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~グランドフィナーレ~ もう一度、何度でも!

魔族たちも宴会!

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「さあみんな、あっちにも挨拶に行きましょう!」

 鶴に手を引かれ、誠と花嫁達は隣の会場へと向かった。

 壊れた家を撤去し、更地になったその場所には、運動会で目にするようなテントが張られ、沢山の人が花見のように騒いでいた。

 ……いや、騒いでいるのは人ではない。鬼や熊襲くまそ、土蜘蛛といった魔族達である。

 彼らは誠達を目にすると、やんやの喝采かっさいを送ってきた。

「だ、誰かに見られて大丈夫なのかな?」

 心配する誠だったが、鶴は笑顔で首を振る。

「幻術で人に見えてるから平気よ」

 よく見ると、魔族達は額に小さなお面を被っていた。

 誠達が北陸で使った幻術のお面であり、これを被れば人は魔族に、魔族は人の姿に見えるのだろう。

 誠に幻術が効いてないのは、鶴が隣にいるからなのか、それとも女神の太刀を宿しているせいなのか。

「がっはっは、よお分からんが、めでたいのお!」

「そうとも剛角、飯もタダ酒もうまい!」

 剛角も紫蓮も上機嫌だったし、刹鬼姫もまんざらでは無さそうだった。

「まさか本当に姉上が、人に嫁ぐ事になるとはなあ。あの暴力の化身のような姉上が」

「やっ、やめろよっ……あっいや、やめなさいよ……!」

 カノンは危うく素が出そうになりながら、慌てて取りつくろっている。

 虎丸兄弟は見事なコンビネーションでハモりながら歌っていたし、熊襲のほむらは土蜘蛛の纏葉まとはを口説き始めて、同郷の燐火に引っぱたかれている。

「……おめでとう、人族の勇者よ」

 髪を肩ほどに伸ばした土蜘蛛の青年・笹鐘がそう言ってくれた。

 今は穏やかな表情であり、静かにます酒を手に持っている。

 本来は知的な性格なのか、戦いが終わってしまうと、特に態度に刺々とげとげしさも感じなかった。

 どちらかと言えば付き合いやすそうな……少し父にも似た雰囲気である。

「手ごわい相手だったな。君には随分煮え湯を飲まされたよ」

「そっちの神様には、その何倍もやられましたけどね」

 誠が言うと、笹鐘はニヤリと笑った。

「それは当然だが……夜祖大神様を滅ぼさなかった事、心から感謝している」

「それはあの女神姉妹に言って下さい」

 だが笹鐘は首を振った。

「無理だ。特に姉はすこぶる怖い」

 笹鐘の素直な言葉に、一同は笑うのだった。

 色々あったし、彼らを許せない人もいるのだろうが、彼らも上に命じられてやった事だ。

 もし同じ陣営に属したなら、こうして笑い合う日々があったのかも知れない。
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