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4章
①修了式の朝
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ベッドから飛び起きるように目を覚ますともうすでに翌日だった。修了式当日だ。
マユリはそばでスースーと寝息を立てて幸せそうに寝ている。もうすっかり同じベッドで寝るのにも慣れてしまった。時折マユリの足が乗ってきても寝続けられるタフさ?も身に付いた。だがしかし
「いくらなんでもこう、腕にしがみ付かれると困る。僕は抱き枕か何かか?血行不良で僕の腕が壊死してしまうぞ。ほら、マユリ起きろ~」
「ん・・・・・・あと五分・・・・・・」
その五分が永久に経過しないのは自明の理である。
「それなら、僕は先に準備するから腕を話してくれ」
「あと五分・・・・・・」
その五分も永久に経過しない。のは最高に困る。
サキ先生がいればカツを入れてシャキッとマユリを起こしてくれるのだが、生憎サキ先生は卒業に関する事務手続きだとかで他の研修施設へ出張中だそうだ。修了式の日にも関わらずお忙しいことだ。
途方に暮れていると部屋の隅においてある怪しいツボから急にオレンジの球が飛び出した。そしてふよふよ漂うと、それはマユリの耳元へ飛んでいき、さらに輝きを増した。サウンドの魔法だ。一応サイレントをすぐ出せるようにもう片方の腕で杖を構えておく。
「おはよう、マユリ。朝から熱いね~、あ、愛しの彼が他の女を抱いてる」
なんなんやこの変なボイスは。と思った瞬間、
「ダメ~~~~っ」
「痛い痛い痛い」
急に腕を握りしめてくる。マユリもばっちり目を覚ました。こんなにすばらしい寝起きは初めて見た。マユリはあたりを見回す。
「なんだ、別に何ともないや。サキ先生もひどいよ。あー変な汗かいた」
「さあ今日は修了式なんやから、早く支度せんと。マユリも汗だかだかやし、はよシャワー浴びてきな」
「え!?ほんとだ。私汗臭いよね。気持ち悪いよね」
「何をいまさら。今更汗ぐらいで何も思わんよ」
「熟年夫婦みたいなこと言わないでよー」
「夫婦って・・・・・・」
「あっ、いや、それはね言葉の綾というかなんというか、なんとなく出た言葉」
「マユリの個性的発言にももう慣れたよ」
「わたしはもう慣れた女なのね。ひどいわ。私はまだまだピュアなままだよ」
「・・・・・・もしかしてからかってる?」
「うん!なんかサキ先生にこう言えって言われた」
「だと思った。さっきのは一瞬びっくりした。あまり口外せんようにねって、はよ支度せんと時間間に合わんよ。僕はすぐ終わるけど、マユリはそうはいかんやろ」
「うわっ!?ほんとだ。昨日楽しすぎて寝坊した!」
時計を見るとマユリは慌てて着替えをもってバスルームへかけていった。そして一瞬振り返って、
「また行こうね。タカ君」
「早く支度する!」
「あっそうだった!」
自分もさっと身支度し、いつものように部屋を先に出た。同じ部屋から朝に若い男女が一緒に出てくるところなど見られたら誤解を生む。そんな生まれた誤解を消し去る力も誤解に耐えられるメンタルもボッチは持ち合わせていない。
部屋の前の扉には一通の紙が挟まっていた。再評価通知と書かれていた。
最初の文言ですべて悟った。
マユリはそばでスースーと寝息を立てて幸せそうに寝ている。もうすっかり同じベッドで寝るのにも慣れてしまった。時折マユリの足が乗ってきても寝続けられるタフさ?も身に付いた。だがしかし
「いくらなんでもこう、腕にしがみ付かれると困る。僕は抱き枕か何かか?血行不良で僕の腕が壊死してしまうぞ。ほら、マユリ起きろ~」
「ん・・・・・・あと五分・・・・・・」
その五分が永久に経過しないのは自明の理である。
「それなら、僕は先に準備するから腕を話してくれ」
「あと五分・・・・・・」
その五分も永久に経過しない。のは最高に困る。
サキ先生がいればカツを入れてシャキッとマユリを起こしてくれるのだが、生憎サキ先生は卒業に関する事務手続きだとかで他の研修施設へ出張中だそうだ。修了式の日にも関わらずお忙しいことだ。
途方に暮れていると部屋の隅においてある怪しいツボから急にオレンジの球が飛び出した。そしてふよふよ漂うと、それはマユリの耳元へ飛んでいき、さらに輝きを増した。サウンドの魔法だ。一応サイレントをすぐ出せるようにもう片方の腕で杖を構えておく。
「おはよう、マユリ。朝から熱いね~、あ、愛しの彼が他の女を抱いてる」
なんなんやこの変なボイスは。と思った瞬間、
「ダメ~~~~っ」
「痛い痛い痛い」
急に腕を握りしめてくる。マユリもばっちり目を覚ました。こんなにすばらしい寝起きは初めて見た。マユリはあたりを見回す。
「なんだ、別に何ともないや。サキ先生もひどいよ。あー変な汗かいた」
「さあ今日は修了式なんやから、早く支度せんと。マユリも汗だかだかやし、はよシャワー浴びてきな」
「え!?ほんとだ。私汗臭いよね。気持ち悪いよね」
「何をいまさら。今更汗ぐらいで何も思わんよ」
「熟年夫婦みたいなこと言わないでよー」
「夫婦って・・・・・・」
「あっ、いや、それはね言葉の綾というかなんというか、なんとなく出た言葉」
「マユリの個性的発言にももう慣れたよ」
「わたしはもう慣れた女なのね。ひどいわ。私はまだまだピュアなままだよ」
「・・・・・・もしかしてからかってる?」
「うん!なんかサキ先生にこう言えって言われた」
「だと思った。さっきのは一瞬びっくりした。あまり口外せんようにねって、はよ支度せんと時間間に合わんよ。僕はすぐ終わるけど、マユリはそうはいかんやろ」
「うわっ!?ほんとだ。昨日楽しすぎて寝坊した!」
時計を見るとマユリは慌てて着替えをもってバスルームへかけていった。そして一瞬振り返って、
「また行こうね。タカ君」
「早く支度する!」
「あっそうだった!」
自分もさっと身支度し、いつものように部屋を先に出た。同じ部屋から朝に若い男女が一緒に出てくるところなど見られたら誤解を生む。そんな生まれた誤解を消し去る力も誤解に耐えられるメンタルもボッチは持ち合わせていない。
部屋の前の扉には一通の紙が挟まっていた。再評価通知と書かれていた。
最初の文言ですべて悟った。
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