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2章
③講義(3)
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実技演習当日。M-1のグループは芝生のグラウンドに集まっていた。なるほど研修等の裏はこんな広い芝生になっていたのか。とてもよく手入れが行き届いており、見ているだけですがすがしい気分になる。そのずいぶん奥には水堀を挟んで小高い山があり、堅牢な城がそびえ立っている。まだ誰も言ったことはなく、教育官からもきつい立ち入り禁止令が出ている。
「さて魔法専攻の研修生の皆さん、おはようございます!」
「おはようございます」
「元気がないですね!もう一度!おはようございます!!!」
「おはようございます!」
一週間ぶりの相変わらずのやり取りだが、辟易する。
「さてさて皆さん、テキストは読みましたか?そしてペアはできましたか。いやあペアができたかどうかは紙を提出していただいて知っているんですが、一応念のため聞いときました。せっかくできた三か月を共にするペア、仲良くしていってくださいね。」
何という嫌味な言い方だ。自分がペアのいないことも知っているだろうに。
「とりあえず最初は各自打ちっぱなしです。『ファイヤー』から順番に打っていきましょう。はい横一列に並んで並んで!」
言われるままに各研修生は並んで杖を構えていった。私も並んで杖を構える。右から九番目だ。みんなあの朝ミーティングの教育官が持っていたような豪華な杖を構えている。いかにも立派な魔法使いっぽい。一方私は公園に落ちていそうな棒切れを持っている。チャンバラごっこに燃える小学生みたいだ。みじめさを通り越して滑稽に感じてきた。
「さて各自私から見て右の人から『ファイヤー』を唱えて上空に打ち出してみてください。さあいきますよ!」
「一番、ファイヤー!」
いちばん右端の男子が呪文を唱えた。赤い球が杖から出たと思いきや、勢いよく上空へ赤い光線が飛び出た。さすが熱エネルギーの塊。熱風がすごい。
「はいお見事!どんどん行っちゃって下さい!!」
「二番、ファイヤー!」
「三番、ファイヤー!!」
「四番、ファイヤー!!!」
「はいはい!いいですね。いいですね。この調子です。次々行きましょう!」
「五番、ファイヤー!」
「六番、ファイヤー!」
もうすぐ僕の番だ。ぎゅっと頼りない杖を握りしめる。気合を入れる。
「七番、ファイヤー!!」
「八番、ファイヤー!!」
「九番、ファイヤァァァァァァーーーー・・・・・・って何!?」
そう言った瞬間、八番が放ったファイヤーが自分にめがけて飛んできたのだった。
「さて魔法専攻の研修生の皆さん、おはようございます!」
「おはようございます」
「元気がないですね!もう一度!おはようございます!!!」
「おはようございます!」
一週間ぶりの相変わらずのやり取りだが、辟易する。
「さてさて皆さん、テキストは読みましたか?そしてペアはできましたか。いやあペアができたかどうかは紙を提出していただいて知っているんですが、一応念のため聞いときました。せっかくできた三か月を共にするペア、仲良くしていってくださいね。」
何という嫌味な言い方だ。自分がペアのいないことも知っているだろうに。
「とりあえず最初は各自打ちっぱなしです。『ファイヤー』から順番に打っていきましょう。はい横一列に並んで並んで!」
言われるままに各研修生は並んで杖を構えていった。私も並んで杖を構える。右から九番目だ。みんなあの朝ミーティングの教育官が持っていたような豪華な杖を構えている。いかにも立派な魔法使いっぽい。一方私は公園に落ちていそうな棒切れを持っている。チャンバラごっこに燃える小学生みたいだ。みじめさを通り越して滑稽に感じてきた。
「さて各自私から見て右の人から『ファイヤー』を唱えて上空に打ち出してみてください。さあいきますよ!」
「一番、ファイヤー!」
いちばん右端の男子が呪文を唱えた。赤い球が杖から出たと思いきや、勢いよく上空へ赤い光線が飛び出た。さすが熱エネルギーの塊。熱風がすごい。
「はいお見事!どんどん行っちゃって下さい!!」
「二番、ファイヤー!」
「三番、ファイヤー!!」
「四番、ファイヤー!!!」
「はいはい!いいですね。いいですね。この調子です。次々行きましょう!」
「五番、ファイヤー!」
「六番、ファイヤー!」
もうすぐ僕の番だ。ぎゅっと頼りない杖を握りしめる。気合を入れる。
「七番、ファイヤー!!」
「八番、ファイヤー!!」
「九番、ファイヤァァァァァァーーーー・・・・・・って何!?」
そう言った瞬間、八番が放ったファイヤーが自分にめがけて飛んできたのだった。
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