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第三章その6 ~みんな仲良く!~ ドタバタの調印式編
約束の手形
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一瞬、誠は言葉を失った。
今まで暴れ回っていた餓霊が、そして邪霊達が動きを止め、もがき苦しんで消えていく。
「……鬱陶しい。何から何まで気に障る」
天音は腹立たしげに呟いた。配下の餓霊が消えたというのに、まるで怯んだ様子も無い。
「だがこれしきで勝ったと思うな……!」
白い手を掲げ、再び何かの術を発しようとするのだが、その術は途中で光を失う。後で知ったのだが、鶴が霊力で干渉し、術の発動を邪魔したのである。
「そうはいかないわ。この鶴ちゃんを甘く見てはいけないのよ」
鶴が調子よく言い放つ。
「最初は戸惑ったけど、もうあなたの技も分かったもの。黒鷹達の鎧を弱らせた術も、次は私が防ぐから」
「……未熟者め。それしきで技術の深淵を覗いたつもりか?」
だが天音がそこまで言った時、ふいに彼女の身に異変が起きた。
微かな電流が、ぱちぱちと音を立てて総身に走ると、指先が溶け崩れ始めたのだ。
「……あら……?」
天音は不思議そうに自らの手を見つめた。
そして彼女の傍らに、黒衣の女が現れた。あの境港で出会った市民団体の代表であり、誠達と戦わずして逃げた人物である。
女は少し忌々しそうに天音に告げた。
「し損じれば、すぐ戻れと言ったはず。お前はまだ完全ではないのよ」
「……失礼。少々腹が立ったもので」
天音は特に頭を下げる事なく黒衣の女を眺める。言葉はともかく、内心では自分の方が上だと思っている証拠である。
女は軽く舌打ちし、腕組みして話を続けた。
「……夜祖様がお呼びです。すぐに戻りなさい」
「まあ、夜祖様が? それでは仕方ありませんね」
天音は優雅に一礼する。
やがて黒衣の女が光に包まれると、天音も同様に自らを光で覆った。
それから最後に言い放つ。
「…………それでは皆さん。この借りは、必ず」
災厄をもたらす2人の女は、瞬く間に姿を消したのだ。
「……やれやれ、とんでもない相手だったね」
ようやく緊張から解放され、コマがため息をついた。
全神連や神使達も、既に怪我の手当てを始めている。負傷者こそ多いものの、幸い命を落とした者はいないようだ。
誠も安堵するのだったが、そこで陸王と四条の操縦席隔壁が開くと、船団長2人が降りてくる。あちこち出血しているが、その表情はしっかりしていた。
嵐山は足を引きずりながら、懸命に船渡に歩み寄るのだ。
「…………」
「…………」
そのまま無言で見つめ合う2人。
てっきり感動の抱擁があるかと思う誠だったが、そこでバチーン、と小気味よい音が響き渡った。
「…………えっ???」
船渡は赤くなった頬を押さえ、呆然と嵐山を見つめる。
嵐山は泣きそうな顔で、怒ったように船渡を睨んでいた。
「バカ!」
彼女は開口一番怒鳴ったが、それだけでは終わらなかった。
「アホ! とんちき! この変態! 人類の敵! 何で今まで隠してたのよ!?」
「そ、そこまで言うか!? 大体お前だって……!」
船渡も言い返そうとするが、そこで嵐山に抱きつかれた。
反論の気勢を削がれ、船戸はどうしていいか分からないようだ。ただ固まったまま、赤い顔で頭をかいている。
もちろんそんな顔色よりも、頬の手形の方が色濃いのだったが。
コマも嬉しそうに呟いた。
「鬼の約束手形だね。きっとあの2人は幸せになれるよ」
「……それってコマ、嵐山さんが鬼嫁って事か?」
「だとしても、これからはいい鬼だよ」
誠とコマは思わず笑った。
コマは失言をフォローするように続けた。
「縁結びできなかったんじゃない。最初から1つだったんだよ、きっと」
「確かにな。ヒメ子もお疲れ……って、あれっ!?」
誠が気が付くと、鶴はもう機体を降りて歩いていた。
今まで暴れ回っていた餓霊が、そして邪霊達が動きを止め、もがき苦しんで消えていく。
「……鬱陶しい。何から何まで気に障る」
天音は腹立たしげに呟いた。配下の餓霊が消えたというのに、まるで怯んだ様子も無い。
「だがこれしきで勝ったと思うな……!」
白い手を掲げ、再び何かの術を発しようとするのだが、その術は途中で光を失う。後で知ったのだが、鶴が霊力で干渉し、術の発動を邪魔したのである。
「そうはいかないわ。この鶴ちゃんを甘く見てはいけないのよ」
鶴が調子よく言い放つ。
「最初は戸惑ったけど、もうあなたの技も分かったもの。黒鷹達の鎧を弱らせた術も、次は私が防ぐから」
「……未熟者め。それしきで技術の深淵を覗いたつもりか?」
だが天音がそこまで言った時、ふいに彼女の身に異変が起きた。
微かな電流が、ぱちぱちと音を立てて総身に走ると、指先が溶け崩れ始めたのだ。
「……あら……?」
天音は不思議そうに自らの手を見つめた。
そして彼女の傍らに、黒衣の女が現れた。あの境港で出会った市民団体の代表であり、誠達と戦わずして逃げた人物である。
女は少し忌々しそうに天音に告げた。
「し損じれば、すぐ戻れと言ったはず。お前はまだ完全ではないのよ」
「……失礼。少々腹が立ったもので」
天音は特に頭を下げる事なく黒衣の女を眺める。言葉はともかく、内心では自分の方が上だと思っている証拠である。
女は軽く舌打ちし、腕組みして話を続けた。
「……夜祖様がお呼びです。すぐに戻りなさい」
「まあ、夜祖様が? それでは仕方ありませんね」
天音は優雅に一礼する。
やがて黒衣の女が光に包まれると、天音も同様に自らを光で覆った。
それから最後に言い放つ。
「…………それでは皆さん。この借りは、必ず」
災厄をもたらす2人の女は、瞬く間に姿を消したのだ。
「……やれやれ、とんでもない相手だったね」
ようやく緊張から解放され、コマがため息をついた。
全神連や神使達も、既に怪我の手当てを始めている。負傷者こそ多いものの、幸い命を落とした者はいないようだ。
誠も安堵するのだったが、そこで陸王と四条の操縦席隔壁が開くと、船団長2人が降りてくる。あちこち出血しているが、その表情はしっかりしていた。
嵐山は足を引きずりながら、懸命に船渡に歩み寄るのだ。
「…………」
「…………」
そのまま無言で見つめ合う2人。
てっきり感動の抱擁があるかと思う誠だったが、そこでバチーン、と小気味よい音が響き渡った。
「…………えっ???」
船渡は赤くなった頬を押さえ、呆然と嵐山を見つめる。
嵐山は泣きそうな顔で、怒ったように船渡を睨んでいた。
「バカ!」
彼女は開口一番怒鳴ったが、それだけでは終わらなかった。
「アホ! とんちき! この変態! 人類の敵! 何で今まで隠してたのよ!?」
「そ、そこまで言うか!? 大体お前だって……!」
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