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第三章その2 ~東北よいとこ!~ 北国の闘魂編
北陸情緒でお出迎え
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「うまく乗ってきたわ黒鷹、こっちに近付いてる!」
「了解ヒメ子、遠いけどみんなにつなげるか?」
「もちろん!」
鶴が答えると同時に、画面にはあのポニーテールの野生的な少女・凛子が映し出された。
「飛崎中尉、こちら鳴瀬機。敵が誘いに乗ってきた、予定通り待ち伏せ地点に誘い込む」
「オーケー、任せて! あんた達、しっかりやるよ!」
了解、と他の面々の声がこだます。
やがて指定された合流地点に、誠の機体は到着した。
その地に住んでいた被災者に配慮し、敵の勢力圏内の土地は記号で呼ぶ事が多かったが、あえて言うなら富山平野の南端である。
かつては趣のある町だったのだろう。古めかしい家屋が軒を連ね、石畳や入り組んだ小路が目立つ。
出来れば破壊したくない場所なのだろうが、凛子達がここを選んだ理由は明白だ。
まず高い建物が少なく見通しが良い事。
一方で足元には低層家屋が並び、敵の機動力を削げる事。
これなら射撃を当てやすいし、かつ視界の良さで不意うちも防げる。歴戦の経験に裏づけされた、優れた戦場選びだった。
凛子達はそんな町並みの一角にポールを立て、電磁バリケードの射撃陣地を築いていたのだ。
「これは懐かしくていい場所だわ。鶴ちゃんの陣にぴったりね」
鶴は家屋が昔のそれに似ているせいか、上機嫌でのぼり旗を立てている。
旗には鶴がウインクした似顔絵と共に、『鶴ちゃん本陣』と書かれていたが、コマの顔を描いた旗もあり、そこには『不真面目な狛犬』と記されていた。
「ヒメ子じゃないけど、けっこういい雰囲気だな。北陸情緒っていうのか」
誠が言うと、凛子も画面上で頷いた。
「……確かにね。あたいらは東北の出だから、こっちはあんま詳しくないけど。この辺はどうも洒落た町が多い感じさ」
「父さんがよく出張に来てたんだけど、日本海側はずるいって言ってた。昔は『裏日本です』なんて謙遜してたのに、ほんとは凄くいいとこだって。海の幸とか、安くてメチャクチャおいしいって」
「何言ってんのさ、それはあたいらも負けてないし。マグロでもホタテでも、東北の食べたら目ぇ飛び出るよ?」
凛子はそう言って額のねじり鉢巻を締めなおした。
よく見ると、手にも顔にも首筋にも、所々に切り傷の痕が見える。
操縦室まで達する激しい機体損傷を繰り返し、敵と取っ組み合いを続けてきた証である。
画面に映る他の隊員も、決戦を前に全く怯んだ様子はない。
九州勢のストレートな熱意とはまた違った、内に秘めた闘志とでもいうのか。
(…………北国の人は我慢強いって言うけど、この部隊も相当だな)
当然ながら、味方になればどれだけ心強いだろう。
「了解ヒメ子、遠いけどみんなにつなげるか?」
「もちろん!」
鶴が答えると同時に、画面にはあのポニーテールの野生的な少女・凛子が映し出された。
「飛崎中尉、こちら鳴瀬機。敵が誘いに乗ってきた、予定通り待ち伏せ地点に誘い込む」
「オーケー、任せて! あんた達、しっかりやるよ!」
了解、と他の面々の声がこだます。
やがて指定された合流地点に、誠の機体は到着した。
その地に住んでいた被災者に配慮し、敵の勢力圏内の土地は記号で呼ぶ事が多かったが、あえて言うなら富山平野の南端である。
かつては趣のある町だったのだろう。古めかしい家屋が軒を連ね、石畳や入り組んだ小路が目立つ。
出来れば破壊したくない場所なのだろうが、凛子達がここを選んだ理由は明白だ。
まず高い建物が少なく見通しが良い事。
一方で足元には低層家屋が並び、敵の機動力を削げる事。
これなら射撃を当てやすいし、かつ視界の良さで不意うちも防げる。歴戦の経験に裏づけされた、優れた戦場選びだった。
凛子達はそんな町並みの一角にポールを立て、電磁バリケードの射撃陣地を築いていたのだ。
「これは懐かしくていい場所だわ。鶴ちゃんの陣にぴったりね」
鶴は家屋が昔のそれに似ているせいか、上機嫌でのぼり旗を立てている。
旗には鶴がウインクした似顔絵と共に、『鶴ちゃん本陣』と書かれていたが、コマの顔を描いた旗もあり、そこには『不真面目な狛犬』と記されていた。
「ヒメ子じゃないけど、けっこういい雰囲気だな。北陸情緒っていうのか」
誠が言うと、凛子も画面上で頷いた。
「……確かにね。あたいらは東北の出だから、こっちはあんま詳しくないけど。この辺はどうも洒落た町が多い感じさ」
「父さんがよく出張に来てたんだけど、日本海側はずるいって言ってた。昔は『裏日本です』なんて謙遜してたのに、ほんとは凄くいいとこだって。海の幸とか、安くてメチャクチャおいしいって」
「何言ってんのさ、それはあたいらも負けてないし。マグロでもホタテでも、東北の食べたら目ぇ飛び出るよ?」
凛子はそう言って額のねじり鉢巻を締めなおした。
よく見ると、手にも顔にも首筋にも、所々に切り傷の痕が見える。
操縦室まで達する激しい機体損傷を繰り返し、敵と取っ組み合いを続けてきた証である。
画面に映る他の隊員も、決戦を前に全く怯んだ様子はない。
九州勢のストレートな熱意とはまた違った、内に秘めた闘志とでもいうのか。
(…………北国の人は我慢強いって言うけど、この部隊も相当だな)
当然ながら、味方になればどれだけ心強いだろう。
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