2 / 135
部活勧誘編
実質同棲②
しおりを挟む
「あ、買い物付いてきてくれんの?」
「明日から学校なんだから、必要なものあるんでしょ?」
「まぁそうなんだけどな。いや、俺の買い出しに付き合わせるのも悪いと思って」
「別に大したことでもないし、お父さんからも修斗の手伝いをするよう言われてるから」
あんまり迷惑はかけたくはないんだけどな。
とはいえ買い出しといっても大きな買い物をする予定はない。
細かな日用品ぐらいだ。
「じゃあ頼むわ」
「ん」
俺は梨音に荷解きを手伝ってもらいながら、家での簡単なルールを教えてもらった。
ルールといっても大げさなものではない。
要は定食料理屋として朝早くから営業している場合もあるため、その時の朝ご飯は自分で作ったりだとか、もしもお店が忙しくなったら手伝いをするなどのお店関係のことだ。
居候させてもらっている身としては当たり前のことだな。
「こんなもんか」
「じゃあちょっと着替えてくるから。下で待ってて」
「オーケー」
俺は一足先に下へ降りた。
この時間ではもうお店は開いている。
なので梨音が言っている下とは裏口のことだろう。
この家にはお店としての入り口のほかに、普通の家としての出入り口がある。
別に出入りするのはどちらからでも問題はないわけだが、お客さんがいる中で堂々と表から出ていくのも変な話だ。
裏口のところで携帯をいじりながら待つこと10分ほど、梨音が降りてきた。
着替えたといっても下をはき替えて上着を羽織ったぐらいのものだ。
「お待たせ」
「相変わらずラフな格好だな」
「買い出しくらいでおしゃれするわけないじゃん」
「まるで普段はしてるかのような言い方だな」
「してますけど」
「見たことないんですけど」
「修斗の前でおしゃれする必要がないからなんですけど」
なるほど説得力あるな。
そう言われたら確かに俺も俺もって思うわ。
俺たちは駅近くのデパートへと向かった。
日用品や服などが買えるため、ここに来れば大体は揃えることができる。
「明日っから高校生か。梨音は緊張したりしてるか?」
歩きながら俺が話しかけた。
「んー…………そんなにかな。高校自体は家からもあまり離れてないし、中学の時からの知り合いも何人かいるしね」
「いいな。俺は仲良かった奴は誰も瑞都高校には行かないからなぁ。そりゃ知ってるやつはいるけどよ、それこそ仲いい奴なんて梨音ぐらいのもんだ」
「ふーん…………」
「なんで顔背けんだよ悲しくなんだろ。クラブの奴らもそのままユースにあがって全寮制の学校に行った奴らがほとんどだしよ、俺はサッカーしかやってこなかったツケが回ってきた感じだな」
あははと俺が冗談交じりに笑った。
俺は中学3年までクラブチームでサッカーを続けていた。
俺の世代はクラブチームの歴史を見ても才能のある奴らが揃っていると言われており、U-15の大会のタイトルをほとんど総ナメにしていた。
俺自身もトップ下のポジションで司令塔として活躍し、日本代表にも呼ばれていた。
そのことから地方や海外にも多く遠征していたため、両親は今回のように親元を離れることに大して抵抗を感じなかったのだろう。
だけど、3連覇を狙った中学3年の夏に行われたUー15のクラブユース大会の予選において、俺は相手選手との接触プレーによって右膝の靭帯をいくつか損傷した。
その後遺症で医者からは普通に歩くことはできても、走ったりボールを強く蹴ることは難しいかもしれないと言われた。
走ることもできず、シュートもクリアもセンタリングもできない選手なんか必要か?
俺のサッカー選手としての人生はその瞬間終わったんだ。
「……高校で何か面白いものが見つかるといいね」
「そうだな。何もサッカーだけが人生じゃないんだ。運動しなくても楽しめる部活が何かあるはずさ」
これまで見えていた景色から視点を少し変えて、広がった世界を見ようぜ。
明日から始まる高校生活に希望を抱き、俺はデパートへと向かった。
「明日から学校なんだから、必要なものあるんでしょ?」
「まぁそうなんだけどな。いや、俺の買い出しに付き合わせるのも悪いと思って」
「別に大したことでもないし、お父さんからも修斗の手伝いをするよう言われてるから」
あんまり迷惑はかけたくはないんだけどな。
とはいえ買い出しといっても大きな買い物をする予定はない。
細かな日用品ぐらいだ。
「じゃあ頼むわ」
「ん」
俺は梨音に荷解きを手伝ってもらいながら、家での簡単なルールを教えてもらった。
ルールといっても大げさなものではない。
要は定食料理屋として朝早くから営業している場合もあるため、その時の朝ご飯は自分で作ったりだとか、もしもお店が忙しくなったら手伝いをするなどのお店関係のことだ。
居候させてもらっている身としては当たり前のことだな。
「こんなもんか」
「じゃあちょっと着替えてくるから。下で待ってて」
「オーケー」
俺は一足先に下へ降りた。
この時間ではもうお店は開いている。
なので梨音が言っている下とは裏口のことだろう。
この家にはお店としての入り口のほかに、普通の家としての出入り口がある。
別に出入りするのはどちらからでも問題はないわけだが、お客さんがいる中で堂々と表から出ていくのも変な話だ。
裏口のところで携帯をいじりながら待つこと10分ほど、梨音が降りてきた。
着替えたといっても下をはき替えて上着を羽織ったぐらいのものだ。
「お待たせ」
「相変わらずラフな格好だな」
「買い出しくらいでおしゃれするわけないじゃん」
「まるで普段はしてるかのような言い方だな」
「してますけど」
「見たことないんですけど」
「修斗の前でおしゃれする必要がないからなんですけど」
なるほど説得力あるな。
そう言われたら確かに俺も俺もって思うわ。
俺たちは駅近くのデパートへと向かった。
日用品や服などが買えるため、ここに来れば大体は揃えることができる。
「明日っから高校生か。梨音は緊張したりしてるか?」
歩きながら俺が話しかけた。
「んー…………そんなにかな。高校自体は家からもあまり離れてないし、中学の時からの知り合いも何人かいるしね」
「いいな。俺は仲良かった奴は誰も瑞都高校には行かないからなぁ。そりゃ知ってるやつはいるけどよ、それこそ仲いい奴なんて梨音ぐらいのもんだ」
「ふーん…………」
「なんで顔背けんだよ悲しくなんだろ。クラブの奴らもそのままユースにあがって全寮制の学校に行った奴らがほとんどだしよ、俺はサッカーしかやってこなかったツケが回ってきた感じだな」
あははと俺が冗談交じりに笑った。
俺は中学3年までクラブチームでサッカーを続けていた。
俺の世代はクラブチームの歴史を見ても才能のある奴らが揃っていると言われており、U-15の大会のタイトルをほとんど総ナメにしていた。
俺自身もトップ下のポジションで司令塔として活躍し、日本代表にも呼ばれていた。
そのことから地方や海外にも多く遠征していたため、両親は今回のように親元を離れることに大して抵抗を感じなかったのだろう。
だけど、3連覇を狙った中学3年の夏に行われたUー15のクラブユース大会の予選において、俺は相手選手との接触プレーによって右膝の靭帯をいくつか損傷した。
その後遺症で医者からは普通に歩くことはできても、走ったりボールを強く蹴ることは難しいかもしれないと言われた。
走ることもできず、シュートもクリアもセンタリングもできない選手なんか必要か?
俺のサッカー選手としての人生はその瞬間終わったんだ。
「……高校で何か面白いものが見つかるといいね」
「そうだな。何もサッカーだけが人生じゃないんだ。運動しなくても楽しめる部活が何かあるはずさ」
これまで見えていた景色から視点を少し変えて、広がった世界を見ようぜ。
明日から始まる高校生活に希望を抱き、俺はデパートへと向かった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
俺にはロシア人ハーフの許嫁がいるらしい。
夜兎ましろ
青春
高校入学から約半年が経ったある日。
俺たちのクラスに転入生がやってきたのだが、その転入生は俺――雪村翔(ゆきむら しょう)が幼い頃に結婚を誓い合ったロシア人ハーフの美少女だった……!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。
ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。
※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる