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部活勧誘編
部活紹介②
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「よく知ってるな」
「そりゃ知ってるよ! 私達の世代だったら女子サッカーやってる人達でも東京Vの伝説は有名だし、高坂修斗って言ったらそこのエースだもん! 誰でも知ってるよ!」
そんな有名になってると思わなかった。
あの頃はサッカーに夢中で周りのことはほとんど見えてなかったからな。
「え? 修斗そんな有名なん?」
「みたいだな」
「みたいだなって……他人事かよ」
「中学時代の全国ユース選手権、高円宮杯。その両方を二年連続二連覇した黄金期到来の東京V。その中心人物でエースだったのが高坂修斗だよ!」
「本人の目の前でベタ褒めすんのやめてくれよ、なんか死にたくなる」
「任せろ俺が殺してやる」
「お前にだけは……殺されたくねぇなぁ……!」
容赦なく首を締めてこようとする新之助の両手首を掴み、全力で抵抗した。
「こんなところで会えるなんて思わなかった……! 東京Vにも提携してる全寮制の高校あるよね? 何で? 何でそっち行かなかったの?」
あー……桜川は俺が怪我してサッカーを辞めたことまでは知らないのか。
あくまでこれは俺の持論だが、怪我をする奴は結局のところ2流なんだ。
どんなに優れたプレーができても怪我ばかりする奴は決して1流とは呼ばれない。
だからサッカーを辞めざるを得ないほどの怪我をした俺は2流以下だし、それを誰かにホイホイ言いふらしたくもない。
だから基本的には怪我をしてサッカーを辞めたことを知らない人には、怪我したことを言わないようにしている。
「俺は、ユースには上がれなかったんだよ」
「え!? な、何で!? 高坂っちって日本代表にも選ばれてたよね!? プロも確実視なんて言われてたし、そんな人がユース上がれないなんてことあるの!?」
「まぁ、色々事情があってね。それで俺は普通の私立に来たわけだ」
「そう……なんだ……」
桜川が驚いたように頷いた。
壇上ではサッカー部の部活紹介が終わり、次の運動部の紹介に回っていた。
「なぁ修斗」
「……とりあえずお前は俺の首を絞めようとすんのをやめろや」
「日本代表とはさぞかし身分が高ぇじゃねぇの。これはもうサッカー部に入るしかねぇなぁ」
「そうだよ! 高坂っちがいれば瑞都高校の全国出場も間違いないよ! 私と一緒にサッカー部入ろ!」
…………そりゃ俺だってサッカーをやれるならやりたいさ。
去年まで俺の全てはサッカーだけだったんだ。
怪我した後も辛いリハビリを続けて、今では軽く走れるところまで回復した。
それでも生まれた空白の期間の代償は大きい。
その他全てを捨てでも俺はプロになりたかった俺は大事な1年間を棒に振り、東京Vからは再起不能の選手としてユース昇格を取り消された。
そこで一度俺の心は折れてしまったんだ。
「…………考えておくよ。今はサッカーをやる気にならなくてね」
「煮えきらない答えだな」
「絶対! 高坂っちはサッカー部に入るべきだよ!」
桜川が力強く言った。
その評価の高さが、今の俺にとってはそのまま重荷になってのしかかる。
「私は諦めないよ。高坂っちがサッカー部に入ってくれるまで、何度でも誘うから」
そう言って桜川が笑った。
これは断り続けるのにも骨が折れそうだな。
悪い奴じゃないだけに邪険に扱いたくもないし。
「ねぇねぇ桜川、俺は俺は?」
「佐川っちはサッカーやってた人?」
「いや、こいつ元野球部」
「バラすなよ! 練習のインターバル中にやってたりしてたからな一応!」
「素人じゃねぇか」
「素人さんでも歓迎だよきっと。私と一緒に頑張ろ!」
「桜川……!」
本当にサッカー部に入りそうだなコイツ。
その場の流れに身を任せてたら失敗するぞ。
その後部活紹介は終了し、俺達は教室へと戻った後ホームルームを行い解散となった。
今日から仮入部が可能となったようで、仲良くなったクラスメイト達がどこどこの部活見に行こう、など話しながら教室を出て行った。
「修斗、どこか見たい部活はあった?」
荷物を整えていると、梨音が近くに来ていた。
「……特に無いかな。梨音はあったか?」
「うーん……部活紹介でやってるところはなかったんだけど……」
「それ以外のやつってことか?」
「…………やっぱ大丈夫」
「何だそれ。気になる奴があるなら見に行こうぜ、俺もついて行くよ」
「ホント大丈夫だから、気にしないで」
遠慮なんてする必要ないんだけどな。
梨音は運動系よりも文化系だから文化部のどれかだとは思うが。
「梨音がそう言うんなら構わないけど」
「じゃあ帰ろっか」
「おう」
教室から出ると、すぐに見覚えのある人物が立っていた。
確実に俺に用があるんだなと理解した。
「あ、高坂っち。待ってたよ」
「…………桜川」
スポーティ少女こと桜川美月だ。
さっきの今別れたばかりからのこれだ。
行動的すぎるだろ。
「修斗、知り合い?」
「さっきちょっとな」
「高坂っち、さっそくだけど少し付き合ってもらっていい? さっきの話の続きなんだけどね。有言実行が私のモットーなんだ」
「あーっと…………」
チラリと梨音を見た。
梨音と目が合い、俺の言わんとしたことをアイコンタクトですぐに悟ったのか、梨音は一度頷いた。
「それじゃあ私は先に帰ってるね」
「悪いな」
そう言って梨音は先に歩いて帰ってしまった。
悪いことをした気分だ。
帰りに何か買って帰ってやるか。
「あっと……クラスのお友達? ごめんね邪魔したみたいで……」
「気にするな。それで用っていうのは……まぁだいたい分かるけどさ」
「あ、やっぱり? それじゃあ余計なことは省いて、さっそく運動場にレッツゴー!」
「はは」
俺は元気一杯の桜川の後に続くようにして運動場へと向かっていった。
「そりゃ知ってるよ! 私達の世代だったら女子サッカーやってる人達でも東京Vの伝説は有名だし、高坂修斗って言ったらそこのエースだもん! 誰でも知ってるよ!」
そんな有名になってると思わなかった。
あの頃はサッカーに夢中で周りのことはほとんど見えてなかったからな。
「え? 修斗そんな有名なん?」
「みたいだな」
「みたいだなって……他人事かよ」
「中学時代の全国ユース選手権、高円宮杯。その両方を二年連続二連覇した黄金期到来の東京V。その中心人物でエースだったのが高坂修斗だよ!」
「本人の目の前でベタ褒めすんのやめてくれよ、なんか死にたくなる」
「任せろ俺が殺してやる」
「お前にだけは……殺されたくねぇなぁ……!」
容赦なく首を締めてこようとする新之助の両手首を掴み、全力で抵抗した。
「こんなところで会えるなんて思わなかった……! 東京Vにも提携してる全寮制の高校あるよね? 何で? 何でそっち行かなかったの?」
あー……桜川は俺が怪我してサッカーを辞めたことまでは知らないのか。
あくまでこれは俺の持論だが、怪我をする奴は結局のところ2流なんだ。
どんなに優れたプレーができても怪我ばかりする奴は決して1流とは呼ばれない。
だからサッカーを辞めざるを得ないほどの怪我をした俺は2流以下だし、それを誰かにホイホイ言いふらしたくもない。
だから基本的には怪我をしてサッカーを辞めたことを知らない人には、怪我したことを言わないようにしている。
「俺は、ユースには上がれなかったんだよ」
「え!? な、何で!? 高坂っちって日本代表にも選ばれてたよね!? プロも確実視なんて言われてたし、そんな人がユース上がれないなんてことあるの!?」
「まぁ、色々事情があってね。それで俺は普通の私立に来たわけだ」
「そう……なんだ……」
桜川が驚いたように頷いた。
壇上ではサッカー部の部活紹介が終わり、次の運動部の紹介に回っていた。
「なぁ修斗」
「……とりあえずお前は俺の首を絞めようとすんのをやめろや」
「日本代表とはさぞかし身分が高ぇじゃねぇの。これはもうサッカー部に入るしかねぇなぁ」
「そうだよ! 高坂っちがいれば瑞都高校の全国出場も間違いないよ! 私と一緒にサッカー部入ろ!」
…………そりゃ俺だってサッカーをやれるならやりたいさ。
去年まで俺の全てはサッカーだけだったんだ。
怪我した後も辛いリハビリを続けて、今では軽く走れるところまで回復した。
それでも生まれた空白の期間の代償は大きい。
その他全てを捨てでも俺はプロになりたかった俺は大事な1年間を棒に振り、東京Vからは再起不能の選手としてユース昇格を取り消された。
そこで一度俺の心は折れてしまったんだ。
「…………考えておくよ。今はサッカーをやる気にならなくてね」
「煮えきらない答えだな」
「絶対! 高坂っちはサッカー部に入るべきだよ!」
桜川が力強く言った。
その評価の高さが、今の俺にとってはそのまま重荷になってのしかかる。
「私は諦めないよ。高坂っちがサッカー部に入ってくれるまで、何度でも誘うから」
そう言って桜川が笑った。
これは断り続けるのにも骨が折れそうだな。
悪い奴じゃないだけに邪険に扱いたくもないし。
「ねぇねぇ桜川、俺は俺は?」
「佐川っちはサッカーやってた人?」
「いや、こいつ元野球部」
「バラすなよ! 練習のインターバル中にやってたりしてたからな一応!」
「素人じゃねぇか」
「素人さんでも歓迎だよきっと。私と一緒に頑張ろ!」
「桜川……!」
本当にサッカー部に入りそうだなコイツ。
その場の流れに身を任せてたら失敗するぞ。
その後部活紹介は終了し、俺達は教室へと戻った後ホームルームを行い解散となった。
今日から仮入部が可能となったようで、仲良くなったクラスメイト達がどこどこの部活見に行こう、など話しながら教室を出て行った。
「修斗、どこか見たい部活はあった?」
荷物を整えていると、梨音が近くに来ていた。
「……特に無いかな。梨音はあったか?」
「うーん……部活紹介でやってるところはなかったんだけど……」
「それ以外のやつってことか?」
「…………やっぱ大丈夫」
「何だそれ。気になる奴があるなら見に行こうぜ、俺もついて行くよ」
「ホント大丈夫だから、気にしないで」
遠慮なんてする必要ないんだけどな。
梨音は運動系よりも文化系だから文化部のどれかだとは思うが。
「梨音がそう言うんなら構わないけど」
「じゃあ帰ろっか」
「おう」
教室から出ると、すぐに見覚えのある人物が立っていた。
確実に俺に用があるんだなと理解した。
「あ、高坂っち。待ってたよ」
「…………桜川」
スポーティ少女こと桜川美月だ。
さっきの今別れたばかりからのこれだ。
行動的すぎるだろ。
「修斗、知り合い?」
「さっきちょっとな」
「高坂っち、さっそくだけど少し付き合ってもらっていい? さっきの話の続きなんだけどね。有言実行が私のモットーなんだ」
「あーっと…………」
チラリと梨音を見た。
梨音と目が合い、俺の言わんとしたことをアイコンタクトですぐに悟ったのか、梨音は一度頷いた。
「それじゃあ私は先に帰ってるね」
「悪いな」
そう言って梨音は先に歩いて帰ってしまった。
悪いことをした気分だ。
帰りに何か買って帰ってやるか。
「あっと……クラスのお友達? ごめんね邪魔したみたいで……」
「気にするな。それで用っていうのは……まぁだいたい分かるけどさ」
「あ、やっぱり? それじゃあ余計なことは省いて、さっそく運動場にレッツゴー!」
「はは」
俺は元気一杯の桜川の後に続くようにして運動場へと向かっていった。
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