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第三章その3 ~敵の正体!?~ 戦いの真相編
闘神・葦原永津彦命
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外から見るより、遥かに広い拝殿だった。磨き抜かれた板張りの床、立ち並ぶ野太い柱。
室内両脇には、あの全神連・西国本部の皆が座していたし、彼らの前には、沢山の神使達もちょこんと座っていた。
だが神使達の面持ちは、普段とは見違えるように神妙である。
「ようこそ姫様、黒鷹様。お待ち申しておりやした」
西国本部の筆頭・高山が言うと、居並ぶ人々、そして神使達でさえ、一斉に頭を下げた。
(な、何だこれ!? ほんとにドッキリじゃないのか?)
再びカメラを探す誠だったが、鳳に促されて進む。
最奥部には一段上がった高座があり、その場所の天井だけが高い。どこかの城……たぶん二条城で見た事がある、折上げ式の格天井に似ていた。
高座には、漆や金で飾られた立派な椅子があるのだが、人間用にしてはやたらとサイズが大きすぎる。
椅子の後ろには、見た事もないような巨大な丸鏡、注連縄や榊の枝が飾られていた。
誠が戸惑っていると、鳳が最前列の敷物を指し示した。
「どうぞこちらへ。並んでお座り下さい」
鶴とコマが正座するので、誠も倣う。そのまま誰もいない拝殿の奥を……空っぽの巨大な椅子を見上げる。
(何だ? 誰かいるのか?)
そこで再び高山が言葉を発した。
「……誅敵征魔大権現・闘神・葦原永津彦命様、ご来光……!!」
(…………っ!!!???)
瞬間、誠は反射的に上を見上げた。
頭上から、見えない気配が迫ってくる。
大きくて、重い……! 凄まじい圧迫感で、空が落ちてくるかのようだ。
その気配が神殿に当たった……と思った瞬間、不可視の波動が誠の体を突き抜けていた。
まるで雷が身を駆け抜けたかのようで、手足が痺れる。肺が、そして肋骨を包む筋肉が痙攣し、まともに息が出来ないのだ。
周囲を見る余裕も無いが、誰も騒ぐ様子が無いため、誠だけの異常なのだろう。
霊力に免疫がなく、魂に直接気が当たったためだろうか……などと考えていると、鶴の手が誠のそれに重ねられた。
思ったより柔らかく、そしてあたたかな手の平。彼女の手に淡い光が宿ると、呼吸が幾分楽になった。
「…………面を上げよ」
短くそう言われた気がした。
特に語気を強めたわけでもなく、淡々とした物言い。けれど一音一音に力が込められ、振動で大気がぱちぱちと爆ぜている。雷が言葉を発すれば、こんな声になるだろうか。
…………いやもしかしたら、相手は喋ってさえいないのかも知れない。
圧倒的な強者の思念に晒され、誠の脳が、魂が、そのように変換しているのかも知れなかった。
「…………!」
誠は少しずつ顔を上げ、そして目にした。先程まで空だった高座に、人ならぬ巨大な姿を。
今は座しているものの、立ち上がれば4メートル近いであろうその体躯は、明らかに人の範疇では無かった。
ゆったりとした白い袴は、膝下で足結いの紐が結ばれている。
上衣もやはり純白で、胸元には勾玉の首飾り。腰には環頭太刀を挿していた。
黒々とした豊かな髪は、神話の挿絵よろしく顔の左右で結ばれている。後で知ったのだが、これは角髪という髪型らしい。
髭は短く、筋肉質な首筋が顕となっていたし、誠を見下ろす両の眼は、どこか異様な力を帯びているように思えた。
全身を激しい霊気に覆われた絶対的強者。純粋な武神であり、闘神。
しかし同じ武神でも、九州で見た諏訪大明神と違い、誠を試すような激しい闘気を放っている。
永津彦は、そこで再び口を開いた。
「……岩凪姫の選びし神子よ。日の本を守るこれまでの働き、大儀である」
静かに言を発するだけで、巨獣が咆えるような圧力があった。
「勿体無いお褒めのお言葉、畏まって頂戴いたします。この鶴、そして守り手共々、ますます励ませていただきます」
鶴がそんな事を言った……ような気がした。
永津彦はそこで視線を緩め、拝殿全体を包んでいた異様な圧迫感は、少しだけ穏やかになったのだ。
室内両脇には、あの全神連・西国本部の皆が座していたし、彼らの前には、沢山の神使達もちょこんと座っていた。
だが神使達の面持ちは、普段とは見違えるように神妙である。
「ようこそ姫様、黒鷹様。お待ち申しておりやした」
西国本部の筆頭・高山が言うと、居並ぶ人々、そして神使達でさえ、一斉に頭を下げた。
(な、何だこれ!? ほんとにドッキリじゃないのか?)
再びカメラを探す誠だったが、鳳に促されて進む。
最奥部には一段上がった高座があり、その場所の天井だけが高い。どこかの城……たぶん二条城で見た事がある、折上げ式の格天井に似ていた。
高座には、漆や金で飾られた立派な椅子があるのだが、人間用にしてはやたらとサイズが大きすぎる。
椅子の後ろには、見た事もないような巨大な丸鏡、注連縄や榊の枝が飾られていた。
誠が戸惑っていると、鳳が最前列の敷物を指し示した。
「どうぞこちらへ。並んでお座り下さい」
鶴とコマが正座するので、誠も倣う。そのまま誰もいない拝殿の奥を……空っぽの巨大な椅子を見上げる。
(何だ? 誰かいるのか?)
そこで再び高山が言葉を発した。
「……誅敵征魔大権現・闘神・葦原永津彦命様、ご来光……!!」
(…………っ!!!???)
瞬間、誠は反射的に上を見上げた。
頭上から、見えない気配が迫ってくる。
大きくて、重い……! 凄まじい圧迫感で、空が落ちてくるかのようだ。
その気配が神殿に当たった……と思った瞬間、不可視の波動が誠の体を突き抜けていた。
まるで雷が身を駆け抜けたかのようで、手足が痺れる。肺が、そして肋骨を包む筋肉が痙攣し、まともに息が出来ないのだ。
周囲を見る余裕も無いが、誰も騒ぐ様子が無いため、誠だけの異常なのだろう。
霊力に免疫がなく、魂に直接気が当たったためだろうか……などと考えていると、鶴の手が誠のそれに重ねられた。
思ったより柔らかく、そしてあたたかな手の平。彼女の手に淡い光が宿ると、呼吸が幾分楽になった。
「…………面を上げよ」
短くそう言われた気がした。
特に語気を強めたわけでもなく、淡々とした物言い。けれど一音一音に力が込められ、振動で大気がぱちぱちと爆ぜている。雷が言葉を発すれば、こんな声になるだろうか。
…………いやもしかしたら、相手は喋ってさえいないのかも知れない。
圧倒的な強者の思念に晒され、誠の脳が、魂が、そのように変換しているのかも知れなかった。
「…………!」
誠は少しずつ顔を上げ、そして目にした。先程まで空だった高座に、人ならぬ巨大な姿を。
今は座しているものの、立ち上がれば4メートル近いであろうその体躯は、明らかに人の範疇では無かった。
ゆったりとした白い袴は、膝下で足結いの紐が結ばれている。
上衣もやはり純白で、胸元には勾玉の首飾り。腰には環頭太刀を挿していた。
黒々とした豊かな髪は、神話の挿絵よろしく顔の左右で結ばれている。後で知ったのだが、これは角髪という髪型らしい。
髭は短く、筋肉質な首筋が顕となっていたし、誠を見下ろす両の眼は、どこか異様な力を帯びているように思えた。
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しかし同じ武神でも、九州で見た諏訪大明神と違い、誠を試すような激しい闘気を放っている。
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「勿体無いお褒めのお言葉、畏まって頂戴いたします。この鶴、そして守り手共々、ますます励ませていただきます」
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永津彦はそこで視線を緩め、拝殿全体を包んでいた異様な圧迫感は、少しだけ穏やかになったのだ。
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