war of the ボッチ~ボッチでもラブコメできますか?~

前田 隆裕

文字の大きさ
上 下
20 / 70
2章

③講義(1)

しおりを挟む
 初回講義はアイスブレーキングで終始し、本格的な講義は今日から始まった。初回講義と同様M201教室、マミ教育官、一番前の私の定席である。できるだけ環境を一定にしてイレギュラーを排することが心の平穏につながる。

「さてさて、皆さん毎度おなじみマミ教育官です!今日から本格的な魔法の授業に入っていきたいと思います。テキスト一頁を開いて―」

 一斉にテキストのパラパラ、ごそごそという音をたてているのが後ろから聞こえてくる。憧れの魔法が使えるのだ。誰だって心が躍る。今までの学校ではまず言うことを聞かない輩がいたからこれは大違いだ。



「朝ミーティングでもお話しした通り、魔法とはエネルギーを凝縮、放出する技術の事です。そしてエネルギーの種類ごとに魔法にも種類があります。まずは『ファイヤー』です。これは熱エネルギーを凝縮したものです。これはネーミングからなんとなくわかりますよね。一番基本で威力は高いです。次に『ウィンド』です。運動エネルギーを凝縮したものです。ウィンドつまり風が吹くと風車がまわったり、物が飛んで行ったりします。これがネーミングの由来です。威力はファイヤーに比べて弱いですが相手を吹っ飛ばせることができます。そして『ウォーター』は位置エネルギーを凝縮したものです。覚え方は、ウォーターつまり水は上流から下流へ流れます。高いところから低いところというのがミソで、これがネーミングの由来です。威力はウィンドと同じくらいですが物体を上下運動させることができます。『シャイン』は光エネルギーです。これはわかりやすいですね。ほかにもまだまだありますよ。」



 おいおい、もっとファンタジーな講義かと思いきやまるっきり物理の授業じゃないか。



「おおっと皆さん、物理の授業だとか思ってないですよね?これは物理の用語が出てきてるだけで実は似て非なるもの!物理学ではなく、『魔法学』ですよ」


 なんか余計にわかりにくくなったな。みんな大丈夫なのかと後ろを見ると頭を抱えている人がちらほらいる。おそらく文系の学生か社会人になって学問なんてご無沙汰なんて者だろう。自分は文系だったが理系科目も好きで個人的に勉強していた甲斐もあって、~エネルギーなどと言われても抵抗がない。物理学だろうが魔法学だろうが勉強さえできれば何とかやっていけそうで安心した。

「みなさん、頭抱えていますね。でも大丈夫。こんな理論っぽいの覚えなくても、なんとなく、でいいから。ウォーターは上下、ウィンドは横ぐらいの理解でオッケー!基本は実技練習です。あっそうそう、もうみんな知ってるだろうけど来週までに男女ペアを作っておいてね。来週、今手元にあるこの紙にペアを書いて提出してもらいます。これから三か月間実技演習でいっしょになるからよく選びましょう。くれぐれもペアなしなんてことはないように!わかりましたか?」

「わかりました」

「元気がないですね!もう一度!」

「わかりました!!」


 この人、これ好きだな。またしても小学生かっ!と突っ込みたくなる。そして相変わらずマミ教育官は満足げにうなずいている。

 しかも何?ペア作れ!なんて初めて聞いたぞ。後ろの様子だとみんなもう知ってるみたいだけど。ボッチの情報不足力も大したものだ。それにしてもやはりここはペアばかり組まそうとする。ボッチに対するいじめか何かか。全く、毎回居心地の悪い気分にさせてくれる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

処理中です...