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2章
⑪クリスマス(4)
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夕食の折、なんとケーキが出てきた。手作りだというが、もう市販でも通用するくらいの出来栄えだ。
「今日はクリスマスイブだからな。マユリも手伝ってくれたぞ」
「サキ先生すごすぎです。何でも料理できちゃうんですね。私なんか料理本見ながらじゃないととてもできないですよ。カメラあったら写真とりたかったです」
「しかもこのチョコレート細工、僕らですか!?よく作りましたね」
ケーキの真ん中には自分たち三人に模した二頭身キャラのチョコ細工があった。なんかサキ先生のチョコだけ偉そうなのが少し正直すぎて笑えた。
「いや、でもさすがにこれを食べるのは少し気がひけ……」
見ると女性陣二人は何のためらいもなく自分にもしたチョコをバリバリと食べていた。
これはこれでワイルドで大変結構だ。これから魔物から守る兵士になるのだからな、それくらいの器量がないとな。うん、でも少し引くな。
「タカ君どしたの?楽しそうな顔してるよ」
「いやなんでもないよ」
「楽しいなら楽しいと素直に言ってよー」
「楽しいよ。面白い観察日記が書けそうだ」
「なんかからかわれてるみたいで釈然としないけど、楽しいならいいや。私もめっちゃ楽しい!」
もはや日常と化してきたこの夕食はいつものようににぎやかに進んでいった。
いや、違う。非日常だ。非日常でなければならないのだ。
給食、弁当、社員食堂、飲み会、いつもいつも一人だった。白い目で見られながら食べていたあの頃が本来の僕の姿だ。小さいころに感じた辛さから身を守るために、そんな白い目の環境を無ととらえてきて久しい。僕は食事の時完璧な自分の世界にこもった。そしてそこで“最高”の食事を楽しんできたのだ。一人こそ幸せ、安息の食事へとつながる。今が異常なのだ。こんなことが日常なあるはずがない。全くどうかしている。
胸に手を当ててみた。いつものように心労が・・・・・・?
体すらもう麻痺してしまったのだろうか。重さを感じない。話しながら食事をするというボッチにとって高等芸を強いられているのにそんなはずはない。
そうだ、きっとサキ先生のケーキがおいしすぎるから、私の心はケーキに奪われて心ここにあらず状態なのだ。つまり実質一人で食べているようなものなのだ。
きっと、そのはずだ。
そして皆が食べ終わるころ、サキ先生が突如席を立った。またワインの飲みすぎか?
「さて、君たち二人に大事なお知らせがある」
サキ先生の顔はいつにもまして楽しそうだった。
「今日はクリスマスイブだからな。マユリも手伝ってくれたぞ」
「サキ先生すごすぎです。何でも料理できちゃうんですね。私なんか料理本見ながらじゃないととてもできないですよ。カメラあったら写真とりたかったです」
「しかもこのチョコレート細工、僕らですか!?よく作りましたね」
ケーキの真ん中には自分たち三人に模した二頭身キャラのチョコ細工があった。なんかサキ先生のチョコだけ偉そうなのが少し正直すぎて笑えた。
「いや、でもさすがにこれを食べるのは少し気がひけ……」
見ると女性陣二人は何のためらいもなく自分にもしたチョコをバリバリと食べていた。
これはこれでワイルドで大変結構だ。これから魔物から守る兵士になるのだからな、それくらいの器量がないとな。うん、でも少し引くな。
「タカ君どしたの?楽しそうな顔してるよ」
「いやなんでもないよ」
「楽しいなら楽しいと素直に言ってよー」
「楽しいよ。面白い観察日記が書けそうだ」
「なんかからかわれてるみたいで釈然としないけど、楽しいならいいや。私もめっちゃ楽しい!」
もはや日常と化してきたこの夕食はいつものようににぎやかに進んでいった。
いや、違う。非日常だ。非日常でなければならないのだ。
給食、弁当、社員食堂、飲み会、いつもいつも一人だった。白い目で見られながら食べていたあの頃が本来の僕の姿だ。小さいころに感じた辛さから身を守るために、そんな白い目の環境を無ととらえてきて久しい。僕は食事の時完璧な自分の世界にこもった。そしてそこで“最高”の食事を楽しんできたのだ。一人こそ幸せ、安息の食事へとつながる。今が異常なのだ。こんなことが日常なあるはずがない。全くどうかしている。
胸に手を当ててみた。いつものように心労が・・・・・・?
体すらもう麻痺してしまったのだろうか。重さを感じない。話しながら食事をするというボッチにとって高等芸を強いられているのにそんなはずはない。
そうだ、きっとサキ先生のケーキがおいしすぎるから、私の心はケーキに奪われて心ここにあらず状態なのだ。つまり実質一人で食べているようなものなのだ。
きっと、そのはずだ。
そして皆が食べ終わるころ、サキ先生が突如席を立った。またワインの飲みすぎか?
「さて、君たち二人に大事なお知らせがある」
サキ先生の顔はいつにもまして楽しそうだった。
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