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第三章その2 ~東北よいとこ!~ 北国の闘魂編
虎丸3兄弟・見参!
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虎丸達の一団は、山肌を蹴立てて能登半島を目指していた。
「兄者よ、もうそろそろ出てくる頃合いだな」
「武者震いがしてまいりました」
虎丸が乗る巨大な鎧の搭乗空間に、弟の次郎丸と三郎丸が映し出された。
2人とも虎丸と同じく動物系の妖であり、山神の無明権現に仕える存在だ。
次郎丸はやや大柄で、いかにもやんちゃそうな印象。
三郎丸は後ろで髪を結び、前髪は左右に振り分けている。絵本の桃太郎のような……と言えば鬼どもが怒るだろうが、要するに元服前の少年剣士のような姿だ。
2人とも命より大事な、そして可愛い弟達である。
「おう次郎丸、三郎丸、もうじきだな」
虎丸が牙をむき出し、顔をくしゃくしゃにして笑みを浮かべると、次郎丸は血気にはやる様子で続ける。
「それにしても、待ち遠しいな兄者。鬼も熊襲も歯が立たなかった連中だ。我が一族が仕留めて手柄を立ててやろう」
「その意気だ弟よ。無明権現様もさぞお喜びになられるぞ」
虎丸はそこで視線を周囲に移した。
起伏が激しい山野を駆け抜けるのは、虎丸配下の特殊な餓霊部隊だった。
赤紫の皮膚、極彩色の角や牙。
多脚の体は軽快な身のこなしで、どこか猫科の大型猛獣に似ている。
高い機動力と殺傷力を武器に近畿から日本海沿岸を暴れ回る、えりすぐりの切り込み部隊、超高速の百鬼夜行。
名を『爪牙兵団』というこの隊には、人間どもの攻撃もほとんど当たらず、向かうところ敵なし。
もう勝利は時間の問題だ、と思う虎丸だったが、そこでふと異変に気付いた。
「……おおっ、なんだありゃ?」
彼方の霧に、不意に激しい火花が立ち昇ったのだ。
何者かが強い術でも使ったのだろうか?
味方の魔法でない事は確かで、火花の後方にきらきらと光の模様が描かれていく。模様はやがて少女と狛犬がダブルピースをしている形に変わった。
「霧にお絵かきしてやがるのか? バカにしやがって!」
虎丸の言葉に、三郎丸は少し緊張した顔で言う。
「兄上、きっとあの神人ではないでしょうか?」
「だろうな、とんでもない速さで飛んでやがる。この邪気の中、よく飛ぼうなんて考えるぜ」
光はどんどん霧の奥へと飛び去っていく。このままやり過ごせば、彼らと出会う事もないのだろうが……
「おいおい、俺らと逆方向に行くぞ、兄者! まさか砦に気付いたんじゃないか?」
「バカな、ありえねえぜ!」
次郎丸の進言を、虎丸は即座に否定した。
「夜祖様の秘術を編み込んだ迷いの砦だ。この通行手形がなきゃ、俺らでもたどり着けねえんだぜ?」
虎丸は頭上に輝く宝珠に目をやった。珠はうっすらと光を帯びて、虎丸の全身を照らしている。
「けど兄者、相手はあの神人だぞ。もしほっといて砦がやられたら、鬼や熊襲に何て言われるか……」
「…………ええいっ、考えるのもめんどくせえっ!」
虎丸は眉間に皺を寄せ、唸るように言った。
すぐに自らの乗る鎧を操作し、大地を蹴立てて方向転換をする。
「進路を変えろ、迎え撃て! どのみち仕留めるつもりだったんだ、ここでケリをつけてやる!」
配下の餓霊は戦いの喜びに震え、天に向かって一斉に咆えたのだ。
「兄者よ、もうそろそろ出てくる頃合いだな」
「武者震いがしてまいりました」
虎丸が乗る巨大な鎧の搭乗空間に、弟の次郎丸と三郎丸が映し出された。
2人とも虎丸と同じく動物系の妖であり、山神の無明権現に仕える存在だ。
次郎丸はやや大柄で、いかにもやんちゃそうな印象。
三郎丸は後ろで髪を結び、前髪は左右に振り分けている。絵本の桃太郎のような……と言えば鬼どもが怒るだろうが、要するに元服前の少年剣士のような姿だ。
2人とも命より大事な、そして可愛い弟達である。
「おう次郎丸、三郎丸、もうじきだな」
虎丸が牙をむき出し、顔をくしゃくしゃにして笑みを浮かべると、次郎丸は血気にはやる様子で続ける。
「それにしても、待ち遠しいな兄者。鬼も熊襲も歯が立たなかった連中だ。我が一族が仕留めて手柄を立ててやろう」
「その意気だ弟よ。無明権現様もさぞお喜びになられるぞ」
虎丸はそこで視線を周囲に移した。
起伏が激しい山野を駆け抜けるのは、虎丸配下の特殊な餓霊部隊だった。
赤紫の皮膚、極彩色の角や牙。
多脚の体は軽快な身のこなしで、どこか猫科の大型猛獣に似ている。
高い機動力と殺傷力を武器に近畿から日本海沿岸を暴れ回る、えりすぐりの切り込み部隊、超高速の百鬼夜行。
名を『爪牙兵団』というこの隊には、人間どもの攻撃もほとんど当たらず、向かうところ敵なし。
もう勝利は時間の問題だ、と思う虎丸だったが、そこでふと異変に気付いた。
「……おおっ、なんだありゃ?」
彼方の霧に、不意に激しい火花が立ち昇ったのだ。
何者かが強い術でも使ったのだろうか?
味方の魔法でない事は確かで、火花の後方にきらきらと光の模様が描かれていく。模様はやがて少女と狛犬がダブルピースをしている形に変わった。
「霧にお絵かきしてやがるのか? バカにしやがって!」
虎丸の言葉に、三郎丸は少し緊張した顔で言う。
「兄上、きっとあの神人ではないでしょうか?」
「だろうな、とんでもない速さで飛んでやがる。この邪気の中、よく飛ぼうなんて考えるぜ」
光はどんどん霧の奥へと飛び去っていく。このままやり過ごせば、彼らと出会う事もないのだろうが……
「おいおい、俺らと逆方向に行くぞ、兄者! まさか砦に気付いたんじゃないか?」
「バカな、ありえねえぜ!」
次郎丸の進言を、虎丸は即座に否定した。
「夜祖様の秘術を編み込んだ迷いの砦だ。この通行手形がなきゃ、俺らでもたどり着けねえんだぜ?」
虎丸は頭上に輝く宝珠に目をやった。珠はうっすらと光を帯びて、虎丸の全身を照らしている。
「けど兄者、相手はあの神人だぞ。もしほっといて砦がやられたら、鬼や熊襲に何て言われるか……」
「…………ええいっ、考えるのもめんどくせえっ!」
虎丸は眉間に皺を寄せ、唸るように言った。
すぐに自らの乗る鎧を操作し、大地を蹴立てて方向転換をする。
「進路を変えろ、迎え撃て! どのみち仕留めるつもりだったんだ、ここでケリをつけてやる!」
配下の餓霊は戦いの喜びに震え、天に向かって一斉に咆えたのだ。
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