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~エピローグ~ 魔王の胎動
『最悪』は重ねて来る
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「さあ、傷は癒えたでございましょう。お目覚めなさいませ。災禍の送り主、肥河之大神…………又の名を、八岐大蛇よ……!!!」
女の全身がいっそう強い光を帯びると、凄まじい風が吹き荒れた。黒い雲はますます色濃く、もはや漆黒の暴風である。
そして南東の空から、無数の光が押し寄せてくる。
青紫に輝く光は、甲高い音を立てて湖面に殺到。魔王の体に吸い込まれていった。
あたかも豪雨のように、滝のように……京都の地下水に溶かされ、溜め込まれていた生贄達の生気は、今、魔王の体の糧となるのだ。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
そして大地が大きく震えた。
湖面に佇む黒き邪神が、ゆっくりとその体をもたげたのだ。
巨体……あまりにも巨大……!
胴から伸びる8本の尾は、彼方の谷まで届くかのようだ。
首は今は1つのみだが、大蛇と言うより龍のごとき様相で、赤い目が酸漿のように輝いていた。
腹は鉄錆を思わせる、赤い色水を滴らせていた。負傷の割に湖面が赤かったのは、この腹の色水が故か。
やがて魔王の直上から、更なる暗雲が湧き上がってきた。神話に記された天叢雲……大蛇の居場所に生じるとされた暗雲である。
先遣隊は怯え、攻撃を開始する。もはや指揮系統も何もなかった。ただ目の前の魔王に本能的な恐怖を感じ、引き金を引くしかなかったのだ。
魔王は鎌首をもたげ、口元に微かな炎をのぞかせた。本当に、ごく僅かな炎だったが、次の瞬間。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
超高温の火柱が吐き出され、先遣隊の半数以上がなぎ払われていたのだ。属性添加機で防御された車両も重機も、跡形も無く溶かされている。
最早パニック状態に陥る部隊だったが、絶望はまだ終わらない。
湖面に巣食う大邪神は、不意に光に包まれた。そのままゆっくりと姿を縮めていく。
弱ったのか? やはり滅びる運命なのか?
……いいや、そうではない。そうでない事を、魂レベルで分からされていた。
圧縮されて強くなるのだ。どんどん強く、どんどん色濃く。
次第に人型に近くなる魔王は、身の丈100メートル程になった。
全身を覆う鎧のような黒い外皮は、あちこち鋭い棘を有する。
長い黒髪が腰まで垂れ、顔は女のそれのようであるが、目は燃えるように輝いた。
牙の生えた顎を広げ、魔王は大きく雄叫びを上げる。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
激しい稲妻が辺りを撃ちつけ、人々は後ずさる。
魔王を覆う、多重に絡み合う電磁バリアは、特に攻撃を受けていなくても肉眼で見えるほど色濃い。
膨大なエネルギーがバリア表面を駆け巡り、人の武器でこれを射抜く事が出来ないのは明白だった。
まぎれも無く、これが魔王ディアヌスの……本体による戦闘形態。
あの永津彦と切り結び、誠や明日馬達を蹴散らした、無敵の邪神の姿であった。
「決着の時だ、人間ども!!!!!!!」
魔王が咆えると、あの女はおかしそうに笑った。
主の力に呼応するように、女の胸に青紫の光が宿り、燃えるように全身を覆うのだ。
間違いなくこの女は、ディアヌスの魂と契約している。だとすれば、もう以前のように崩壊する事はありえない。
最強の魔王と、その力を受けた最凶の神人。
誠は改めて思い知った。
『最悪』は重ねて来るのだ。
※※第3章の日本海編はここまでです。お読みいただきありがとうございました。
次章はいよいよ魔王ディアヌスとの決戦になります。
一つ一つが長いため、次章も別ブックにて再開する予定です。
どうぞよろしくお願いします。
女の全身がいっそう強い光を帯びると、凄まじい風が吹き荒れた。黒い雲はますます色濃く、もはや漆黒の暴風である。
そして南東の空から、無数の光が押し寄せてくる。
青紫に輝く光は、甲高い音を立てて湖面に殺到。魔王の体に吸い込まれていった。
あたかも豪雨のように、滝のように……京都の地下水に溶かされ、溜め込まれていた生贄達の生気は、今、魔王の体の糧となるのだ。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
そして大地が大きく震えた。
湖面に佇む黒き邪神が、ゆっくりとその体をもたげたのだ。
巨体……あまりにも巨大……!
胴から伸びる8本の尾は、彼方の谷まで届くかのようだ。
首は今は1つのみだが、大蛇と言うより龍のごとき様相で、赤い目が酸漿のように輝いていた。
腹は鉄錆を思わせる、赤い色水を滴らせていた。負傷の割に湖面が赤かったのは、この腹の色水が故か。
やがて魔王の直上から、更なる暗雲が湧き上がってきた。神話に記された天叢雲……大蛇の居場所に生じるとされた暗雲である。
先遣隊は怯え、攻撃を開始する。もはや指揮系統も何もなかった。ただ目の前の魔王に本能的な恐怖を感じ、引き金を引くしかなかったのだ。
魔王は鎌首をもたげ、口元に微かな炎をのぞかせた。本当に、ごく僅かな炎だったが、次の瞬間。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
超高温の火柱が吐き出され、先遣隊の半数以上がなぎ払われていたのだ。属性添加機で防御された車両も重機も、跡形も無く溶かされている。
最早パニック状態に陥る部隊だったが、絶望はまだ終わらない。
湖面に巣食う大邪神は、不意に光に包まれた。そのままゆっくりと姿を縮めていく。
弱ったのか? やはり滅びる運命なのか?
……いいや、そうではない。そうでない事を、魂レベルで分からされていた。
圧縮されて強くなるのだ。どんどん強く、どんどん色濃く。
次第に人型に近くなる魔王は、身の丈100メートル程になった。
全身を覆う鎧のような黒い外皮は、あちこち鋭い棘を有する。
長い黒髪が腰まで垂れ、顔は女のそれのようであるが、目は燃えるように輝いた。
牙の生えた顎を広げ、魔王は大きく雄叫びを上げる。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
激しい稲妻が辺りを撃ちつけ、人々は後ずさる。
魔王を覆う、多重に絡み合う電磁バリアは、特に攻撃を受けていなくても肉眼で見えるほど色濃い。
膨大なエネルギーがバリア表面を駆け巡り、人の武器でこれを射抜く事が出来ないのは明白だった。
まぎれも無く、これが魔王ディアヌスの……本体による戦闘形態。
あの永津彦と切り結び、誠や明日馬達を蹴散らした、無敵の邪神の姿であった。
「決着の時だ、人間ども!!!!!!!」
魔王が咆えると、あの女はおかしそうに笑った。
主の力に呼応するように、女の胸に青紫の光が宿り、燃えるように全身を覆うのだ。
間違いなくこの女は、ディアヌスの魂と契約している。だとすれば、もう以前のように崩壊する事はありえない。
最強の魔王と、その力を受けた最凶の神人。
誠は改めて思い知った。
『最悪』は重ねて来るのだ。
※※第3章の日本海編はここまでです。お読みいただきありがとうございました。
次章はいよいよ魔王ディアヌスとの決戦になります。
一つ一つが長いため、次章も別ブックにて再開する予定です。
どうぞよろしくお願いします。
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