war of the ボッチ~ボッチでもラブコメできますか?~

前田 隆裕

文字の大きさ
上 下
13 / 70
2章

②初回講義(2)

しおりを挟む
 そうこうしているうちに食堂についた。非常に広い部屋で、長い長方形の机が何列にも並んでいる。天井からは花の紋章がついた白い旗が垂れ下がっている。また最奥は数段高くなっており、ステージがある。白と金を基調としていて、厳かな雰囲気を漂わせている。高校や大学の学食とは格が違う。ちょっとしたおしゃれなレストラン風の食堂だ。まだ人数はまばらだった。カウンターの方へ向かうと和食か洋食かと聞かれ和食を選ぶと食券を渡された。昼も夜もこの食堂で食事が出るそうだ。三食寝床付き、あれ?案外悪くない。

 食事を受け取るとすぐさま食堂の端の端を陣取る。飲み会などに(無理やり)参加させられる時もできるだけ目立たない端っこで黙々と食事をとってきた。

 飲み会とは「ワイワイ会話するもの」ではなく私にとっては単なる「栄養補給」である。なぜあんな苦行に数千円も払うのかさっぱりわからない。飲み会一回の代金で一週間は暮らせる。食事ぐらい一人で食べたい。いや食事どころかすべての面で一人で生きたい。

 さあ食べるか、と箸をとった瞬間後ろから声がかかった。
 「お兄ちゃん、ちょっといいかい?」
 食堂につきものの白の割烹着おばちゃんだ。
 「はいなんでしょう」
 「今日だけは席が決まってるんだよ。すまないけどあそこで席を確認してからすわってもらえるかなぁ」
そういって指さされた方を見ると何やら番号札をとっていってる。銀行の受付のようだ。
 「わかりました。ありがとうございます」
 「ええよええよ、それにしてもかわいい子が来たね」
 「はぁそうですかね」
 「見たとこあんた若いねぇ。高校生かい?まだまだこれからだ。まあがんばりな」
 「はいっ」

 おばちゃんは私の背中をバシッとたたいて、厨房に戻っていった。私も年を間違えられるのは慣れているのでどうでもいい時はうんうんうなずいておく。どうせ作ってもらって食べるだけの関係だ。
 まあでも仕事の上司は別としてなぜかお年寄りには好かれる。私も同世代の人と相手にするよりずっと気が楽だ。少子高齢化が完全に進んだ地元での生活が長かったからだろうか、不思議だ。

 番号札をとる。そして席を見ると、ど真ん中であった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

主役の聖女は死にました

F.conoe
ファンタジー
聖女と一緒に召喚された私。私は聖女じゃないのに、聖女とされた。

処理中です...