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3章
①論争(2)
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「まだまだタカヒロには教育が必要だな」
「え、まだなにかあるんですか」
「私が強引で、諦めの悪いこと、よく知ってるだろ」
「はい、まあそれはもう十二分に。というか自分でもわかって
るなら」
「ごたごたうるさいぞ。とにかくまずマユリを連れ戻してこい!話はそれからだ!」
「え~……」
今さっき嫌われたばかりなのに、なんでまた。
「何か不満か?」
「ここはそっとしておくべきでは」
「何を言ってるんだ。どうせ本音は『マユリに合わす顔がない』とかいうくだらない理由だろう。いいから行ってこい!ウィンド!」
いつの間にか打ち出してあったウィンドの緑の球が僕に直撃し、吹っ飛んでいく。しかも器用に通路にそって直進し、曲がり、すいすい飛んでいく。どうやって操ってるんだか、おそるべしサキ先生。そうだウォーターで打ち消せば
「ウォーター!」
魔法が出ない。
「ウォーター、ウォーター、ウォーター!!」
やはり魔法が出ない。くそ、ウィンドのせいで僕のエネルギーが奪われていく。
・・・・・・・・・・・・・・・
数分後相変わらず止まらないまま、まだ吹っ飛んでいた。ほかの研修生の怪訝な顔が次々と流れていった。まったくサキ先生は最後まで心労を与えてくれる。
そうだ、もう「最後」なのだ。いいかげんゆっくりさせてくれ・・・・・・
もう疲れた。
「いったいいつまで、ってこれあの地下六階へ向かってないか」
気が付けば二か月一人で通った通路を飛んでいた。そしてその予想は的中し扉を突っ切って地下六階の部屋へ突入、隅っこでうずくまっているマユリに直撃した。
「え!?なにタカ君!?」
「いつつつつ……サキ先生もひどいことするな」
マユリの顔を見ると目元が赤くなっている。泣き虫だったあの頃の自分とそっくりだ。ああ、泣いていたのか。僕がどうなろうとマユリにとっては所詮ただの他人事のはずだ。どうしてこんなに泣くのか。というよりも
「近い近い近い!」
「あっごめん……ってぶつかってきたのはタカ君のほうでしょ」
さっと距離をとる。本当に心労に絶えない。
「で、何」
いつになくそっけない言葉。
「サキ先生が話あるからちょっと来いって。事務連絡」
「そう、ありがと。でも私行かない」
「なんで」
「タカ君はみんなの嫌われ者なんでしょ。嫌いな人の言うことなんか聞きたくないもの」
なるほど、確かにそうだ。
「自分のことは嫌いでも構わないから。でもな、これはサキ先生の言葉だから行ってやってくれ。あの先生、執念深いからあとで何されるかわからんぞ」
「でもその話の要点はタカ君の事なんでしょ。だったらやっぱり行かない」
頑固だな。いや他人に言えたことではないがこれではにっちもさっちもいかない。
「なぁマユリ、何か怒ってるなら悪かった」
「謝って済むなら警察はいらないよ」
小学生向けの漫画に出てきそうなセリフだ。しかも現実で初めて聞いた。
しかしこんな耳すら傾けてくれないような調子では一向に進まない。説得なんてしたことない。いつも人との争い・かかわりを避けてきた自分には無理だろう。こういうのは専門の人がやればいいのだ。検察官とか刑事、弁護士とかだ。それこそサキ先生のような強引な人こそ適任ではないか。
そもそもここに来てから一人になろうとすれば必ず、サキ先生が僕を引っ張ってきて人とのかかわりを持たせようとしてきた。鬼ごっこや外食にクリスマス、それ以外にもたくさんあった。今回もその類の物だろう。これですごすご退散してきたなんてサキ先生が知ったら、またウィンドで吹っ飛ばしてくる。
もう後がない。考えるしかない。
「え、まだなにかあるんですか」
「私が強引で、諦めの悪いこと、よく知ってるだろ」
「はい、まあそれはもう十二分に。というか自分でもわかって
るなら」
「ごたごたうるさいぞ。とにかくまずマユリを連れ戻してこい!話はそれからだ!」
「え~……」
今さっき嫌われたばかりなのに、なんでまた。
「何か不満か?」
「ここはそっとしておくべきでは」
「何を言ってるんだ。どうせ本音は『マユリに合わす顔がない』とかいうくだらない理由だろう。いいから行ってこい!ウィンド!」
いつの間にか打ち出してあったウィンドの緑の球が僕に直撃し、吹っ飛んでいく。しかも器用に通路にそって直進し、曲がり、すいすい飛んでいく。どうやって操ってるんだか、おそるべしサキ先生。そうだウォーターで打ち消せば
「ウォーター!」
魔法が出ない。
「ウォーター、ウォーター、ウォーター!!」
やはり魔法が出ない。くそ、ウィンドのせいで僕のエネルギーが奪われていく。
・・・・・・・・・・・・・・・
数分後相変わらず止まらないまま、まだ吹っ飛んでいた。ほかの研修生の怪訝な顔が次々と流れていった。まったくサキ先生は最後まで心労を与えてくれる。
そうだ、もう「最後」なのだ。いいかげんゆっくりさせてくれ・・・・・・
もう疲れた。
「いったいいつまで、ってこれあの地下六階へ向かってないか」
気が付けば二か月一人で通った通路を飛んでいた。そしてその予想は的中し扉を突っ切って地下六階の部屋へ突入、隅っこでうずくまっているマユリに直撃した。
「え!?なにタカ君!?」
「いつつつつ……サキ先生もひどいことするな」
マユリの顔を見ると目元が赤くなっている。泣き虫だったあの頃の自分とそっくりだ。ああ、泣いていたのか。僕がどうなろうとマユリにとっては所詮ただの他人事のはずだ。どうしてこんなに泣くのか。というよりも
「近い近い近い!」
「あっごめん……ってぶつかってきたのはタカ君のほうでしょ」
さっと距離をとる。本当に心労に絶えない。
「で、何」
いつになくそっけない言葉。
「サキ先生が話あるからちょっと来いって。事務連絡」
「そう、ありがと。でも私行かない」
「なんで」
「タカ君はみんなの嫌われ者なんでしょ。嫌いな人の言うことなんか聞きたくないもの」
なるほど、確かにそうだ。
「自分のことは嫌いでも構わないから。でもな、これはサキ先生の言葉だから行ってやってくれ。あの先生、執念深いからあとで何されるかわからんぞ」
「でもその話の要点はタカ君の事なんでしょ。だったらやっぱり行かない」
頑固だな。いや他人に言えたことではないがこれではにっちもさっちもいかない。
「なぁマユリ、何か怒ってるなら悪かった」
「謝って済むなら警察はいらないよ」
小学生向けの漫画に出てきそうなセリフだ。しかも現実で初めて聞いた。
しかしこんな耳すら傾けてくれないような調子では一向に進まない。説得なんてしたことない。いつも人との争い・かかわりを避けてきた自分には無理だろう。こういうのは専門の人がやればいいのだ。検察官とか刑事、弁護士とかだ。それこそサキ先生のような強引な人こそ適任ではないか。
そもそもここに来てから一人になろうとすれば必ず、サキ先生が僕を引っ張ってきて人とのかかわりを持たせようとしてきた。鬼ごっこや外食にクリスマス、それ以外にもたくさんあった。今回もその類の物だろう。これですごすご退散してきたなんてサキ先生が知ったら、またウィンドで吹っ飛ばしてくる。
もう後がない。考えるしかない。
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