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2章
②初回講義(3)
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しぶしぶそこへ座る。長机にM-1という立札が立ってあった。漫才でもやるのか。しばらくするとほかの研修生も徐々に食堂に集まり、私の席の周りもすべて埋まった。
「君、君、何て名前?俺はエイジっていうんだけど」
朝食をひたすら食べていた私は声をかけられて驚く。声をかけられたぐらいで驚くのだから余程一人生活が染みついていたのだろう。しかも一瞬「君ってだれ?誰かが呼んでるぞ。早く返事してあげて。」と思ったぐらいだ。それでも誰も答えないので視線をご飯から声のする方へ向けてみると、目がかち合う。もしかして私か。
「タカヒロです」
「この返答までのレスポンスタイムは何w?しかも丁寧語。別にため口でいいよ。年同じくらい?いや少し年下かも?だろうけど気にしないから。因みに俺は二十三歳。」
「私も二十三で新卒社会人なんですよ。一応公務員やってます」
「まさにイメージ通り。見るからにお堅そうな雰囲気出てるし。俺は公務員試験がいやで民間にしたわ。タカヒロはよく・・・。なんか「タカヒロ」は言いづらいな。なんてよべばいい?」
エイジは両手の人差し指と親指で長方形のフレームを作り私をその中に収めている。呼び方なんてどうせ一時の付き合いだから何でもいいのだが。
「それでは、「たかぴー」で」
「なにそれ。まあいいや。たかぴー、これから何があるかわからんけど、とりあえずよろしく!」
「こちらこそよろしくお願いします」
「結局丁寧語だなw。それじゃとりあえずまた後でなー」
そういうとエイジは席を立って他の子にも向かった。人当たりのいい人だ。さぞ友達もたくさんいるのだろう。私なんかとは相性が合わない。いや彼なら誰とでも相性なんか合わせられるだろう。今の日本なら彼にとって非常に生きやすいに違いない。
「は~い、みなさんおはようございます。九時になりました。朝のミーティングを始めま~す。席についてください」
突然のアナウンスに研修生の視線が声のする方へ向けられる。すると白いスーツを少し気崩した明るい茶髪の女性が
ベルをカランカランと鳴らしながらステージに上がっていた。昨晩支給品のアナウンスをしていた人だ。彼女はステージのわきの机に座りマイクを構えている。
人を見かけで判断してはいけないが、どうしてもこういった感じの人にたいして私は怖い印象を受ける。これまでの経験上、こういうタイプの人は「うざい」「きもい」「ださい」の三連攻撃をずけずけと打ってくる。そしてボッチの私などはその三連攻撃の格好の的だ。くわばらくわばら。
そしてステージの中央には白スーツのスラッとした女性が立っていた。アナウンサーとは対照的に白スーツをピシッと着こなし長い黒髪だ。さらに白スーツの上から白衣をまとっているので、まるで理科の先生ようだ。また杖や剣も持っておらず、代わりに白いスーツの胸ポケットには赤黒青の三本のボールペンやら鉛筆やらがごたごたと入っている。こちらはこちらで近寄りがたい雰囲気だ。
「さっそくだが、私は白の軍の事務官長をしてる、サキだ。今回人数が増えすぎたので、さすがの私も一人では処理しきれなくなる。この中から何人かが研修終了後事務官となるので、その時は宜しくたのむ。あと、いくつかの講義も受け持っているのでこの中のどなたかにはまた会うことになると思う。以上私からの連絡終わり」
事務官長は言いたいことだけ話し終わるとさっさと部屋を出ていった。事務官というときびきびして厳しそうな人をイメージしていたがまさにその通りだった。自分の事を「さすがの私」というあたり有能さには自信があるのだろう。それにどことなく壁を作っている気がする。白の軍の雰囲気には似合わない感じだ。まあ出世しているんだから一応周りからも何らかの形で認められているに違いない。
「は~いありがとうございました。お次は剣の教育官からのお話で~す」
「君、君、何て名前?俺はエイジっていうんだけど」
朝食をひたすら食べていた私は声をかけられて驚く。声をかけられたぐらいで驚くのだから余程一人生活が染みついていたのだろう。しかも一瞬「君ってだれ?誰かが呼んでるぞ。早く返事してあげて。」と思ったぐらいだ。それでも誰も答えないので視線をご飯から声のする方へ向けてみると、目がかち合う。もしかして私か。
「タカヒロです」
「この返答までのレスポンスタイムは何w?しかも丁寧語。別にため口でいいよ。年同じくらい?いや少し年下かも?だろうけど気にしないから。因みに俺は二十三歳。」
「私も二十三で新卒社会人なんですよ。一応公務員やってます」
「まさにイメージ通り。見るからにお堅そうな雰囲気出てるし。俺は公務員試験がいやで民間にしたわ。タカヒロはよく・・・。なんか「タカヒロ」は言いづらいな。なんてよべばいい?」
エイジは両手の人差し指と親指で長方形のフレームを作り私をその中に収めている。呼び方なんてどうせ一時の付き合いだから何でもいいのだが。
「それでは、「たかぴー」で」
「なにそれ。まあいいや。たかぴー、これから何があるかわからんけど、とりあえずよろしく!」
「こちらこそよろしくお願いします」
「結局丁寧語だなw。それじゃとりあえずまた後でなー」
そういうとエイジは席を立って他の子にも向かった。人当たりのいい人だ。さぞ友達もたくさんいるのだろう。私なんかとは相性が合わない。いや彼なら誰とでも相性なんか合わせられるだろう。今の日本なら彼にとって非常に生きやすいに違いない。
「は~い、みなさんおはようございます。九時になりました。朝のミーティングを始めま~す。席についてください」
突然のアナウンスに研修生の視線が声のする方へ向けられる。すると白いスーツを少し気崩した明るい茶髪の女性が
ベルをカランカランと鳴らしながらステージに上がっていた。昨晩支給品のアナウンスをしていた人だ。彼女はステージのわきの机に座りマイクを構えている。
人を見かけで判断してはいけないが、どうしてもこういった感じの人にたいして私は怖い印象を受ける。これまでの経験上、こういうタイプの人は「うざい」「きもい」「ださい」の三連攻撃をずけずけと打ってくる。そしてボッチの私などはその三連攻撃の格好の的だ。くわばらくわばら。
そしてステージの中央には白スーツのスラッとした女性が立っていた。アナウンサーとは対照的に白スーツをピシッと着こなし長い黒髪だ。さらに白スーツの上から白衣をまとっているので、まるで理科の先生ようだ。また杖や剣も持っておらず、代わりに白いスーツの胸ポケットには赤黒青の三本のボールペンやら鉛筆やらがごたごたと入っている。こちらはこちらで近寄りがたい雰囲気だ。
「さっそくだが、私は白の軍の事務官長をしてる、サキだ。今回人数が増えすぎたので、さすがの私も一人では処理しきれなくなる。この中から何人かが研修終了後事務官となるので、その時は宜しくたのむ。あと、いくつかの講義も受け持っているのでこの中のどなたかにはまた会うことになると思う。以上私からの連絡終わり」
事務官長は言いたいことだけ話し終わるとさっさと部屋を出ていった。事務官というときびきびして厳しそうな人をイメージしていたがまさにその通りだった。自分の事を「さすがの私」というあたり有能さには自信があるのだろう。それにどことなく壁を作っている気がする。白の軍の雰囲気には似合わない感じだ。まあ出世しているんだから一応周りからも何らかの形で認められているに違いない。
「は~いありがとうございました。お次は剣の教育官からのお話で~す」
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