war of the ボッチ~ボッチでもラブコメできますか?~

前田 隆裕

文字の大きさ
上 下
62 / 70
3章

②下剋上(2)

しおりを挟む
 闘技場に入ると個別の狭い待合室に案内された。中にはモニターがあった。まるでネットカフェの個室のようだ。運動会のようにグラウンドに一斉に並んで整列、そして校長の挨拶というお決まりの流れかと思ったが肩透かしを食らった。

「は~い皆さんこんにちは!私が下剋上戦の実況を務めますエリで~す。緊張した選手の皆さん、今日は一生懸命己の力をぶちかまして最高のクリスマスイブにしましょう」

 モニターにはどっかで見かけたがもう忘れた人が映し出された。お望み通り最高のイブにしてやる。

「さてさて、校長の挨拶なんですが今回はご多忙とのことで、言伝を預かっておりますので披露させていただきま~す。え~と,サウンド!koucyou today gekokuzyou!」

 オレンジの魔法球が飛び出し、音声が流れる。

「本日はこの下克上戦を開催できたことを非常に快く思う。さて、今回の催しの目的だが、『協力のすばらしさ』だ。成績上位層の皆の力をよく見てそれを感じてほしい。ルールは選手のワンヒット十ポイントの魔法を当ててライフを削り切るか、闘技場内の白い枠線外に飛ばすかで勝敗は決まる。ライフは皆が獲得した点数そのものだ。最後に残った者には百点加点。今後の白の軍内での地位と名誉を約束しよう」

 歓声が上がる。この試合に勝てば人類が滅んだ世界を支配する組織のトップに立てるのだ。当然と言っちゃ当然だ。

「私はこれで失礼するが、皆の健闘を祈っている。修了式を楽しみにしているからな。では」

 そういうとオレンジ色の球はフッと消えた。

 この声はあの時広場で演説していた男のものだ。もっと総司令官とか元帥、総大将のような凛々しい役職の者かと思っていたが校長とは。

「さ~て、では選手の登場で~す!ウィンド!」

 急に前にあったモニターが門のように開いたかと思うと、背中から吹っ飛ばされた。

 数メートルの廊下を通り抜けて、円形状のところから各選手がロケットのように飛び出してきた。

 サキ先生の時といい、今日はやけに吹っ飛ばされるな。



 勢いよく僕と同じように飛ばされて闘技場に出てきたのは五人だった。合計十人のはずなのだがどうしたのだろうか。

「は~い、みなさん不思議に思われていますよね。実はこれより前にソード班でも同じことをやったのですが、上位組があまりにも圧倒しすぎてつまらないとの声が上がりました。ですのでマジック班は下位組で一人勝ち抜けた者だけが次の上位層への試合に挑戦できることになりました」

 なるほど、下位組には予選があって、上位組はいきなり優勝決定戦っていうわけやな。ということは、周りは下位組四人ってわけか。

 見渡してみると全員が自分の方を見ている。・・・・・・いやな予感がした。

「ライフは闘技場の巨大スクリーンをご覧ください 」

 やはり、やはりだ。自分がこのワースト五人組のなかで最下位だ。でかでかと掲示されたスクリーンには自分だけ五十点と際立って少なかった。そのほかは全員百点~百二十点だ。



 よし名前が覚えられないから番号にしよう。ワースト一番は僕だからそれより前は二番、三番、四番、五番っと。



 このような試合では敵が少ない方が圧倒的に楽に進められる。そして一番倒しやすいのは自分だ。それに彼ら彼女らは合格者確実だが、自分はそもそも失格者が濃厚だ。自分を倒しても今後一緒に白の軍で顔を合わせることもないから何の罪悪感もないだろうし、今後の生活にも支障をきたさない。



 つまり心理的な面でも計算的な面でも僕は最重要ターゲットだ。



 そう、ボッチはいつでも攻撃の的なのだ。

 過去が頭をよぎる。


「さ~て、準備はできましたか?では、これより、下剋上戦、予選スタート!で~す」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

処理中です...