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2章
⑤鬼ごっこ(2)
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そして気が付けばまた地下六階に戻っていた。今度は初めから床の石タイルをずらして地下七階の隠し部屋に入った。
マユリさんにはサポートがついている。サポート役はまぎれもない、サキ事務官長だ。よくよく考えればこんなにすぐ見つかるのは、サキ先生がGPSのような私を追跡できる手段を持っているからなのだろう。それになにやらマユリさんは誰かと会話をしていた。こっちに来てからスマホも使えないのに音声通信もできるのか。いずれにせよどこに逃げても見つかってしまうことは分かった。
それならば、入り口が一つしかない地下七階がもっとも最適だ。どんなに強い人でも複数の方向からの攻撃には負けてしまう。弱い人ならなおさらだ。とりあえず地下七階を要塞化しよう。
どれくらい時間がたっただろうか。とうとう地下七階へ通じる石のタイルが取り外される音がした。下りのスロープを渡ればすぐに地下七階へ到達してしまう。いくらなんでも早すぎやろ。
「よし、ちょっと手間取ったけど見つけたよ、タカ君。こんな部屋があるなんて知らなかったけどもう行き止まりみたいだから、逃げられないよね。あきらめて一緒にサキ先生の特別授業を受けよう?」
「それは私を捕まえてから言ってください。魔法勝負と行きましょう。」
「ええー!?私、初めてなんだけど。やさしめにできない?」
「それは無理なご相談で!!」
杖をマユリに向けてさっと一振りした。
「何にも唱えてないのに何で魔法が打てるの~~!!」
「すでに唱えて、魔法の球を打ち出しておきました。あとはそれを打つのみだけだからです」
かろうじてよけるマユリに次々とウィンドの球を打っていく。なんか弱い者いじめをしているみたいでとても心が痛む。ただ自分は追われる身。それに一か月の心の平穏がかかっているのだ。負けられない。
「マユリさん、運動神経いいんですね。それならウィンドを分割。掃射!」
杖でウィンドの球を細かく分割してガトリング砲のごとく打ち出す。
「きゃっ!」
一発だけ左足にあたった。威力は小さいもののバランスを崩すことはできた。この期は逃すまい。
「よし、そしてウィンドの球をリング状にして、発射!!」
うまくヒットした。マユリはウィンドのリングで縛られ、身動きを封じることができた。
「うぅ~~魔法一発も打てずに、逆につかまっちゃったよ」
「マユリさん、申し訳ないけどタイムリミットまで地下七階で待っててください。時間が過ぎ次第また迎えに来ますから」
「タカ君、ちょっと待ってよ~」
「サキ事務官長と通じているでしょう」
「うっ!?」
「わかりやすいね~。とにかく一緒にいると情報が筒抜けになります。ということでそれではマユリさん、さらば!」
勝った!サキ先生がいくら情報を流しても、もうマユリさんは動けない。心が弾む。足が地につかない心地とはこういうものなのかと改めて感じる。
「さて、お腹空いたし、戦勝祝いの天ぷらそばでも食べに行きますか・・・・・・」
地獄からの解放で爽快感に浸る私は地下七階から凱旋門をくぐるような気持ちで出ていこうとした。が、その瞬間身動きが取れなくなった。金縛りか?
そしてそんな違和感もつかの間、今度は文字通り足が地についていないことに気づく。
そのまま急に体が宙に浮いたのだった。
マユリさんにはサポートがついている。サポート役はまぎれもない、サキ事務官長だ。よくよく考えればこんなにすぐ見つかるのは、サキ先生がGPSのような私を追跡できる手段を持っているからなのだろう。それになにやらマユリさんは誰かと会話をしていた。こっちに来てからスマホも使えないのに音声通信もできるのか。いずれにせよどこに逃げても見つかってしまうことは分かった。
それならば、入り口が一つしかない地下七階がもっとも最適だ。どんなに強い人でも複数の方向からの攻撃には負けてしまう。弱い人ならなおさらだ。とりあえず地下七階を要塞化しよう。
どれくらい時間がたっただろうか。とうとう地下七階へ通じる石のタイルが取り外される音がした。下りのスロープを渡ればすぐに地下七階へ到達してしまう。いくらなんでも早すぎやろ。
「よし、ちょっと手間取ったけど見つけたよ、タカ君。こんな部屋があるなんて知らなかったけどもう行き止まりみたいだから、逃げられないよね。あきらめて一緒にサキ先生の特別授業を受けよう?」
「それは私を捕まえてから言ってください。魔法勝負と行きましょう。」
「ええー!?私、初めてなんだけど。やさしめにできない?」
「それは無理なご相談で!!」
杖をマユリに向けてさっと一振りした。
「何にも唱えてないのに何で魔法が打てるの~~!!」
「すでに唱えて、魔法の球を打ち出しておきました。あとはそれを打つのみだけだからです」
かろうじてよけるマユリに次々とウィンドの球を打っていく。なんか弱い者いじめをしているみたいでとても心が痛む。ただ自分は追われる身。それに一か月の心の平穏がかかっているのだ。負けられない。
「マユリさん、運動神経いいんですね。それならウィンドを分割。掃射!」
杖でウィンドの球を細かく分割してガトリング砲のごとく打ち出す。
「きゃっ!」
一発だけ左足にあたった。威力は小さいもののバランスを崩すことはできた。この期は逃すまい。
「よし、そしてウィンドの球をリング状にして、発射!!」
うまくヒットした。マユリはウィンドのリングで縛られ、身動きを封じることができた。
「うぅ~~魔法一発も打てずに、逆につかまっちゃったよ」
「マユリさん、申し訳ないけどタイムリミットまで地下七階で待っててください。時間が過ぎ次第また迎えに来ますから」
「タカ君、ちょっと待ってよ~」
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「うっ!?」
「わかりやすいね~。とにかく一緒にいると情報が筒抜けになります。ということでそれではマユリさん、さらば!」
勝った!サキ先生がいくら情報を流しても、もうマユリさんは動けない。心が弾む。足が地につかない心地とはこういうものなのかと改めて感じる。
「さて、お腹空いたし、戦勝祝いの天ぷらそばでも食べに行きますか・・・・・・」
地獄からの解放で爽快感に浸る私は地下七階から凱旋門をくぐるような気持ちで出ていこうとした。が、その瞬間身動きが取れなくなった。金縛りか?
そしてそんな違和感もつかの間、今度は文字通り足が地についていないことに気づく。
そのまま急に体が宙に浮いたのだった。
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