war of the ボッチ~ボッチでもラブコメできますか?~

前田 隆裕

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3章

②下剋上②ー1

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 急いで城の城門へと続く石橋のところまで来た。城の本丸っぽいところはさらに上に登ったところにある。今まで立ち入り禁止として近寄ることも許されていなかった場所だ。ここまで近くで見るとより迫力がある。

 赤いバーベナが描かれた旗がいくつもなびき、豪華な印象とともに足がすくむほどの威圧感を放っていた。城壁には四角い穴が無数に空いている。おそらく一斉にあそこから魔法が放たれるのだろう。

「おう、ちゃんと来たな。」
 そう言うとサキ先生は自分の顔を覗き込んできた。

「サキ先生、一体何ですか?」

「うんうん、いろいろ言いたいことが山ほどあるが、それは後だ」

 露骨ににっこりしている。少し引く。

「タカ君、早いよ~」
 そんなはずはない。自分はマラソンとかビリのレベルだったはずだが。

「マユリも来たな。よし急だがこれから下剋上戦というものが開かれる。そこでタカヒロが参加することになった。」

「下剋上戦ですが。えげつない名前ですね」

「いやこの催しは名前の通りで、結構重要なんだ。なんと優勝者には点数百点加点がされる」

「タカ君も合格者になれるってことだね!」

「そうだ。本当なら来週に開かれる予定だったのだが、校長が開催を急ぐよう指示したみたいで急遽クリスマスイブの夜とクリスマスに開かれることになった。何人かの幹部や研修生が進言したそうだ。ああ~この一週間、それに備えて特別授業を組む予定だったのだがな」

「私は出場しなくていいの?」

「名前の通りといったが、これは成績トップ五と成績ワースト五の魔法戦なんだ。たしかソードの班の人もやっていたはずだ。まあソードの方は成績下位のやつらがメタメタにやられて下剋上どころかリンチ状態だったけどな」

 そういえばソードの班の人もいたな。かかわりが一切ないから存在自体忘れていた。つながりが消えれば人はすぐに忘れるものだ。ドラマや漫画で今生の別れの時「お前の事は一生忘れないよ」「私も」なんて、虫唾が走る。

「メタメタって……。タカ君なら大丈夫だよね」

「確実ってないからな。なんとも。しかも相手の事を全く知らない」

「なあに、成績下位なんていっても所詮計算上のものだ。大丈夫、私が直々に教えてやったんだ。目にもの見せてやれ」

「でもでも、こういう時ってなんかみんな強そうに見えるんだよね」

「そうそう、なんか久しぶりに受験の時の「みんなが賢そうに見える現象」を味わいそうだ」

「何を言っている。だいたいそういうのはあてにならん。ばしっといってこい!私はマユリと観客席でばっちり見てるからな。勝てばお祝いだ!」

「私もお祝いの料理、頑張って作るから。それに、終わったらパレードもあること忘れないでね」

「りょーかい。あっそうだ、」

「?」

「お酒の量はもう間違えんとってな」
「今それ言う!?」

 マユリは笑って、サキ先生は自信たっぷりに見送ってくれた。

 城門をくぐって、さらに上るのかと思いきや、会場はすぐだった。イタリアのコロッセオを思い出すかのような闘技場だ。城の敷地にこんなものがあるとは、どれだけの規模なのか想像がつかない。

 まあいろいろ考えることはあるが全部後回しだ。今は目の前のことに集中。自分にとっては下剋上や点数、合格者どころの話ではない。

 これはボッチの逆襲だ!
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