梨音も八幡も首を傾げた。
遠回しな呼び方をしているが、要はニノのことだ。
新之助がニノを呼びに行こうとするが、既にニノはクラスから出ていこうとするところだった。
「おいニノ! ちょっと待てって!」
新之助に突然呼び止められ、ビクリと体を震わせながら止まる。
相変わらずイジメてるようにしか見えない状況だな。
「ニノ、お前もマクドナルド行くだろ?」
「い、いや、僕は大丈夫だよ」
「なーんでよ。お前、俺と修斗以外のクラスメイトと全然話してないだろ? 若元と八幡もいるからこの機会にさ!」
「え~……? いや、やっぱり遠慮しておくよ」
「よし! 参加な!」
「会話通じてないのかな!?」
結局、無理矢理ニノが新之助に連れてこられた。
「さ、佐川君。別に嫌がってるんだったら無理に誘わなくても……」
「大丈夫だよ、こいつ人見知りしてるだけだから。女子と絡んだ経験が少ないんだよきっと」
「失礼な、絡んだことぐらいありますー。なんなら絡んでしかいなかったですー」
「その発言は誤解を生むだろ。じゃあはい、梨音」
「え? ………………ああそういうこと」
俺は梨音に耳打ちしてニノの前に誘導した。
「若元梨音です。よろしくねニノ君」
「…………………………一一__はじめ__#です」
めっちゃ目泳いどる。
梨音にニノの目を真っ直ぐ見て挨拶するように言っただけなんだが、ニノの目が個人メドレー泳いどる。
「にのまえって凄い珍しい苗字だよねー」
「ニノ君はどこ生まれなの?」
「意外と背大きいんだねー。私と同じくらいかと思ってたのに。あ、その眼鏡もしかして駅前で買った?」
「電車通学? それとも歩き?」
「あ……うっ……ちょっ……」
梨音と八幡から質問攻めにあってドギマギしとる。
申し訳ないけど見てて面白い。
やっぱりただの強がりであったことが証明されたなナチュラルメンタルブレイカーよ。
「ん? あっ、修斗。いつものお客さんが来てるぞ」
「高坂っち~」
新之助に言われて扉の方を見ると、桜川が俺のことを呼んでいた。
教室に長く残りすぎたせいで6組の方もホームルームが終わったのか。
「本当に懲りないな」
「もうこんなん逢引きだろお前ら」
「そんなんじゃないのはお前も知ってるだろ。ちょっと先にマクドナルド行っててくれ。後から向かうから」
「はいはい。末永く爆発してろ」
「何だその言い方おい」
そう言って新之助達はゾロゾロと扉から先に出て行ったが、梨音だけがこの場に残っていた。
「梨音?」
「…………修斗は本当に迷惑だと思ってる?」
迷惑……って言うと桜川のことだよな。
「迷惑ってほどでもないけど、そりゃまぁサッカー出来ないのに勧誘されてたらな」
「でも普通はハッキリ断ったら誘うのもやめるよね。桜川さんが常識外れな人ってこと?」
「いや、桜川は普通だろ。まぁ入らないって言ってるのに誘ってくるのは少し異常な気もするが、中学時代の俺のファンだとも言ってたし、自分がマネージャーやってる部活に元日本代表を入れたくなる気持ちも分からなくは───」
「言い寄られて、修斗も満更でもないとか思ってるんじゃないの?」
…………なに?
「は? そんなこと思ってるわけないだろ」
「どうだか」
何だ梨音のやつ。
何で急に怒ってるんだよ。
高校最初の大事な友人関係構築の中で、迷惑だから二度と誘ってくるななんてハッキリ言えるわけないだろう。
だからこうして向こうが諦めてくれるように今までやんわり断ってきてるのに。
「修斗がハッキリ言えないなら、私が桜川さんに直接話すよ」
「ちょっ! いいって余計なことしなくて!」
「余計なことって何よ」
「っ! だいたい! 何でお前がそんなに気にするんだよ。別に俺とお前は付き合ってるわけでもないだろ。ただの幼馴染なんだから」
「……………………そうだね。ただの幼馴染だもんね。分かった、もういい」
「もういいってなんだよ。ちょっと待てよ梨音!」
梨音はそのまま足早に教室から出て行ってしまった。
教室内がシンと静まりかえっていた。
側から見たら完全に痴話喧嘩の一部だ。
「くそ。意味分かんねーよ」
「あっ…………と、ごめん高坂っち。何かタイミング悪かったみたいだね…………」
「え? ああ、いや。桜川は別に…………ちょっと、話はまた今度でもいいか?」
「う、うん。私の方は急ぎじゃないから全然!」
「悪いな」
俺も鞄を持って教室から出た。
梨音と喧嘩することは昔から何度もあった。
でも今回の喧嘩は少し毛色が違う気がする。
梨音が怒っていた理由を見つけて早いうちに関係を修復しないと、今後の生活に影響してしまいそうな気がする。
なぜそう思うのか。
それはきっと、俺が不意に言ってしまった『ただの幼馴染』という言葉の後に梨音が見せた顔を見てしまったからにほかならないだろう。
あんなに悲しそうな顔を見たのは初めてだった。
サッカーも現実も、リカバリーは早い方がいいというのは俺の口癖だ。
否定するのも面倒くさいので、あーはいはいそれが正解と話したら決定したみたいだ。
すこぶるどうでもいい。
放課後、ホームルームが終了したが桜川はやってこなかった。
おそらく俺達の方が終わるのが早かったのだろう。
「修斗」
梨音が呼びかけてきた。
帰る支度ができているようで、八幡も一緒にいた。
「今日はどうするの?」
「帰るよ。桜川も来てないみたいだし」
「それだったら冬華とマクドナルド寄ってくつもりなんだけど、修斗も来る?」
マクドナルド……!
あのジャンキーな食べ物が置いてあるハンバーガー屋のことか!
人生何事も経験、高校生になって学校帰りにマクドナルドに寄って買い食いする。最高だな。
「いいね行こうぜ。八幡は俺がいても大丈夫?」
「もちろんだよ。むしろ、私がリオに高坂君も誘ってみるように話したから」
「ほう」
八幡は梨音と席が近いから話すようになった、というのはこの前知った。
見た目的には女子版ニノという感じか。
地毛だと思われる茶髪のセミロングで眼鏡をかけていて落ち着いた雰囲気は少し大人びて見える。
だがやらしい話、胸はでかい。
俺と新之助の見立てでは、クラスの中で一番胸が大きいのは八幡だとつい先日結論が出た。
梨音も決して小さい方ではないが、八幡の隣に並ぶと霞むな。
「なになに? マック行くの? いいじゃん俺もついてっていい?」
ここぞとばかりに話を聞いていた新之助が割り込んできた。
こいつなら勝手に入ってくるだろうなと思っていたから声をかけなかったが、予想通りだな。
「佐川君だっけ? もちろん」
「やり! あ、あと一人誘いたい奴いるんだけどいいかな?」
「ええ。誰のこと?」
「イチ+イチだよ」
新之助の言い方に、梨音も八幡も首を傾げた。
遠回しな呼び方をしているが、要はニノのことだ。
新之助がニノを呼びに行こうとするが、既にニノはクラスから出ていこうとするところだった。
「おいニノ! ちょっと待てって!」
新之助に突然呼び止められ、ビクリと体を震わせながら止まる。
相変わらずイジメてるようにしか見えない状況だな。
「ニノ、お前もマクドナルド行くだろ?」
「い、いや、僕は大丈夫だよ」
「なーんでよ。お前、俺と修斗以外のクラスメイトと全然話してないだろ? 若元と八幡もいるからこの機会にさ!」
「え~……? いや、やっぱり遠慮しておくよ」
「よし! 参加な!」
「会話通じてないのかな!?」
結局、無理矢理ニノが新之助に連れてこられた。
「さ、佐川君。別に嫌がってるんだったら無理に誘わなくても……」
「大丈夫だよ、こいつ人見知りしてるだけだから。女子と絡んだ経験が少ないんだよきっと」
「失礼な、絡んだことぐらいありますー。なんなら絡んでしかいなかったですー」
「その発言は誤解を生むだろ。じゃあはい、梨音」
「え? ………………ああそういうこと」
俺は梨音に耳打ちしてニノの前に誘導した。
「若元梨音です。よろしくねニノ君」
「…………………………一一__はじめ__#です」
めっちゃ目泳いどる。
梨音にニノの目を真っ直ぐ見て挨拶するように言っただけなんだが、ニノの目が個人メドレー泳いどる。
「にのまえって凄い珍しい苗字だよねー」
「ニノ君はどこ生まれなの?」
「意外と背大きいんだねー。私と同じくらいかと思ってたのに。あ、その眼鏡もしかして駅前で買った?」
「電車通学? それとも歩き?」
「あ……うっ……ちょっ……」
梨音と八幡から質問攻めにあってドギマギしとる。
申し訳ないけど見てて面白い。
やっぱりただの強がりであったことが証明されたなナチュラルメンタルブレイカーよ。
「ん? あっ、修斗。いつものお客さんが来てるぞ」
「高坂っち~」
新之助に言われて扉の方を見ると、桜川が俺のことを呼んでいた。
教室に長く残りすぎたせいで6組の方もホームルームが終わったのか。
「本当に懲りないな」
「もうこんなん逢引きだろお前ら」
「そんなんじゃないのはお前も知ってるだろ。ちょっと先にマクドナルド行っててくれ。後から向かうから」
「はいはい。末永く爆発してろ」
「何だその言い方おい」
そう言って新之助達はゾロゾロと扉から先に出て行ったが、梨音だけがこの場に残っていた。
「梨音?」
「…………修斗は本当に迷惑だと思ってる?」
迷惑……って言うと桜川のことだよな。
「迷惑ってほどでもないけど、そりゃまぁサッカー出来ないのに勧誘されてたらな」
「でも普通はハッキリ断ったら誘うのもやめるよね。桜川さんが常識外れな人ってこと?」
「いや、桜川は普通だろ。まぁ入らないって言ってるのに誘ってくるのは少し異常な気もするが、中学時代の俺のファンだとも言ってたし、自分がマネージャーやってる部活に元日本代表を入れたくなる気持ちも分からなくは───」
「言い寄られて、修斗も満更でもないとか思ってるんじゃないの?」
…………なに?
「は? そんなこと思ってるわけないだろ」
「どうだか」
何だ梨音のやつ。
何で急に怒ってるんだよ。
高校最初の大事な友人関係構築の中で、迷惑だから二度と誘ってくるななんてハッキリ言えるわけないだろう。
だからこうして向こうが諦めてくれるように今までやんわり断ってきてるのに。
「修斗がハッキリ言えないなら、私が桜川さんに直接話すよ」
「ちょっ! いいって余計なことしなくて!」
「余計なことって何よ」
「っ! だいたい! 何でお前がそんなに気にするんだよ。別に俺とお前は付き合ってるわけでもないだろ。ただの幼馴染なんだから」
「……………………そうだね。ただの幼馴染だもんね。分かった、もういい」
「もういいってなんだよ。ちょっと待てよ梨音!」
梨音はそのまま足早に教室から出て行ってしまった。
教室内がシンと静まりかえっていた。
側から見たら完全に痴話喧嘩の一部だ。
「くそ。意味分かんねーよ」
「あっ…………と、ごめん高坂っち。何かタイミング悪かったみたいだね…………」
「え? ああ、いや。桜川は別に…………ちょっと、話はまた今度でもいいか?」
「う、うん。私の方は急ぎじゃないから全然!」
「悪いな」
俺も鞄を持って教室から出た。
梨音と喧嘩することは昔から何度もあった。
でも今回の喧嘩は少し毛色が違う気がする。
梨音が怒っていた理由を見つけて早いうちに関係を修復しないと、今後の生活に影響してしまいそうな気がする。
なぜそう思うのか。
それはきっと、俺が不意に言ってしまった『ただの幼馴染』という言葉の後に梨音が見せた顔を見てしまったからにほかならないだろう。
あんなに悲しそうな顔を見たのは初めてだった。
サッカーも現実も、リカバリーは早い方がいいというのは俺の口癖だ。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説



隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。


可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~
くまたに
青春
冷姫と呼ばれる美少女と友達になった。
初めての異性の友達と、新しいことに沢山挑戦してみることに。
そんな中彼女が見せる幸せそうに笑う表情を知っている男子は、恐らくモブ一人。
冷姫とモブによる砂糖のように甘い日々は誰にもバレることなく隠し通すことができるのか!
カクヨム・小説家になろうでも記載しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる