怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ

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部活勧誘編

部活紹介①

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 次の日の午後、俺達1年生は体育館に集められ、部活紹介の時間を設けられた。
 それぞれ参加したい部活が各5分間ずつ時間を与えられ、どのような活動を行なっているのか紹介していく時間だ。

 吹奏楽……軽音楽……ダンス部。
 文化系の中でも人気の部活にはやはり部員が集中していた。
 中には将棋部や料理部といったものもあるみたいだが、今回の部活紹介には参加していなかった。
 部員数が少ないのか、あるいは積極的に部員を集めようとはしていないのだろう。

 文化部の後はスポーツ。
 やはりこちらが部活のメインと言ってもいいほどに紹介する部活が多かった。
 バドミントン……バスケ……テニス……陸上。
 どの学校にもあるであろう部活にはやはり部員も多い。

「次は野球部か」

 新之助が後ろから声を掛けてきた。

「食い付きがいいな。新之助は野球やってたのか?」

「何を隠そう、俺は小学校の頃から野球をやってて中学ではシニアでやってたんだぜ」

「クラブチームってことか? 何で高校ではやらないんだよ」

 新之助の身なりを見ても、高校で野球部に入ろうという風には見えない。
 特に昨日の高校デビューを見た後じゃあな。

「だってよ、野球部ってダサいじゃん」

「……は?」

「他の部活はバッチリオシャレ決め込んでのによ、何で野球部は全員丸坊主なんだよ」

「絶対に甲子園行ってやろうっていう気概とかじゃないのか?」

「別に髪があろうがなかろうが関係ないだろ。坊主の奴でもヘタな奴はヘタだよ」

「お前怒られろ」

 技術はともかく精神的に新之助が野球向いてないってことがよく分かった。

「だいたい坊主にしたらモテないじゃないか」

「中学時代に彼女は?」

「…………いませんが」

「坊主関係ねーじゃん」

「うるせぇ」

 野球部が部員数や活動内容、今までの実績を軽く話したのち、一人の投手が3球投げて部活紹介は終わった。
 どのくらい凄いかは分からないが、ピッチャーの球は速そうだった。

「今の何キロぐらいなんだ?」

「135ぐらいじゃないか。そこそこ早いと思うぜ。でもあれぐらいのストレートは結構打ちやすかったりするんだよな」

「昨年県立16位って言ってたよな。中堅って感じか」

「ここって意外とスポーツ関係の部活強いよな。確かサッカー部も過去に全国出てるらしいし」

 新之助の言う通り、ここのサッカー部も強豪と呼ばれるほどには強いらしい。
 全国に出たというのも10年以上前の話らしいが、今でも県予選決勝トーナメントまでは進出しているみたいだ。

「お、噂をすればなんとやらだな。次はサッカー部みたいだぞ」

 野球部と入れ替わりでサッカー部が壇上に立った。
 かなりの人数がいる。
 今の2、3年生だけで50人は超えているだろう。

『高い所から失礼します。サッカー部キャプテンの前橋まえばしひじりです』

 キャプテンと自己紹介した人がサッカー部について説明していった。
 概ね、俺が前情報で知っていた内容と同じだった。
 説明が終えた後、5人ほど前に出てきてリフティングを行なった。

「…………あの人、上手いな」

 5人の中の一人が安定させたリフティングを見せ、リフティングしながらボールを跨いだり首の上に乗せたりといった小技を見せていた。
 ボールタッチの柔らかさから言っても、サッカー部のエース的存在であることが伺える。

「修斗は何やってたんだよ?」

「ん? 新之助が前に言った通り、サッカーだよ」

「俺そんなこと言ったか?」

 言ったわ。
 俺の名前聞いてサッカーやってそうとか言ってたわ。

「じゃあサッカー部入るのかよ」

「それは…………」

「ねぇねぇ、サッカー部入るってホント?」

 突然、隣にいた女子に話しかけられた。
 クラスごとに1列になっているため、この子は6組の生徒だろう。
 ショートカットの髪型に八重歯がチラリと覗かせていた。
 肌の色も褐色に近いことからいかにも体育会系のように見える。

「隣で聞こえたものだからつい声かけちゃって。ごめんね」

「それは構わないけど」

「6組の子だよね? サッカー興味あるの?」

 新之助が聞いた。

「興味あるっていうか、中学まで女子サッカーやってて、高校ではサッカー部のマネージャーやろうと思ってるんだ。だからサッカーやってたって聞いて思わず声かけちゃった」

 彼女はペロリと舌を出してえへへと笑った。

「いいじゃんサッカーやってたなら一緒に入れよ修斗。あ、俺佐川。ちな俺もサッカー部検討中」

 おいこら。
 適当な事言ってんじゃねぇよ元野球部。

「私、桜川さくらがわ美月みずき。佐川っちもサッカー部入る?」

「うんうん、佐川っちもサッカー得意」

 お前その生き方後悔するぞ。

「で、修斗っちは?」

「誰が修斗っちだ。俺は高坂修斗、よろしく」

「…………高坂…………修斗…………?」

 ……なんだその死んだはずの人が実は生きてたかのような反応。

「も、もしかして……東京ヴァリアブルにいた……?」

 あー…………ジュニアユースに詳しい人か……。
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