war of the ボッチ~ボッチでもラブコメできますか?~

前田 隆裕

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2章

②初回講義(閑話休題その1)

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 私、マユリは友達に囲まれてにぎやかな生活を送ってきた。この白の軍の研修所に来た時は驚いたし怖かったけど、すぐに友達ができてなんとかここまでやってこれた。

 みんなからは少し天然と言われるけど、仲良くしてくれるし、なによりわいわいするのが楽しかった。でも本当にみんなが楽しんでくれているのかが不安になる時がある。女子は本音を隠してしまうもの。「猫かぶる」なんて言葉があるくらいなのだから。私だってこうしてみんなと関係を維持するために我慢だってするときがある。でもそれが疲れて全部嫌になってしまうことがある。全部捨てて自由になりたいと思うことがある。でも私にはそれができない。私はバカだから一人では生きていけないだろうし、何よりこの国のボッチへの厳しい目にも耐えられない。

 そんなこんなで、研修所に来てからもズルズルと今までのように過ごしていくのかと思っていた。しかし初めての講義で私と対照的な生き方をしている人を見かけてはっとなった。少し気になった。彼は一番前の席に一人座り、何やら書き物?いや読み物に集中している。一方私は新しくできた三人の友達と一緒に、後ろの席に座ってたわいもない話をしていた。

 ひとつ前の男子のグループからこんな声が聞こえてくる。
「あの一番前に座っている子達、さびしすぎるでしょ」
「本当だ。あいつら恋人どころか友達すらいないんだろうな。あーかわいそう。おまえ友達になってやりなよ」
「むりむり。あんなやつら絶対つまらないって。どーせ超がつくほどまじめな奴らだろうし。ってかここにいるってことは一次試験合格してるんだから、一人ぐらい友達いるんじゃないの?」
「まさか~。あの様子だといないっぽいけど。あり得ないけど、もしかして一人でクリアしちゃったとか?」
「ないない。だとしても相当寂しいやつ」
「ほんとほんと」

 しばらく男子の会話の方に耳を傾けていた。そして腹が立ってきた。ボッチの何が悪い。どうして一人で頑張っている人をけなすの?友達がいるからなんだ。「自分はみんなから好かれています。性格がいいですよ」アピールか。性格なんていくらでも猫かぶれる。

「マユリ?ちょっとどうしたの?珍しく怒ってる?」
「いや、なんでもないよ。それで何の話してたっけ?」
「だ~か~ら~、来週の魔法ペア練習だよ。そこで決めた男女ペアがこの研修中ずっと練習相手になるんだから慎重に決めないと。マユリはペアもう決めた?」
「あっ!マユリ、この間の飲み会でいい感じだった男子いたじゃん。あの子にすれば?」
「うーん、もうちょっとよく考える」
「だめだぞ。もっとがっといかなきゃ。がっと。最近の男子は草食だから」
「いや~でも女子としましても、言い寄られたい!ってときもあるんだけどな」
「男子に物申したい!もう少し乙女心を知れ!!と」
「それな!」

 女子の声が見事に被って、笑った。一方その会話が聞こえてしまった男子たちは縮こまっていたのが余計に面白かった。
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