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3章
②下剋上(2)
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闘技場に入ると個別の狭い待合室に案内された。中にはモニターがあった。まるでネットカフェの個室のようだ。運動会のようにグラウンドに一斉に並んで整列、そして校長の挨拶というお決まりの流れかと思ったが肩透かしを食らった。
「は~い皆さんこんにちは!私が下剋上戦の実況を務めますエリで~す。緊張した選手の皆さん、今日は一生懸命己の力をぶちかまして最高のクリスマスイブにしましょう」
モニターにはどっかで見かけたがもう忘れた人が映し出された。お望み通り最高のイブにしてやる。
「さてさて、校長の挨拶なんですが今回はご多忙とのことで、言伝を預かっておりますので披露させていただきま~す。え~と,サウンド!koucyou today gekokuzyou!」
オレンジの魔法球が飛び出し、音声が流れる。
「本日はこの下克上戦を開催できたことを非常に快く思う。さて、今回の催しの目的だが、『協力のすばらしさ』だ。成績上位層の皆の力をよく見てそれを感じてほしい。ルールは選手のワンヒット十ポイントの魔法を当ててライフを削り切るか、闘技場内の白い枠線外に飛ばすかで勝敗は決まる。ライフは皆が獲得した点数そのものだ。最後に残った者には百点加点。今後の白の軍内での地位と名誉を約束しよう」
歓声が上がる。この試合に勝てば人類が滅んだ世界を支配する組織のトップに立てるのだ。当然と言っちゃ当然だ。
「私はこれで失礼するが、皆の健闘を祈っている。修了式を楽しみにしているからな。では」
そういうとオレンジ色の球はフッと消えた。
この声はあの時広場で演説していた男のものだ。もっと総司令官とか元帥、総大将のような凛々しい役職の者かと思っていたが校長とは。
「さ~て、では選手の登場で~す!ウィンド!」
急に前にあったモニターが門のように開いたかと思うと、背中から吹っ飛ばされた。
数メートルの廊下を通り抜けて、円形状のところから各選手がロケットのように飛び出してきた。
サキ先生の時といい、今日はやけに吹っ飛ばされるな。
勢いよく僕と同じように飛ばされて闘技場に出てきたのは五人だった。合計十人のはずなのだがどうしたのだろうか。
「は~い、みなさん不思議に思われていますよね。実はこれより前にソード班でも同じことをやったのですが、上位組があまりにも圧倒しすぎてつまらないとの声が上がりました。ですのでマジック班は下位組で一人勝ち抜けた者だけが次の上位層への試合に挑戦できることになりました」
なるほど、下位組には予選があって、上位組はいきなり優勝決定戦っていうわけやな。ということは、周りは下位組四人ってわけか。
見渡してみると全員が自分の方を見ている。・・・・・・いやな予感がした。
「ライフは闘技場の巨大スクリーンをご覧ください 」
やはり、やはりだ。自分がこのワースト五人組のなかで最下位だ。でかでかと掲示されたスクリーンには自分だけ五十点と際立って少なかった。そのほかは全員百点~百二十点だ。
よし名前が覚えられないから番号にしよう。ワースト一番は僕だからそれより前は二番、三番、四番、五番っと。
このような試合では敵が少ない方が圧倒的に楽に進められる。そして一番倒しやすいのは自分だ。それに彼ら彼女らは合格者確実だが、自分はそもそも失格者が濃厚だ。自分を倒しても今後一緒に白の軍で顔を合わせることもないから何の罪悪感もないだろうし、今後の生活にも支障をきたさない。
つまり心理的な面でも計算的な面でも僕は最重要ターゲットだ。
そう、ボッチはいつでも攻撃の的なのだ。
過去が頭をよぎる。
「さ~て、準備はできましたか?では、これより、下剋上戦、予選スタート!で~す」
「は~い皆さんこんにちは!私が下剋上戦の実況を務めますエリで~す。緊張した選手の皆さん、今日は一生懸命己の力をぶちかまして最高のクリスマスイブにしましょう」
モニターにはどっかで見かけたがもう忘れた人が映し出された。お望み通り最高のイブにしてやる。
「さてさて、校長の挨拶なんですが今回はご多忙とのことで、言伝を預かっておりますので披露させていただきま~す。え~と,サウンド!koucyou today gekokuzyou!」
オレンジの魔法球が飛び出し、音声が流れる。
「本日はこの下克上戦を開催できたことを非常に快く思う。さて、今回の催しの目的だが、『協力のすばらしさ』だ。成績上位層の皆の力をよく見てそれを感じてほしい。ルールは選手のワンヒット十ポイントの魔法を当ててライフを削り切るか、闘技場内の白い枠線外に飛ばすかで勝敗は決まる。ライフは皆が獲得した点数そのものだ。最後に残った者には百点加点。今後の白の軍内での地位と名誉を約束しよう」
歓声が上がる。この試合に勝てば人類が滅んだ世界を支配する組織のトップに立てるのだ。当然と言っちゃ当然だ。
「私はこれで失礼するが、皆の健闘を祈っている。修了式を楽しみにしているからな。では」
そういうとオレンジ色の球はフッと消えた。
この声はあの時広場で演説していた男のものだ。もっと総司令官とか元帥、総大将のような凛々しい役職の者かと思っていたが校長とは。
「さ~て、では選手の登場で~す!ウィンド!」
急に前にあったモニターが門のように開いたかと思うと、背中から吹っ飛ばされた。
数メートルの廊下を通り抜けて、円形状のところから各選手がロケットのように飛び出してきた。
サキ先生の時といい、今日はやけに吹っ飛ばされるな。
勢いよく僕と同じように飛ばされて闘技場に出てきたのは五人だった。合計十人のはずなのだがどうしたのだろうか。
「は~い、みなさん不思議に思われていますよね。実はこれより前にソード班でも同じことをやったのですが、上位組があまりにも圧倒しすぎてつまらないとの声が上がりました。ですのでマジック班は下位組で一人勝ち抜けた者だけが次の上位層への試合に挑戦できることになりました」
なるほど、下位組には予選があって、上位組はいきなり優勝決定戦っていうわけやな。ということは、周りは下位組四人ってわけか。
見渡してみると全員が自分の方を見ている。・・・・・・いやな予感がした。
「ライフは闘技場の巨大スクリーンをご覧ください 」
やはり、やはりだ。自分がこのワースト五人組のなかで最下位だ。でかでかと掲示されたスクリーンには自分だけ五十点と際立って少なかった。そのほかは全員百点~百二十点だ。
よし名前が覚えられないから番号にしよう。ワースト一番は僕だからそれより前は二番、三番、四番、五番っと。
このような試合では敵が少ない方が圧倒的に楽に進められる。そして一番倒しやすいのは自分だ。それに彼ら彼女らは合格者確実だが、自分はそもそも失格者が濃厚だ。自分を倒しても今後一緒に白の軍で顔を合わせることもないから何の罪悪感もないだろうし、今後の生活にも支障をきたさない。
つまり心理的な面でも計算的な面でも僕は最重要ターゲットだ。
そう、ボッチはいつでも攻撃の的なのだ。
過去が頭をよぎる。
「さ~て、準備はできましたか?では、これより、下剋上戦、予選スタート!で~す」
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