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第三章その5 ~どうしよう!~ 右往左往のつるちゃん編
大敗北
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突然、誠達の周囲に黒い炎が立ち昇った。あの無数の柱からだ。
先ほど聞こえた低い声……幾重にも重なる不気味な叫びが木霊すと、骸骨どもが再生していく。前より激しい炎を纏い、再びこの世に具現化していくのだ。
「嘘だろ、再生した……!?」
誠は意識を集中し、柱と骸骨を凝視する。
環境変異の影響を受け、周囲の磁場を見られるようになった誠の目には、柱から躯へ、不可思議な力の流れが起きているのが見えた。
「エネルギーが流れ込んでる……? 柱がある限り、無限に再生するって事か……!!」
誠は機体を下がらせながら、後ろの鶴に声をかけた。
「ヒメ子、柱を狙いたい。もう一回いけるか?」
「頑張るわ」
鶴は少し額に汗を滲ませながら、再び胸の前で手を合わせる。
この強い邪気の中、あれ程の力を発揮するのは、鶴と言えども激しく消耗するのだろう。
再び刃に雷が宿り、誠は機体を加速させた。躯どもを避け、黒い柱を両断していくのだ。
立て続けに十数本を切った所で振り返るが、誠は言葉を失った。
「………………っ!!?」
再び炎が立ち昇ると、今度は柱が再生していくのだ。再生した柱は前より太く、前より高く成長している。
躯はますます力に満ちて、どんどんこちらに近づいてくる。そして彼らが進む度に、地表から新たな柱が生まれていくのである。
少し目が慣れてきたのか、地下に網のようにエネルギーが張り巡らされているのが分かった。まるで竹の地下茎のように……キノコの菌糸が張り巡らされるようにだ。
「地下で繋がって、そこから上に伸びてるのか……!」
「黒鷹の言う通り、地下の網目が本体だね。神器に映らなかったんじゃない、このへん全部が反魂の術の真っ最中で、ここら一帯が敵の体に成り得るんだ」
一同はようやく気が付いたが、だからと言ってどうする事も出来ない。
必死に射撃しながら後退するが、それも全く意味を為さなかった。
「姫様、黒鷹様! 後ろはもう防衛ラインだよ!」
才次郎が悲痛な声を上げた。
「仕方ない……防衛線の守備隊に退避要請を……!」
「りょ、了解です!」
通信回線からは、後退する車両や重機の爆音が響いた。悲鳴と怒号が入り乱れ、皆混乱しきっているのだ。
やがて羽咋・七尾防衛線に辿り着いた躯どもは、次々に防壁を踏み砕いた。
退避に間に合わなかった故障車を蕨手刀で両断すると、車両は激しく爆散する。整備状態で放置された人型重機に躯が触れると、重機の人工筋肉が溶け崩れていった。まるで命を吸われたようにだ。
パイロットの湖南は、必死に横手から攻撃を加える。
「好き勝手やってくれちゃって! 全部弁償させるわよ!」
「死んでまで化けて出るなんて、粋じゃないなあ!」
才次郎も同じ対象を攻撃。更に津和野の重機も立ちはだかり、強力な結界で相手を縛る。
「人々に手出しはさせませんわ……!!!」
名うてのパイロットが3対1、しかし躯は止まらない。
そのまま強引に刃を振り回し、津和野達の機体は、まとめて建屋に叩きつけられていた。
誠は内心混乱の極みに達していた。
(このままじゃ避難区になだれ込む……! どうすりゃいいんだ……!?)
だがその時、不意に骸骨どもは動きを止めた。
まるで糸が切れたように……手にした刀を下げ、だらりとその場に立ち尽くす。そのまま少しずつ姿を薄れさせていったのだ。
ただ黒い柱だけが残され、どんどん高く成長していく。
遠間からも見えるその威容は、あたかも人が近付くのを禁じるかのように、激しい邪気を巻き上げていた。
同じ頃。
薄闇に包まれた拝殿に、1人の青年が入ってきた。すらりとした体を黒衣に包み、髪は肩に届く程だ。
あの土蜘蛛一族の青年であり、名は笹鐘。
彼はうやうやしく頭を下げ、御簾の奥の影に告げた。
「……かけまくも畏き我らが祖神よ」
「……申せ」
「黄泉の一軍、高天原の神人を破りて避難区に踏み込みました。あと一度拡大すれば、能登そのものが我らの手に」
「そうか」
影は次第に色濃くなり、やがて人の形をとった。
一見して平安時代の男性風……涼やかな美青年の面持ちであるが、その目は怪しく輝いている。
青年は……いや夜祖大神は、少し面白そうに口元を歪めた。
「……さて、いささか歯ごたえが無さ過ぎるな。高天原の神人よ、次はどう出る?」
突然、誠達の周囲に黒い炎が立ち昇った。あの無数の柱からだ。
先ほど聞こえた低い声……幾重にも重なる不気味な叫びが木霊すと、骸骨どもが再生していく。前より激しい炎を纏い、再びこの世に具現化していくのだ。
「嘘だろ、再生した……!?」
誠は意識を集中し、柱と骸骨を凝視する。
環境変異の影響を受け、周囲の磁場を見られるようになった誠の目には、柱から躯へ、不可思議な力の流れが起きているのが見えた。
「エネルギーが流れ込んでる……? 柱がある限り、無限に再生するって事か……!!」
誠は機体を下がらせながら、後ろの鶴に声をかけた。
「ヒメ子、柱を狙いたい。もう一回いけるか?」
「頑張るわ」
鶴は少し額に汗を滲ませながら、再び胸の前で手を合わせる。
この強い邪気の中、あれ程の力を発揮するのは、鶴と言えども激しく消耗するのだろう。
再び刃に雷が宿り、誠は機体を加速させた。躯どもを避け、黒い柱を両断していくのだ。
立て続けに十数本を切った所で振り返るが、誠は言葉を失った。
「………………っ!!?」
再び炎が立ち昇ると、今度は柱が再生していくのだ。再生した柱は前より太く、前より高く成長している。
躯はますます力に満ちて、どんどんこちらに近づいてくる。そして彼らが進む度に、地表から新たな柱が生まれていくのである。
少し目が慣れてきたのか、地下に網のようにエネルギーが張り巡らされているのが分かった。まるで竹の地下茎のように……キノコの菌糸が張り巡らされるようにだ。
「地下で繋がって、そこから上に伸びてるのか……!」
「黒鷹の言う通り、地下の網目が本体だね。神器に映らなかったんじゃない、このへん全部が反魂の術の真っ最中で、ここら一帯が敵の体に成り得るんだ」
一同はようやく気が付いたが、だからと言ってどうする事も出来ない。
必死に射撃しながら後退するが、それも全く意味を為さなかった。
「姫様、黒鷹様! 後ろはもう防衛ラインだよ!」
才次郎が悲痛な声を上げた。
「仕方ない……防衛線の守備隊に退避要請を……!」
「りょ、了解です!」
通信回線からは、後退する車両や重機の爆音が響いた。悲鳴と怒号が入り乱れ、皆混乱しきっているのだ。
やがて羽咋・七尾防衛線に辿り着いた躯どもは、次々に防壁を踏み砕いた。
退避に間に合わなかった故障車を蕨手刀で両断すると、車両は激しく爆散する。整備状態で放置された人型重機に躯が触れると、重機の人工筋肉が溶け崩れていった。まるで命を吸われたようにだ。
パイロットの湖南は、必死に横手から攻撃を加える。
「好き勝手やってくれちゃって! 全部弁償させるわよ!」
「死んでまで化けて出るなんて、粋じゃないなあ!」
才次郎も同じ対象を攻撃。更に津和野の重機も立ちはだかり、強力な結界で相手を縛る。
「人々に手出しはさせませんわ……!!!」
名うてのパイロットが3対1、しかし躯は止まらない。
そのまま強引に刃を振り回し、津和野達の機体は、まとめて建屋に叩きつけられていた。
誠は内心混乱の極みに達していた。
(このままじゃ避難区になだれ込む……! どうすりゃいいんだ……!?)
だがその時、不意に骸骨どもは動きを止めた。
まるで糸が切れたように……手にした刀を下げ、だらりとその場に立ち尽くす。そのまま少しずつ姿を薄れさせていったのだ。
ただ黒い柱だけが残され、どんどん高く成長していく。
遠間からも見えるその威容は、あたかも人が近付くのを禁じるかのように、激しい邪気を巻き上げていた。
同じ頃。
薄闇に包まれた拝殿に、1人の青年が入ってきた。すらりとした体を黒衣に包み、髪は肩に届く程だ。
あの土蜘蛛一族の青年であり、名は笹鐘。
彼はうやうやしく頭を下げ、御簾の奥の影に告げた。
「……かけまくも畏き我らが祖神よ」
「……申せ」
「黄泉の一軍、高天原の神人を破りて避難区に踏み込みました。あと一度拡大すれば、能登そのものが我らの手に」
「そうか」
影は次第に色濃くなり、やがて人の形をとった。
一見して平安時代の男性風……涼やかな美青年の面持ちであるが、その目は怪しく輝いている。
青年は……いや夜祖大神は、少し面白そうに口元を歪めた。
「……さて、いささか歯ごたえが無さ過ぎるな。高天原の神人よ、次はどう出る?」
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