69 / 70
4章
②修了式
しおりを挟む
修了式は午前九時だそうだが、その紙には午前八時三十分~と書かれていた。それに集合場所が通常の修了式とは別の、立ち入り禁止区域の城郭二階層だった。前に下剋上戦で行った闘技場は一階層だったため全く未知の場所だ。
すべてが終わる。ボッチで始まりボッチで終わる。
周囲は修了式のお祝いムードでにぎわっていた。写真を撮る人、研修期間の思い出を友と語りある人、プレゼント交換し合う人・・・・・・とてもまぶしい。
私はそんな集団の中を、透明マントを羽織っているかの如く突き進む。いくつになってもこんなムードは息が詰まる。
城郭に近づくにつれて、だんだん人はまばらになり、私一人になった。
城郭一階層。あれだけにぎわっていた闘技場も人がいなければ、廃墟のような雰囲気ですこし恐ろしく感じる。さらにあの時の下克上戦でずいぶんぼろぼろになって、、未だ修復されきっていないため、その廃墟感は一層強い。
「さて、城郭二階層はどうやっていくのか」
一通り城郭一階層を見て回ったが、特にこれと言って上に登るようなものがない。場所を間違えたのかと思って再評価通知とやらをもう一度よく見る。
「確かに城郭二階層午前八時三十分~なん・・・・・・」
急にエネルギーが吸われる感覚に襲われる。意識が遠のく。これは危ない。早くブローチを・・・・・・
「ウィンド」
「!?」
頼みの綱のブローチは、深々とフードをかぶった男のウィンドによって弾き飛ばされた。ここに来てから、何度気を失えばいいのだろうか。抗うすべなくまた倒れた。
「お目覚めかな?タカヒロくん」
気が付くと私はバーベナの形をした鉄板に張り付けられていた。そして目の前にはここに来たばかりの時の演説で高らかに人類滅亡だとか謳っていたフードの男と杖、剣を持ったそれぞれ5人の兵士がいた。
「こんな面倒なことをしなくても、とっとと不合格者として追放でもさせてくれ」
「タカヒロ君、不合格とかはどうでもいいんだ。君はどうしてそうボッチを貫こうとする?」
「ボッチが好きだからに決まっているでしょうが」
「本当にそうか?」
「はい」
「なるほど。ではマユリとはどうなんだ?」
「マユリは確かにクラスメイトではありましたが、それ以上でもそれ以下でもありません。というかさっきからこの問答は何なんですか。不合格、即退学でいいでしょう」
すこしいらだってきた。早くこの苦しい場所から逃げ出したい、その一心で。
「不合格なのはもう動かざる結果だ。そんなことを話しても仕方ない。だがこれだけは話しておきたい。私は君を助けたかったのだ。下剋上戦で君の優秀さはよく見させてもらった。ボッチでなければこの白の軍でもいい地位を与えられた。だが君はボッチだった。私がマユリを差し向けてもなおボッチであった」
「差し向け?」
「ああ、そうだ、私がそうなるように仕組んだ。サキ先生にも協力してもらってな。彼女たちには相当な報奨金をあげる約束をしていたからな。君が初回の講義で追い出されてから、急にマユリというペアができて、トップクラスの指導官が直接指導してくれて、さらには女の子と同室だ。ずいぶん恵まれてきただろう。よもや偶然だったとは思うまい。君には結構カネがかかっているんだぞ」
「協力?」
「ああ、おかげで君は強くなった。しかしボッチのままだった。そしてボッチはわが軍にはいらん」
流れるように受け入れてきたが、私はずっと人為的な環境の中だったのだ。マユリもサキ先生も、「親切心」「お情け」「仕事」にすぎなかったのだ。一緒にいたい、そんな言葉も全てうそだったのだ。心のどこかでそうであってほしくないと願っていた。願うようになってしまっていた。こんなひねくれ野郎など所詮忌避すべき存在だ。なぜそんなありもしない幻想を抱いてしまったのだろうか。
いろんな何かが崩れ落ちた。しかし悲しくなるのかと思いきや一周まわってむしろすがすがしく感じた。
「ああ、そうですか。で早く退学でもなんでもしてください」
しばらくあたりがしんと静まり返った。フードの男は杖を高らかに掲げて一言叫んだ。
「・・・・・・わかった。では脅威となる前に死んでもらおうか」
すべてが終わる。ボッチで始まりボッチで終わる。
周囲は修了式のお祝いムードでにぎわっていた。写真を撮る人、研修期間の思い出を友と語りある人、プレゼント交換し合う人・・・・・・とてもまぶしい。
私はそんな集団の中を、透明マントを羽織っているかの如く突き進む。いくつになってもこんなムードは息が詰まる。
城郭に近づくにつれて、だんだん人はまばらになり、私一人になった。
城郭一階層。あれだけにぎわっていた闘技場も人がいなければ、廃墟のような雰囲気ですこし恐ろしく感じる。さらにあの時の下克上戦でずいぶんぼろぼろになって、、未だ修復されきっていないため、その廃墟感は一層強い。
「さて、城郭二階層はどうやっていくのか」
一通り城郭一階層を見て回ったが、特にこれと言って上に登るようなものがない。場所を間違えたのかと思って再評価通知とやらをもう一度よく見る。
「確かに城郭二階層午前八時三十分~なん・・・・・・」
急にエネルギーが吸われる感覚に襲われる。意識が遠のく。これは危ない。早くブローチを・・・・・・
「ウィンド」
「!?」
頼みの綱のブローチは、深々とフードをかぶった男のウィンドによって弾き飛ばされた。ここに来てから、何度気を失えばいいのだろうか。抗うすべなくまた倒れた。
「お目覚めかな?タカヒロくん」
気が付くと私はバーベナの形をした鉄板に張り付けられていた。そして目の前にはここに来たばかりの時の演説で高らかに人類滅亡だとか謳っていたフードの男と杖、剣を持ったそれぞれ5人の兵士がいた。
「こんな面倒なことをしなくても、とっとと不合格者として追放でもさせてくれ」
「タカヒロ君、不合格とかはどうでもいいんだ。君はどうしてそうボッチを貫こうとする?」
「ボッチが好きだからに決まっているでしょうが」
「本当にそうか?」
「はい」
「なるほど。ではマユリとはどうなんだ?」
「マユリは確かにクラスメイトではありましたが、それ以上でもそれ以下でもありません。というかさっきからこの問答は何なんですか。不合格、即退学でいいでしょう」
すこしいらだってきた。早くこの苦しい場所から逃げ出したい、その一心で。
「不合格なのはもう動かざる結果だ。そんなことを話しても仕方ない。だがこれだけは話しておきたい。私は君を助けたかったのだ。下剋上戦で君の優秀さはよく見させてもらった。ボッチでなければこの白の軍でもいい地位を与えられた。だが君はボッチだった。私がマユリを差し向けてもなおボッチであった」
「差し向け?」
「ああ、そうだ、私がそうなるように仕組んだ。サキ先生にも協力してもらってな。彼女たちには相当な報奨金をあげる約束をしていたからな。君が初回の講義で追い出されてから、急にマユリというペアができて、トップクラスの指導官が直接指導してくれて、さらには女の子と同室だ。ずいぶん恵まれてきただろう。よもや偶然だったとは思うまい。君には結構カネがかかっているんだぞ」
「協力?」
「ああ、おかげで君は強くなった。しかしボッチのままだった。そしてボッチはわが軍にはいらん」
流れるように受け入れてきたが、私はずっと人為的な環境の中だったのだ。マユリもサキ先生も、「親切心」「お情け」「仕事」にすぎなかったのだ。一緒にいたい、そんな言葉も全てうそだったのだ。心のどこかでそうであってほしくないと願っていた。願うようになってしまっていた。こんなひねくれ野郎など所詮忌避すべき存在だ。なぜそんなありもしない幻想を抱いてしまったのだろうか。
いろんな何かが崩れ落ちた。しかし悲しくなるのかと思いきや一周まわってむしろすがすがしく感じた。
「ああ、そうですか。で早く退学でもなんでもしてください」
しばらくあたりがしんと静まり返った。フードの男は杖を高らかに掲げて一言叫んだ。
「・・・・・・わかった。では脅威となる前に死んでもらおうか」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる