war of the ボッチ~ボッチでもラブコメできますか?~

前田 隆裕

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2章

⑨特別授業(2)

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「・・・・・・ペットになるかどうかは別として、それは無理だ。私たちが杖から打ち出す魔法は魔物にとっては大嫌いな食べ物なんだ。魔物は私たちと違って皮膚からもエネルギーを吸収する。だから魔法を当てて、つまりその大嫌いな食べ物を無理やり食わせて破裂させることが、魔物を倒す基本になる」

 ふとあの時の巨大なウォーターの球を思い出した。魔物の視点からすれば巨大な大嫌いな食べ物が突如現れ、無理やり食べさせられ、食べ過ぎで死ぬ、ということか。少しかわいそうにも思えてきたが正当防衛だから仕方がない。ご冥福をお祈りしよう。

「話は逸れたが、とにかく対になるのは他にも『サウンド』と『サイレント』や『シャイン』と『ダーク』だ。言葉から、対になるのはだいたい想像がつくだろう」

「先生が使ってた『ケミカル』に対になるものは何ですか?」

「あー、それはないんだ」

「それって打ち消すことができない最強の魔法ってこと!?」

「いや、どんな魔法でも打ち消されてしまう魔法だ。しかもケミカルで逆に打ち消すことはできないしむしろ反射されてしまう。」

「じゃあ使えない魔法ってこと?」

「そう早まるな、マユリ。これからこのケミカルを使える魔法にするのがこの特別授業だ。」

「では僕からも質問良いですか?」

「ああどんどん聞いてくれ!」

 この人、結構質問に答えているのに全然疲れる気配がない。むしろ生き生きしている。余程この仕事が、いや特別授業開催を楽しみにしていたのだろう。

「対になる魔法を打てば相殺されるのはわかりました。では逆に同じ魔法をぶつけた場合はどうなるのですか?」

「良い質問ですね!」
 どこぞのニュース解説者の真似でもしたいのだろうか。しかもいきなりですます調とは無理やりにもほどがある。

「答えは反射だ。同じ魔法がぶつかり合うと、より大きな一つの魔法の球が生まれる。そしてぶつかった二つのエネルギーの大きい方から小さい方へ向きを変えて発射される。またその大きな魔法球も普通に杖で操ることができる」

「威力を高めてお返し!ってことですね。」

「そうだ。わかってるじゃないかマユリ!」

「えへへ。でもこれあの時、タカ君やってなかった?」

「あの時のウォーターがそうなんかな?なんか魔法球がいつもより大きくなってけど」

「恐らくそうだな。衝撃分の位置エネルギーを吸収したのだろう。向きは相殺されて停止した球を操作したって感じだろう。タカヒロもよくそんな発想が思いついたな。えらいぞ!」

「先生、今日はいつもより褒めてくれますね」

「ははっ、タカヒロとマユリは今日から正式な私のかわいい教え子だからな。ほかのやつらなんかに負けないぐらい最高の教えをつけてやる。加えて、心身の健康も私の料理で最大限サポートするぞ!」

 そういえば忘れかけていたが、サキ先生は食堂の第一線で活躍するトメさんでもあった。料理も得意なんだろうな。

「心身の健康をサポートしていただけるなら一つお悩み相談が」

「はいどうぞ!」

「最近心労に絶えない日々を送っています。まずは心をゆっくりさせるためにぜひとも僕に個室を、それにマユリにもくださいませんか」

 マユリの分は自分の個室をもらうためのおまけだ。人はどちらもダメということは言いにくい。ダブルバインド効果だ。それに機嫌のいい今、サキ先生がノリで首を縦に振ってくれさえすれば・・・・・・。

「そうか。タカヒロは心労に絶えない日々を送っているのか」

「はいそうです!このままでは勉強に支障が出るやもしれません!」
 この流れはオーケーか!?

「よし、では私が根本からそれを治療してやろう!」
「ありがとうございます!」

 まさか本当にオーケーが出るとは。言ってみるものだ。早速荷物をまとめよう。

「おいおいタカヒロ、何をしてるんだ?」

「何って、自分の個室へ向かう準備ですよ。どこへ案内してくれるんですか?」

「珍しく早とちりしたな。私は根本治療をしてやるといったんだ。治療室はこの部屋だぞ。それにそのお前が感じている心労は好転反応だ。安心するといい」

「私もタカ君の疲れを癒してあげれるように、料理とか頑張ります!」

「その意気だ。マユリ!」

 妙なポジティブンシンキングでまとめられて、今日の授業は終わった。

 唖然とした。ただただ唖然とするしかなかった。
 好転反応?拒絶反応の間違いではないのか?まったく・・・・・・

 ・・・・・・まあ少しぐらいこんなにぎやかな生活もいいのかもしれないな。
 あと一カ月だ。そう、たった一か月だ。
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