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部活勧誘編
実質同棲②
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「あ、買い物付いてきてくれんの?」
「明日から学校なんだから、必要なものあるんでしょ?」
「まぁそうなんだけどな。いや、俺の買い出しに付き合わせるのも悪いと思って」
「別に大したことでもないし、お父さんからも修斗の手伝いをするよう言われてるから」
あんまり迷惑はかけたくはないんだけどな。
とはいえ買い出しといっても大きな買い物をする予定はない。
細かな日用品ぐらいだ。
「じゃあ頼むわ」
「ん」
俺は梨音に荷解きを手伝ってもらいながら、家での簡単なルールを教えてもらった。
ルールといっても大げさなものではない。
要は定食料理屋として朝早くから営業している場合もあるため、その時の朝ご飯は自分で作ったりだとか、もしもお店が忙しくなったら手伝いをするなどのお店関係のことだ。
居候させてもらっている身としては当たり前のことだな。
「こんなもんか」
「じゃあちょっと着替えてくるから。下で待ってて」
「オーケー」
俺は一足先に下へ降りた。
この時間ではもうお店は開いている。
なので梨音が言っている下とは裏口のことだろう。
この家にはお店としての入り口のほかに、普通の家としての出入り口がある。
別に出入りするのはどちらからでも問題はないわけだが、お客さんがいる中で堂々と表から出ていくのも変な話だ。
裏口のところで携帯をいじりながら待つこと10分ほど、梨音が降りてきた。
着替えたといっても下をはき替えて上着を羽織ったぐらいのものだ。
「お待たせ」
「相変わらずラフな格好だな」
「買い出しくらいでおしゃれするわけないじゃん」
「まるで普段はしてるかのような言い方だな」
「してますけど」
「見たことないんですけど」
「修斗の前でおしゃれする必要がないからなんですけど」
なるほど説得力あるな。
そう言われたら確かに俺も俺もって思うわ。
俺たちは駅近くのデパートへと向かった。
日用品や服などが買えるため、ここに来れば大体は揃えることができる。
「明日っから高校生か。梨音は緊張したりしてるか?」
歩きながら俺が話しかけた。
「んー…………そんなにかな。高校自体は家からもあまり離れてないし、中学の時からの知り合いも何人かいるしね」
「いいな。俺は仲良かった奴は誰も瑞都高校には行かないからなぁ。そりゃ知ってるやつはいるけどよ、それこそ仲いい奴なんて梨音ぐらいのもんだ」
「ふーん…………」
「なんで顔背けんだよ悲しくなんだろ。クラブの奴らもそのままユースにあがって全寮制の学校に行った奴らがほとんどだしよ、俺はサッカーしかやってこなかったツケが回ってきた感じだな」
あははと俺が冗談交じりに笑った。
俺は中学3年までクラブチームでサッカーを続けていた。
俺の世代はクラブチームの歴史を見ても才能のある奴らが揃っていると言われており、U-15の大会のタイトルをほとんど総ナメにしていた。
俺自身もトップ下のポジションで司令塔として活躍し、日本代表にも呼ばれていた。
そのことから地方や海外にも多く遠征していたため、両親は今回のように親元を離れることに大して抵抗を感じなかったのだろう。
だけど、3連覇を狙った中学3年の夏に行われたUー15のクラブユース大会の予選において、俺は相手選手との接触プレーによって右膝の靭帯をいくつか損傷した。
その後遺症で医者からは普通に歩くことはできても、走ったりボールを強く蹴ることは難しいかもしれないと言われた。
走ることもできず、シュートもクリアもセンタリングもできない選手なんか必要か?
俺のサッカー選手としての人生はその瞬間終わったんだ。
「……高校で何か面白いものが見つかるといいね」
「そうだな。何もサッカーだけが人生じゃないんだ。運動しなくても楽しめる部活が何かあるはずさ」
これまで見えていた景色から視点を少し変えて、広がった世界を見ようぜ。
明日から始まる高校生活に希望を抱き、俺はデパートへと向かった。
「明日から学校なんだから、必要なものあるんでしょ?」
「まぁそうなんだけどな。いや、俺の買い出しに付き合わせるのも悪いと思って」
「別に大したことでもないし、お父さんからも修斗の手伝いをするよう言われてるから」
あんまり迷惑はかけたくはないんだけどな。
とはいえ買い出しといっても大きな買い物をする予定はない。
細かな日用品ぐらいだ。
「じゃあ頼むわ」
「ん」
俺は梨音に荷解きを手伝ってもらいながら、家での簡単なルールを教えてもらった。
ルールといっても大げさなものではない。
要は定食料理屋として朝早くから営業している場合もあるため、その時の朝ご飯は自分で作ったりだとか、もしもお店が忙しくなったら手伝いをするなどのお店関係のことだ。
居候させてもらっている身としては当たり前のことだな。
「こんなもんか」
「じゃあちょっと着替えてくるから。下で待ってて」
「オーケー」
俺は一足先に下へ降りた。
この時間ではもうお店は開いている。
なので梨音が言っている下とは裏口のことだろう。
この家にはお店としての入り口のほかに、普通の家としての出入り口がある。
別に出入りするのはどちらからでも問題はないわけだが、お客さんがいる中で堂々と表から出ていくのも変な話だ。
裏口のところで携帯をいじりながら待つこと10分ほど、梨音が降りてきた。
着替えたといっても下をはき替えて上着を羽織ったぐらいのものだ。
「お待たせ」
「相変わらずラフな格好だな」
「買い出しくらいでおしゃれするわけないじゃん」
「まるで普段はしてるかのような言い方だな」
「してますけど」
「見たことないんですけど」
「修斗の前でおしゃれする必要がないからなんですけど」
なるほど説得力あるな。
そう言われたら確かに俺も俺もって思うわ。
俺たちは駅近くのデパートへと向かった。
日用品や服などが買えるため、ここに来れば大体は揃えることができる。
「明日っから高校生か。梨音は緊張したりしてるか?」
歩きながら俺が話しかけた。
「んー…………そんなにかな。高校自体は家からもあまり離れてないし、中学の時からの知り合いも何人かいるしね」
「いいな。俺は仲良かった奴は誰も瑞都高校には行かないからなぁ。そりゃ知ってるやつはいるけどよ、それこそ仲いい奴なんて梨音ぐらいのもんだ」
「ふーん…………」
「なんで顔背けんだよ悲しくなんだろ。クラブの奴らもそのままユースにあがって全寮制の学校に行った奴らがほとんどだしよ、俺はサッカーしかやってこなかったツケが回ってきた感じだな」
あははと俺が冗談交じりに笑った。
俺は中学3年までクラブチームでサッカーを続けていた。
俺の世代はクラブチームの歴史を見ても才能のある奴らが揃っていると言われており、U-15の大会のタイトルをほとんど総ナメにしていた。
俺自身もトップ下のポジションで司令塔として活躍し、日本代表にも呼ばれていた。
そのことから地方や海外にも多く遠征していたため、両親は今回のように親元を離れることに大して抵抗を感じなかったのだろう。
だけど、3連覇を狙った中学3年の夏に行われたUー15のクラブユース大会の予選において、俺は相手選手との接触プレーによって右膝の靭帯をいくつか損傷した。
その後遺症で医者からは普通に歩くことはできても、走ったりボールを強く蹴ることは難しいかもしれないと言われた。
走ることもできず、シュートもクリアもセンタリングもできない選手なんか必要か?
俺のサッカー選手としての人生はその瞬間終わったんだ。
「……高校で何か面白いものが見つかるといいね」
「そうだな。何もサッカーだけが人生じゃないんだ。運動しなくても楽しめる部活が何かあるはずさ」
これまで見えていた景色から視点を少し変えて、広がった世界を見ようぜ。
明日から始まる高校生活に希望を抱き、俺はデパートへと向かった。
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