40 / 87
第三章その4 ~手ごわいわ!~ ガンコ勇者の縁結び編
恋の縁結び大作戦
しおりを挟む
カンカンと拍子木が打ち鳴らされると、『第一回・昔の恋人縁結び大作戦会議』と書かれた横断幕が広げられる。
何だかデジャヴな感覚だったが、場所は再び全神連の西国本部である。
「ヒック、まったくこのちひろさんにも隠し通すとは……あの秘密主義者どもめ」
「ちひろに言うと、秒でみんなに広まるでしょうが。ほら、いい加減ビールを置いて下さい」
「いやぁぁ襲われるぅ、メガネ派にされるぅ!」
「別にコンタクトでもいいですから」
酒を死守しようとするちひろをよそに、高山はホワイトボードにどんどん方針を書き込んでいく。
「それじゃーガンガン知恵を出してくぜ。勝子、お前こういうの得意だろ? 若い頃から昼ドラとか好きだったし」
「確かに嫌いじゃないけどねえ」
勝子は腕組みして首を傾げる。
「あたしはこまかいのが苦手だからね。見るのは好きだけど、思わせブリな色恋なんざ知らないよ」
「ふふふ、それが勝子ちゃんのいい所よねえ」
因幡は細い目を更に細めて微笑んだ。
「私は先代の筆頭様に結婚相手を決めていただいたから、何にも分からないわ。みんなはどうかしら?」
みな筆頭3人に遠慮していたのだろう。
因幡の言葉を皮切りに、一斉にあーだこーだと言い始めた。
「あの船戸くんは手強いぞ。男らしいが、一度こうと決めたらちょっとやそっとじゃ揺らがないだろう」
「だがその男気は弱点でもある! 頼られたり、愛する者がピンチになれば、守ろうという気持ちが湧いてくるはずだ!」
「嵐山さんは頑固そうだけど、ああ見えて優しいとこあるのよ。だから元彼の窮状を伝えたら、きっとホロリとくると思うね」
だんだん会議はヒートアップしていき、あちこちで怒号が飛び交い始めた。
「一度恋人だったんだ、強引にいけば思い出す! 押して押して押しまくれ!」
「駄目よそれじゃ、引いてこそ恋よ! 引いて引いて愛の泥沼に引きずり込む、恋の国引き神話なのよ!」
「ここは少女マンガ風のラブコメだ!」
「ベタなシチュエーションこそ全てだ!」
たちまちケンカが始まり、てやんでえ、べらぼうめ、と茶碗が飛び交い始めた。
鶴は気にせずご馳走を食べながら呟いた。
「もぐもぐ、みんな頑張っていい知恵を出してね」
コマはたまりかねてツッコミを入れる。
「いやいや鶴、君もちょっとは頭を使いなよ」
「あらコマ、大和くんとすずちゃんは寝てるわ」
「あのお方……おっと、あの子達はいいの!」
誠が目をやると、幼子達は上座ですやすや眠っている。
本当に不思議なぐらいよく眠る子達であるが、よく見ると、彼らの体からうっすらと白い光が立ち昇っている。全神連の偉い血筋らしいので、眠りながらも何かをやっているのだろうか?
誠は頭を下げて茶碗をかわしながら、隣にいる鳳に尋ねた。
「ちなみに鳳さんはどう思いますか?」
「えっ!? わ、私はその、色恋には疎いですので……全神連のテキストにも、あまり詳しく載ってませんし……」
鳳は肩身が狭そうに言うと、赤い顔で俯いた。
やがて数時間に及ぶ話し合い?の結果、ようやく方針がまとまった。
高山はたんこぶや包帯まみれになりながら、一同の前に立つ。
「いてて……それじゃあこれより、両船団長のラブアゲイン大作戦『もう一度2人で!』を実行するぜ。奇しくも縁結びの神たる大国主様がお留守の間に、この国の未来を左右する縁結びをせにゃならんのだ。厳しい戦いだろうが、油断するんじゃねえぞ!」
おおっ、と一同が声を上げ、空前の縁結びミッションが開始されたのだ。
何だかデジャヴな感覚だったが、場所は再び全神連の西国本部である。
「ヒック、まったくこのちひろさんにも隠し通すとは……あの秘密主義者どもめ」
「ちひろに言うと、秒でみんなに広まるでしょうが。ほら、いい加減ビールを置いて下さい」
「いやぁぁ襲われるぅ、メガネ派にされるぅ!」
「別にコンタクトでもいいですから」
酒を死守しようとするちひろをよそに、高山はホワイトボードにどんどん方針を書き込んでいく。
「それじゃーガンガン知恵を出してくぜ。勝子、お前こういうの得意だろ? 若い頃から昼ドラとか好きだったし」
「確かに嫌いじゃないけどねえ」
勝子は腕組みして首を傾げる。
「あたしはこまかいのが苦手だからね。見るのは好きだけど、思わせブリな色恋なんざ知らないよ」
「ふふふ、それが勝子ちゃんのいい所よねえ」
因幡は細い目を更に細めて微笑んだ。
「私は先代の筆頭様に結婚相手を決めていただいたから、何にも分からないわ。みんなはどうかしら?」
みな筆頭3人に遠慮していたのだろう。
因幡の言葉を皮切りに、一斉にあーだこーだと言い始めた。
「あの船戸くんは手強いぞ。男らしいが、一度こうと決めたらちょっとやそっとじゃ揺らがないだろう」
「だがその男気は弱点でもある! 頼られたり、愛する者がピンチになれば、守ろうという気持ちが湧いてくるはずだ!」
「嵐山さんは頑固そうだけど、ああ見えて優しいとこあるのよ。だから元彼の窮状を伝えたら、きっとホロリとくると思うね」
だんだん会議はヒートアップしていき、あちこちで怒号が飛び交い始めた。
「一度恋人だったんだ、強引にいけば思い出す! 押して押して押しまくれ!」
「駄目よそれじゃ、引いてこそ恋よ! 引いて引いて愛の泥沼に引きずり込む、恋の国引き神話なのよ!」
「ここは少女マンガ風のラブコメだ!」
「ベタなシチュエーションこそ全てだ!」
たちまちケンカが始まり、てやんでえ、べらぼうめ、と茶碗が飛び交い始めた。
鶴は気にせずご馳走を食べながら呟いた。
「もぐもぐ、みんな頑張っていい知恵を出してね」
コマはたまりかねてツッコミを入れる。
「いやいや鶴、君もちょっとは頭を使いなよ」
「あらコマ、大和くんとすずちゃんは寝てるわ」
「あのお方……おっと、あの子達はいいの!」
誠が目をやると、幼子達は上座ですやすや眠っている。
本当に不思議なぐらいよく眠る子達であるが、よく見ると、彼らの体からうっすらと白い光が立ち昇っている。全神連の偉い血筋らしいので、眠りながらも何かをやっているのだろうか?
誠は頭を下げて茶碗をかわしながら、隣にいる鳳に尋ねた。
「ちなみに鳳さんはどう思いますか?」
「えっ!? わ、私はその、色恋には疎いですので……全神連のテキストにも、あまり詳しく載ってませんし……」
鳳は肩身が狭そうに言うと、赤い顔で俯いた。
やがて数時間に及ぶ話し合い?の結果、ようやく方針がまとまった。
高山はたんこぶや包帯まみれになりながら、一同の前に立つ。
「いてて……それじゃあこれより、両船団長のラブアゲイン大作戦『もう一度2人で!』を実行するぜ。奇しくも縁結びの神たる大国主様がお留守の間に、この国の未来を左右する縁結びをせにゃならんのだ。厳しい戦いだろうが、油断するんじゃねえぞ!」
おおっ、と一同が声を上げ、空前の縁結びミッションが開始されたのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる