新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

朝倉矢太郎(BELL☆PLANET)

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~グランドフィナーレ~ もう一度、何度でも!

もう一度、何度でも!

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 そしてしばしの時が流れ、よく晴れた春の日である。

 誠は1人散策していた。

 普段なら誰かしら傍にいるのだが、今日はみんな、島の女性達の集まりに呼ばれているのだ。

 小道から大通りへ出ると、すぐ大山祗神社に差し掛かる。

 頭を下げながら鳥居の前を過ぎ、披露宴をした宴会場エリアを越えると、商店街が見えてくる。

 一時はかなり寂れた場所だったのだが、島の復興とともにどんどん賑やかになっていて、誠を見ると皆が声をかけてくれた。

 頭上のスピーカーからは、謎の歌声が流れて来る。

 真面目ひっとすじ、つるちゃんと♪ 不真面目、こしゃくな狛犬の♪

 つるちゃん音頭で、ございいまああすうう♪

「いつ作ったんだよこんな曲」

 ツッコミを入れる誠に、皆が揚げたてのじゃこ天や猪のメンチカツをくれたが、その袋にはつるちゃん商店街のロゴがあった。



 食べながら商店街を抜けると、宮浦港へ辿り着く。

 石灯籠いしどうろうの並ぶ道を……昔、ハリウッド映画の撮影があったという景色を眺めていると、不意に後ろから声がかかった。

「黒鷹、ここにいたか。少し面倒事があってな」

 振り返ると、そこには長い黒髪を伸ばした長身の女神が。つまり岩凪姫が立っていたのだ。

「面倒事って何ですか?」

「実は邪神の中に、まだ弱っていない一団があってな。東北に出張っていた勢力が、地下に隠れているらしいのだ。奴等が率いる残党が、巻き返しを狙っているとの報告が入った」

 岩凪姫はそう説明する。

「現世も邪気に満ちていないし、せいぜい配下を繰り出す程度だろう……が、私も他の神々も力を使い過ぎて派手には動けん。だからお前に出て欲しいのだ」

「分かりました、すぐに行きます!」

 誠は一も二も無く即断した。

「折角復興したんですから、絶対誰も泣かせません!」

「うむ、良い顔だ。少し……夏木に似てきたかな?」

 女神はよく分からない事を言う。

 誠がきょとんとしていると、女神は微笑んで首を振った。

「気にするな。男が己を磨いた時、そういう風になるのかも知れぬ。誇っていい事だ」

 誠は少し戸惑ったが、女神は尚もこう言った。

「それと1つ言い忘れていたがな。このお役目を経て、鶴は立派になっただろう?」

「……はい」

 誠は素直に頷いた。

「あなたが導いてくれたおかげです」

 そこで岩凪姫は、腕組みして宙を見上げた。

「それがだな。天音の魂を入れた影響が、そろそろ出る頃だと思う」

「影響?」

「うむ。巻き戻すというか、精神年齢というか……」

「えっ……それって、ヒメ子の記憶が消えるって事ですか……!?」

「いや、記憶はあるぞ。あるのだが……あれだ。天音も本当は、もっと遊びたかったんだろう」

「???」

 誠はその意味が理解できなかったが、次の瞬間。

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 凄まじい稲光が輝くと、宙から何かが飛び降りてくる。

 巨体からは想像もつかない身軽さで着地したそれは、一言で言えば巨大なライオン……いやコマだ。

 そしてコマの上に立つ少女は、全身をまばゆい光に包まれていた。

 風にたなびく空色の着物と、時代錯誤の古風な鎧。

 紛れもなくこの日の本を守り抜いた聖者鶴姫であったが、彼女の髪は、肩に届かぬ程に短くなっていたのだ。

 表情も無邪気に明るく、今生で初めて会った時のようだ。

 とまどう誠をよそに、女神は面白そうに笑みを浮かべる。

「さあもう一度、お転婆てんば姫のお出ましだ」

「えっ……ええっ!?」

 誠はようやく理解した。

(天音さんと魂が合体して……天音さんは遊びたくて。ヒメ子の髪が縮んでて……まさかっ!?)

 次の瞬間、誠の脳裏に、今までの冒険が一気に蘇ってきた。

 鶴と一緒に駆け抜けた……というより、鶴に振り回された大冒険の記憶が、嵐のように襲ってきたのだ。

 長い長い苦労の果てに、ようやく少し大人びてきた鶴だったのに……それが全部やり直しだというのか。

「あ、あれを、もう1回ですか……?」

「そうだな。もう一度、何度でもだ」

 女神はからかうように微笑んだ。

 そこで鶴とコマが言い争いを始める。

「おい鶴、また考えずに突っ走るのか? ちゃんと場所を決めてからにしよう!」

「だまらっしゃい、心配性な狛犬ね! こういうのは勢いが大事なのよ!」

 鶴は適当な事を言うと、それから誠に向き直る。

 手にした扇子を開き、高らかに呼びかけた。

「さあ黒鷹、また私達の出番よ! この鶴ちゃんとともに悪鬼羅刹を討ち払い、日いづる国を守りましょう!」

 本来なら戸惑うはずの場面だろう。だが誠は、鶴に向かって即答する。

「任せとけ、ヒメ子っ!」
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