war of the ボッチ~ボッチでもラブコメできますか?~

前田 隆裕

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2章

②初回講義(6)

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「・・・・・・」
「な、に、読んでるの?」
 来た。いわゆる「やさしい」子だ。ボッチ=かわいそうな子として助けてあげようとする、これまでも何回も見てきた人種だ。でその声掛けが余計にボッチを傷付けていることに気付いていない。お互いの労力の無駄遣いを避けるために、早急にお引き取り願おう。

「えっ!?急に何?びっくりしました」
「いや~なんかむっちゃ集中してたから、よっぽどすごい自己紹介作ってるのかなぁと思って。それにまだ私は自己紹介シートが埋まってないから。ああ、私マユリ、好きなことはみんなを喜ばせること!私は勉強とか運動とか、ずば抜けて得意なものはないけど何でもがむしゃらに頑張ります。ぜひともだ・・・・・・」
「気を使ってくれてありがとうございます。自分のはまだ書ききれてないから、あっ、ほら、あそこに次の自己紹介相手を探している人がいますよ。あっちにも行ってやってください」
 
 話をかぶせるようにこっちから話を切り出す。私から注意をそらそう。お互いのみのためにもそれが肝要だ。
「あっ、本当だ、行ってくる・・・・・・じゃなくて!最後まで私の自己紹介も聞いて!しかもまだ名前すら聞いてない!」
「僕はタカヒロです。以上です」
「ふむ・・・・・・ってもう終わり!?今まで私が聞いてきた中で最短の自己紹介じゃん」
「それは良かった。今までで最高にインパクトがあったでしょう」
「・・・・・・?言われてみればそんな気がする。じゃあ自己紹介としてはいいのかな?まあいいや。私の事、ちゃんと自己紹介シートに書いといてね。私のもタカ君のことちゃんと書いておくから」

 そういうとマユリはまた自己紹介相手を探しに行った。自分の分もちゃんと書いておくとか言ってたけど、名前一言でどうやって書くんだろう。あれ、なんかまた戻ってきた。

「タカ君~。今考えたら、なんもタカ君の事なにもかけなかった。もっと何か教えてよ~」

 どうも憎めない子だが、家に突然訪問してくるセールスマンのようで正直面倒だ。早急にお引き取り願いたい。

「よーし、わかった。とりあえず埋めればええんやろ。仕事柄、書類づくりはお手の物やから。言ったとおりに書いてくれる?OK?」
「よくわからないけどOK?」
「それじゃあいくからね。『名:タカヒロ。第一印象は最悪で、その上自虐的な性格。気持ち悪い。一人が好きでいつもボッチである。このような人には二度と近寄りたくないとここに誓います。マユリ。』これでばっちりや」
「えっと、~~ここに誓います、マユリっと。よしかけたよ!ばっちり」
「ついでに印鑑押すともっとばっちりや!」
「印鑑、印鑑、いんか・・・・・・んって何をさせるの!?しかも何を書かせてるの!?」
「印鑑は冗談冗談。さてそれだして終了や。ボールペンで書いてるから消すのも面倒やろう。自己紹介ぐらい大した成績にもならないだろうし。はよ行ってこい。授業おわるで。さよならや」
「えーー。まあいいや。ついでにタカ君の自己紹介シートも教育官に出しておくから、くれる?」
「そりゃ助かる。ありがとう。ほらこれや。ほな僕は先に帰ってるから、あとお願いできる?」
「まかせといてー!またねー!!」

 またねって、また来るのかよ。まあいいや自己紹介シートにあそこまで書かせたんだから。もしものことがあっても大丈夫だろう。にしてもえらい変わった子やったな。あれ?方言でてたか?

 終業のベルが鳴った。あっお昼だお昼だ。食堂行こう。なんか疲れたから今日はお蕎麦大盛だ!
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