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2章
⑪クリスマス(5)
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「え?なんですか。曲芸でも披露してくれんですか」
「そういうのわたし大好き!私もマジックとかやるよ!」
「それは後でやってもらうとして、まずこれは私からのクリスマスプレゼントだ」
手渡されたのは金色の装飾が施された星形の茶色のブローチだった。
「研修よく頑張りましたっていう勲章か何かですか?わたしブローチなんてもらうの初めてですよ」
「そんな有名無実なものではない。これは事前にケミカルの魔法を一部ためて置ける代物だ。エネルギーが余っているときにこのブローチにケミカルの魔法をかけておけば、いざ非常時になったとき心の支えになる。まあ体の予備バッテリーみたいなもんだな。ちなみに私のお手製だ。大事にしろよ」
「ありがとうございます!」
本当に助かる。体力は多い方が戦いやすい。ましてや誰かからの回復を得られないボッチの僕には、今ダイヤモンド以上に貴重なものだ。
「ところで話は逸れるが、お前ら二人はプレゼント交換とかしないのか?」
「ギクッ、……僕はないです。申し訳ない」
これまたボッチの僕には厳しい質問だ。当然プレゼントなど用意していない。今まで用意しなくてよかったこともあって、すっかり油断していた。そもそもクリスマス自体忘れていた。
「私はちゃんと用意してたよ!」
ますます気まずい。
マユリは何やら自分のクローゼットの中をあさって、二枚の紙を持ってきた。
「私からは光の魔法パレードの参加チケット。いつもタカ君には魔法の練習に付き合ってもらってるし、そのお礼。それにいつも頑張っているからそのねぎらいも込めて、卒業前の日一緒に行こ?」
「なんだなんだマユリ、そんなチケットまで用意して、予定がないなんて言っておいて、もう行く気満々だったのか?」
「ち、ちがうよ!前に安く譲ってもらったのを思い出して、ちょうどクリスマスのプレゼントにいいかなぁなんて思ってそれでお世話になってるタカ君にお礼として……」
「ちょっと話ができすぎてる気がするけどなぁ~」
いじるサキ先生に慌てふためくマユリ、そんな風景は第三者から見ればほほえましいというか滑稽というかそんな風に映るのだろう。しかし僕はそんなことは考えられない。
プレゼントをもらう、というのは自分の中ではいわゆる「借り」だ。つまりいつか返さなければならないものだ。そして日がたつにつれその借りは利息が付いてますます増えていく。昨今の0.001%のような低金利であれば問題ないのだが、こういったものは三倍返しのように「何倍か?」で返済額が増えていく。%でいえば300%だ。おそろしやプレゼント。マユリとサキ先生のダブル借りで破産しそうだ。
「何にもあげられないのに、こんなにもらっちゃっていいのかな。いつか返さないとな」
「返す返さないじゃないんだけどな~私の場合はもらった相手が喜んでくれたらそれでもう幸せだよ!」
「いやでもなぁ、これじゃ迷惑しかかけてないし。貴重なお金を削ってまで僕なんかにくれるなんてそんな」
「律儀だねぇ」
「普通だと思うよ!?」
「そんなに気にするなら……そうだ、タカ君からのプレゼントは、楽しい思い出。それを私にちょうだいね!」
気を使われているのだろうか。楽しい思い出なんて何の金にもならない。父の日なんかにあげる「肩たたき券」並みのプレゼントだろう。そんなのでいいのか。いやあの顔を見れば本心で言っているのだろう。それとも何か裏が……
「そんなんでええの?このチケット、きっとレア物だろうに。お返しもできないし、せめてチケット代だけでも」
「そんなのいいから。プレゼントは相手が一番欲しいっている物がいいの。だから私が一番欲しいってる『楽しい思い出』をちょうだい!」
「それだと逆にプレゼントをもらった僕が、そのチケットをほしくてほしくてたまらないみたいに聞こえるけど」
「ええっ、タカ君欲しくなかった!?」
「いやいや、きっと魔法ですごいことやってくれそうだし、ぜひとも行ってみたい」
「よかったー。またなんか難しい理由つけて行かない!なんていうかと思ったよ」
「僕も行きたいときには素直に行きたいって言うよ」
「はい、ご歓談中失礼します。大事なお話はプレゼントの件のほかにもう一つある」
唐突にサキ先生は二つのA四封筒を僕とマユリに配った。
重要親展と赤印が押されており、一目で重要な書類であることが分かった。
「そういうのわたし大好き!私もマジックとかやるよ!」
「それは後でやってもらうとして、まずこれは私からのクリスマスプレゼントだ」
手渡されたのは金色の装飾が施された星形の茶色のブローチだった。
「研修よく頑張りましたっていう勲章か何かですか?わたしブローチなんてもらうの初めてですよ」
「そんな有名無実なものではない。これは事前にケミカルの魔法を一部ためて置ける代物だ。エネルギーが余っているときにこのブローチにケミカルの魔法をかけておけば、いざ非常時になったとき心の支えになる。まあ体の予備バッテリーみたいなもんだな。ちなみに私のお手製だ。大事にしろよ」
「ありがとうございます!」
本当に助かる。体力は多い方が戦いやすい。ましてや誰かからの回復を得られないボッチの僕には、今ダイヤモンド以上に貴重なものだ。
「ところで話は逸れるが、お前ら二人はプレゼント交換とかしないのか?」
「ギクッ、……僕はないです。申し訳ない」
これまたボッチの僕には厳しい質問だ。当然プレゼントなど用意していない。今まで用意しなくてよかったこともあって、すっかり油断していた。そもそもクリスマス自体忘れていた。
「私はちゃんと用意してたよ!」
ますます気まずい。
マユリは何やら自分のクローゼットの中をあさって、二枚の紙を持ってきた。
「私からは光の魔法パレードの参加チケット。いつもタカ君には魔法の練習に付き合ってもらってるし、そのお礼。それにいつも頑張っているからそのねぎらいも込めて、卒業前の日一緒に行こ?」
「なんだなんだマユリ、そんなチケットまで用意して、予定がないなんて言っておいて、もう行く気満々だったのか?」
「ち、ちがうよ!前に安く譲ってもらったのを思い出して、ちょうどクリスマスのプレゼントにいいかなぁなんて思ってそれでお世話になってるタカ君にお礼として……」
「ちょっと話ができすぎてる気がするけどなぁ~」
いじるサキ先生に慌てふためくマユリ、そんな風景は第三者から見ればほほえましいというか滑稽というかそんな風に映るのだろう。しかし僕はそんなことは考えられない。
プレゼントをもらう、というのは自分の中ではいわゆる「借り」だ。つまりいつか返さなければならないものだ。そして日がたつにつれその借りは利息が付いてますます増えていく。昨今の0.001%のような低金利であれば問題ないのだが、こういったものは三倍返しのように「何倍か?」で返済額が増えていく。%でいえば300%だ。おそろしやプレゼント。マユリとサキ先生のダブル借りで破産しそうだ。
「何にもあげられないのに、こんなにもらっちゃっていいのかな。いつか返さないとな」
「返す返さないじゃないんだけどな~私の場合はもらった相手が喜んでくれたらそれでもう幸せだよ!」
「いやでもなぁ、これじゃ迷惑しかかけてないし。貴重なお金を削ってまで僕なんかにくれるなんてそんな」
「律儀だねぇ」
「普通だと思うよ!?」
「そんなに気にするなら……そうだ、タカ君からのプレゼントは、楽しい思い出。それを私にちょうだいね!」
気を使われているのだろうか。楽しい思い出なんて何の金にもならない。父の日なんかにあげる「肩たたき券」並みのプレゼントだろう。そんなのでいいのか。いやあの顔を見れば本心で言っているのだろう。それとも何か裏が……
「そんなんでええの?このチケット、きっとレア物だろうに。お返しもできないし、せめてチケット代だけでも」
「そんなのいいから。プレゼントは相手が一番欲しいっている物がいいの。だから私が一番欲しいってる『楽しい思い出』をちょうだい!」
「それだと逆にプレゼントをもらった僕が、そのチケットをほしくてほしくてたまらないみたいに聞こえるけど」
「ええっ、タカ君欲しくなかった!?」
「いやいや、きっと魔法ですごいことやってくれそうだし、ぜひとも行ってみたい」
「よかったー。またなんか難しい理由つけて行かない!なんていうかと思ったよ」
「僕も行きたいときには素直に行きたいって言うよ」
「はい、ご歓談中失礼します。大事なお話はプレゼントの件のほかにもう一つある」
唐突にサキ先生は二つのA四封筒を僕とマユリに配った。
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