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~プロローグ~ いざ、本州上陸
シッカりトドメをささねえと
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「見えてきたわ、黒鷹! まるで蛇……ううん、でっかい蚯蚓みたいね!」
鶴の言葉通り、ひしめく餓霊の向こうに敵の大将が見えてきた。
ぶよぶよとした砂色の巨体は、ファンタジー風に言えば、巨大砂蟲のような姿だ。
それは目の無い頭部でこちらを見据えると、口腔に赤い光を満たす。数瞬の後、何かの液体を大量に吐き出し始めた。
赤い光を帯びた液が雨のように降り注ぐと、蒸気を上げて路面を溶解せしめていく。
まともに戦う気などなく、こちらを足止めするのが目的のようだ。
「凄い嫌がらせですこと。高濃度の呪いの塊、邪気まみれの腐れ水ですわね……!」
あの女性パイロットが、素早く一同の前に結界を展開する。
だがこれでは相手に近付く事が出来ない。
あの神獣のような鹿達も、光の壁で防御するのが精一杯だ。
その間に敵陣は体勢を立て直し、誠達を取り囲もうと迫っている。
合流したパイロット達も焦りの表情を浮かべるが、そこで鶴が、誠の背もたれを掴んで身を乗り出した。
「黒鷹、もう平気よ! そろそろ霊気が回復したわ!」
「ようしっ、ヒメ子、頼む!」
誠は機体を操作して、大きくバックステップした。
「皆さん、俺とヒメ子が上空からいきます!」
「分かりました、援護します! 才次郎、津和野さんもお願い!」
藤色の髪の少女が叫ぶと、おかっぱ頭の少年、長い髪の女性も頷く。
幼い大和くんも気合いを入れているが、そこは鹿になだめられていた。
誠の機体は空中高く飛び上がり、上空から弾丸を発射。
敵ボスの気を引くべく、目立つ動きを繰り返しながら、相手の後ろ斜め上方へと回り込む。
ボスは誠を撃ち落とそうと首を反らすが、その隙に味方は突進。
青い光の電磁鞭が、そして槍が閃くと、敵の体を大きくえぐる。
気付いたボスが頭部を動かすものの、最大出力の結界がその動きを鈍らせていた。
周囲の餓霊は鹿やコマ達が蹴散らし、ボスに近づけなくさせている。
「黒鷹殿っ、長くはもちません、今ですわっ!」
「了解っ!」
誠は機体を急降下させた。
降りながら、阿吽の呼吸で鶴が念じると、機体の持つ強化刀に、物凄い雷の力が宿った。
「ヒメ子、急所は!?」
「頭のところ! ほかにもあちこち!」
鶴の思念がイメージとなって伝わって、誠は相手の急所を理解する。
まず頭、そして心臓部。体の各所にも散在しているのは、巨体を動かすために神経が分散しているのだろう。まるで節足動物の神経節だ。
誠はそのまま敵の頭を一刀両断、着地して素早く各所の神経節をも切断した。
細切れになった敵は、地響きを立てて落下したが、巨体はまだもがくように蠢いている。
だがそこで鹿達が殺到して、敵の大将をボコボコに踏み潰した。
「念入りにやれよ。この手のヤツはしぶとい、シッカりトドメをささねえとな」
煙管をくわえた鹿の号令で、鹿達は何度も往復しながら餓霊をぐりぐり踏み潰す。
さしもの大将級の餓霊も溶け崩れ、周囲の敵ももがきながら消えていった。
餓霊はその一帯のボスを倒せば、配下も一緒に消える性質があるからだ。
「とりあえずこれで、付近の敵は消えたのか……?」
誠は少し安堵したが、そこで弾けるように機体を振り返らせた。
「!!!???」
はるか南西の方角から、凄まじい気配を感じたからだ。
霊感の有無など関係なく、生きとし生けるもの全てが感じ取れる、禍々しい存在感。
彼方に立ち込める暗雲は、時折稲光で照らされながら、少しずつ周囲に広がっている。
「……物凄く大きな邪気よ。あれが魔王のディアヌスかしらね」
鶴も珍しく緊張した様子で呟いている。
そこで機体のモニターに、長い黒髪の女性が映った。
やや切れ長の目元、力強い表情。
全身をまばゆい光で包まれた彼女こそ、鶴をこの世に遣わした日本神話の女神・岩凪姫である。
岩凪姫は一同に語りかけた。
「皆、急な任務だが良くやってくれた。労いたいところだが、ディアヌスの邪気を見たか?」
誠達は無言で頷く。
「感じた通りだ、決して生易しい相手ではない。ここに来た以上、片時も油断をするでないぞ」
「平気よ、任せておいて、ナギっぺ」
軽く答える鶴だったが、そこで合流したパイロット達の顔がモニターに映し出された。
藤色の髪の少女が、一同を代表して語りかける。
「それでは代行様、ご案内してよろしいでしょうか」
「うむ、湖南よ、後は任せる」
女神は頷き、あっさり画面から姿を消した。
…………そうなのだ。このパイロット達は、ただの戦闘員ではない。
以前のようにお面を付けていないものの、鹿児島で誠達に加勢し、魔族どもと戦った人々。女神とも面識のある兵達。
はるか昔から、神に仕えてきた全日本神道連合…………すなわち全神連のメンバーなのだ。
鶴の言葉通り、ひしめく餓霊の向こうに敵の大将が見えてきた。
ぶよぶよとした砂色の巨体は、ファンタジー風に言えば、巨大砂蟲のような姿だ。
それは目の無い頭部でこちらを見据えると、口腔に赤い光を満たす。数瞬の後、何かの液体を大量に吐き出し始めた。
赤い光を帯びた液が雨のように降り注ぐと、蒸気を上げて路面を溶解せしめていく。
まともに戦う気などなく、こちらを足止めするのが目的のようだ。
「凄い嫌がらせですこと。高濃度の呪いの塊、邪気まみれの腐れ水ですわね……!」
あの女性パイロットが、素早く一同の前に結界を展開する。
だがこれでは相手に近付く事が出来ない。
あの神獣のような鹿達も、光の壁で防御するのが精一杯だ。
その間に敵陣は体勢を立て直し、誠達を取り囲もうと迫っている。
合流したパイロット達も焦りの表情を浮かべるが、そこで鶴が、誠の背もたれを掴んで身を乗り出した。
「黒鷹、もう平気よ! そろそろ霊気が回復したわ!」
「ようしっ、ヒメ子、頼む!」
誠は機体を操作して、大きくバックステップした。
「皆さん、俺とヒメ子が上空からいきます!」
「分かりました、援護します! 才次郎、津和野さんもお願い!」
藤色の髪の少女が叫ぶと、おかっぱ頭の少年、長い髪の女性も頷く。
幼い大和くんも気合いを入れているが、そこは鹿になだめられていた。
誠の機体は空中高く飛び上がり、上空から弾丸を発射。
敵ボスの気を引くべく、目立つ動きを繰り返しながら、相手の後ろ斜め上方へと回り込む。
ボスは誠を撃ち落とそうと首を反らすが、その隙に味方は突進。
青い光の電磁鞭が、そして槍が閃くと、敵の体を大きくえぐる。
気付いたボスが頭部を動かすものの、最大出力の結界がその動きを鈍らせていた。
周囲の餓霊は鹿やコマ達が蹴散らし、ボスに近づけなくさせている。
「黒鷹殿っ、長くはもちません、今ですわっ!」
「了解っ!」
誠は機体を急降下させた。
降りながら、阿吽の呼吸で鶴が念じると、機体の持つ強化刀に、物凄い雷の力が宿った。
「ヒメ子、急所は!?」
「頭のところ! ほかにもあちこち!」
鶴の思念がイメージとなって伝わって、誠は相手の急所を理解する。
まず頭、そして心臓部。体の各所にも散在しているのは、巨体を動かすために神経が分散しているのだろう。まるで節足動物の神経節だ。
誠はそのまま敵の頭を一刀両断、着地して素早く各所の神経節をも切断した。
細切れになった敵は、地響きを立てて落下したが、巨体はまだもがくように蠢いている。
だがそこで鹿達が殺到して、敵の大将をボコボコに踏み潰した。
「念入りにやれよ。この手のヤツはしぶとい、シッカりトドメをささねえとな」
煙管をくわえた鹿の号令で、鹿達は何度も往復しながら餓霊をぐりぐり踏み潰す。
さしもの大将級の餓霊も溶け崩れ、周囲の敵ももがきながら消えていった。
餓霊はその一帯のボスを倒せば、配下も一緒に消える性質があるからだ。
「とりあえずこれで、付近の敵は消えたのか……?」
誠は少し安堵したが、そこで弾けるように機体を振り返らせた。
「!!!???」
はるか南西の方角から、凄まじい気配を感じたからだ。
霊感の有無など関係なく、生きとし生けるもの全てが感じ取れる、禍々しい存在感。
彼方に立ち込める暗雲は、時折稲光で照らされながら、少しずつ周囲に広がっている。
「……物凄く大きな邪気よ。あれが魔王のディアヌスかしらね」
鶴も珍しく緊張した様子で呟いている。
そこで機体のモニターに、長い黒髪の女性が映った。
やや切れ長の目元、力強い表情。
全身をまばゆい光で包まれた彼女こそ、鶴をこの世に遣わした日本神話の女神・岩凪姫である。
岩凪姫は一同に語りかけた。
「皆、急な任務だが良くやってくれた。労いたいところだが、ディアヌスの邪気を見たか?」
誠達は無言で頷く。
「感じた通りだ、決して生易しい相手ではない。ここに来た以上、片時も油断をするでないぞ」
「平気よ、任せておいて、ナギっぺ」
軽く答える鶴だったが、そこで合流したパイロット達の顔がモニターに映し出された。
藤色の髪の少女が、一同を代表して語りかける。
「それでは代行様、ご案内してよろしいでしょうか」
「うむ、湖南よ、後は任せる」
女神は頷き、あっさり画面から姿を消した。
…………そうなのだ。このパイロット達は、ただの戦闘員ではない。
以前のようにお面を付けていないものの、鹿児島で誠達に加勢し、魔族どもと戦った人々。女神とも面識のある兵達。
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