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2章
①研修オリエンテーション(2)
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「パパパパーン、パパパパーン」
結婚式で流れるあの盛大なラッパの音とともに白いマントを羽織った男が現れた。宗教のトップが持っていそうな豪華な装飾の杖を持っている。曲はさらに壮大かつリズミカルなものへと変わっていき重低音が効いている。訳も分からない状態なのにもかかわらず気持ちが高ぶってくる。男の方をよく見ると、フードを深々とかぶっており顔がよくわからない。五十代以上はあるだろう。男からは貫禄というか威厳というかそういう何か偉さのようなものを感じた。さらにその男の左側には五色の剣を垂直に立てている五人の兵士が、右側には五色の杖を垂直に立てている兵士が並んでいた。全員白のローブやマントを身につけている。
曲がやむと、渋く重々しい声が響き渡った。
「皆の衆、よくここまでたどり着いた。いろいろ疑問点があると思うが、まずは君たちの一次
試験の突破を祝福しよう!」
あたりがざわめく。一次試験ってなんだ。あのわけもわからない「何か」に襲われるのが試験っていうのか。
「静粛に、静粛に。君らはよくわからないまま、よくわからないものに襲われただろう。あれ
は地球に突如湧いたモンスターだ。一次試験はあいつらを倒すことが合否要件だ。一次試験
のモンスターは雑魚モンスターだが一人では倒せない。しかし君たちが目覚めて、一緒に戦
う友がいればウェポンが手に入り容易に倒せる。逆に友がいない者はなすすべなく今頃モン
スターにやられて、この世にはいないだろう」
ちょっと待て。なんだウェポンて。僕の周りには誰もいなかったぞ。しかも一人でもモンスターを倒した・・・・・・というより自爆してくれたおかげで今生きてるぞ。と心の中で疑念を持ちながら聞いていた。
「あのようなモンスターが現れ、その対策を取るべく我々は国から防衛を任された」
すると集団の中から誰かが声をあげた。
「自衛隊はどうしたんだよ。アメリカ軍は?ロシアや中国軍は何してるんだよ。なんで俺らが
急に」
「良い質問だ。だが答えは悪い。各国の軍隊はモンスターの拠点を次々と攻略し善戦した。し
かし圧倒的物量で来られると次第に疲弊し始めた。それぞれの首脳は早期決戦を図り、全国
家総連合軍を結成しモンスターの本部陥落作戦を実行した」
ゴクリッと固唾をのむ音が聞こえる気がする。まるでアメリカ映画のワンシーンじゃないか。
「そして何とも言えない結果となった。敵の本拠地は陥落、ボスモンスターを撃破した!」
おおっと歓声が上がる。さすがとしか言いようがない。以前一般公開されていた戦闘機や護衛艦、戦車を見に行った時、その造形には感嘆したが実力も本物だったのか。
「ここからが重要だ、よく聞きたまえ。そのあと、ボスモンスターの最後の咆哮で全国家総連
合軍は全滅、それどころかボスモンスター消滅時の消滅波によって多くの人類が消滅した。
世界が滅ぶのは一瞬だった。生き残ったのは我々と深層世界に移動させた一陣の者、二陣の
者、三陣の者そして今回一次試験を受けてもらった第四陣の若い世代の君たちだけだ。一次
試験をクリアした君たちは一応この世界で生きていける可能性があると認めよう。われわれ
は三か月間そんな君らを鍛え、可能性ではなく生き抜く確かな力を授けよう。」
皆が先ほどの歓声がなかったかのように一斉に黙った。
モンスター襲来、人類消滅、唯一の生き残り、深層世界、話の要素がどれも突飛な内容すぎる。通常ならいきなり言われて、はいそうですかと納得できるわけがない。
ただついさっき襲われた「何か」があの男の言うモンスターと仮定するならば、もう目をそらすことはできない。あの時の腰の痛みがより話の真実味を増していた。そういえば今になって気づいたが、痛みやあざもなくなっている。というよりも疲労感のほうが大きい。周りも重傷を負っているような人は誰一人いない。みんな楽勝だったのか?不思議だ。
「指揮官を失ったモンスターたちは今や行動は予測不能で、地球上を自由に闊歩している。諸
君にはモンスターへの対抗手段として各種装備を支給する。三か月間きっちり研修を受けて
現実世界に戻り、我々の地球を取り戻してほしい。われわれは白の軍!皆を歓迎する!」
結婚式で流れるあの盛大なラッパの音とともに白いマントを羽織った男が現れた。宗教のトップが持っていそうな豪華な装飾の杖を持っている。曲はさらに壮大かつリズミカルなものへと変わっていき重低音が効いている。訳も分からない状態なのにもかかわらず気持ちが高ぶってくる。男の方をよく見ると、フードを深々とかぶっており顔がよくわからない。五十代以上はあるだろう。男からは貫禄というか威厳というかそういう何か偉さのようなものを感じた。さらにその男の左側には五色の剣を垂直に立てている五人の兵士が、右側には五色の杖を垂直に立てている兵士が並んでいた。全員白のローブやマントを身につけている。
曲がやむと、渋く重々しい声が響き渡った。
「皆の衆、よくここまでたどり着いた。いろいろ疑問点があると思うが、まずは君たちの一次
試験の突破を祝福しよう!」
あたりがざわめく。一次試験ってなんだ。あのわけもわからない「何か」に襲われるのが試験っていうのか。
「静粛に、静粛に。君らはよくわからないまま、よくわからないものに襲われただろう。あれ
は地球に突如湧いたモンスターだ。一次試験はあいつらを倒すことが合否要件だ。一次試験
のモンスターは雑魚モンスターだが一人では倒せない。しかし君たちが目覚めて、一緒に戦
う友がいればウェポンが手に入り容易に倒せる。逆に友がいない者はなすすべなく今頃モン
スターにやられて、この世にはいないだろう」
ちょっと待て。なんだウェポンて。僕の周りには誰もいなかったぞ。しかも一人でもモンスターを倒した・・・・・・というより自爆してくれたおかげで今生きてるぞ。と心の中で疑念を持ちながら聞いていた。
「あのようなモンスターが現れ、その対策を取るべく我々は国から防衛を任された」
すると集団の中から誰かが声をあげた。
「自衛隊はどうしたんだよ。アメリカ軍は?ロシアや中国軍は何してるんだよ。なんで俺らが
急に」
「良い質問だ。だが答えは悪い。各国の軍隊はモンスターの拠点を次々と攻略し善戦した。し
かし圧倒的物量で来られると次第に疲弊し始めた。それぞれの首脳は早期決戦を図り、全国
家総連合軍を結成しモンスターの本部陥落作戦を実行した」
ゴクリッと固唾をのむ音が聞こえる気がする。まるでアメリカ映画のワンシーンじゃないか。
「そして何とも言えない結果となった。敵の本拠地は陥落、ボスモンスターを撃破した!」
おおっと歓声が上がる。さすがとしか言いようがない。以前一般公開されていた戦闘機や護衛艦、戦車を見に行った時、その造形には感嘆したが実力も本物だったのか。
「ここからが重要だ、よく聞きたまえ。そのあと、ボスモンスターの最後の咆哮で全国家総連
合軍は全滅、それどころかボスモンスター消滅時の消滅波によって多くの人類が消滅した。
世界が滅ぶのは一瞬だった。生き残ったのは我々と深層世界に移動させた一陣の者、二陣の
者、三陣の者そして今回一次試験を受けてもらった第四陣の若い世代の君たちだけだ。一次
試験をクリアした君たちは一応この世界で生きていける可能性があると認めよう。われわれ
は三か月間そんな君らを鍛え、可能性ではなく生き抜く確かな力を授けよう。」
皆が先ほどの歓声がなかったかのように一斉に黙った。
モンスター襲来、人類消滅、唯一の生き残り、深層世界、話の要素がどれも突飛な内容すぎる。通常ならいきなり言われて、はいそうですかと納得できるわけがない。
ただついさっき襲われた「何か」があの男の言うモンスターと仮定するならば、もう目をそらすことはできない。あの時の腰の痛みがより話の真実味を増していた。そういえば今になって気づいたが、痛みやあざもなくなっている。というよりも疲労感のほうが大きい。周りも重傷を負っているような人は誰一人いない。みんな楽勝だったのか?不思議だ。
「指揮官を失ったモンスターたちは今や行動は予測不能で、地球上を自由に闊歩している。諸
君にはモンスターへの対抗手段として各種装備を支給する。三か月間きっちり研修を受けて
現実世界に戻り、我々の地球を取り戻してほしい。われわれは白の軍!皆を歓迎する!」
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