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~グランドフィナーレ~ もう一度、何度でも!
高砂。最近はやらない式も多いけど
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当然の事ながら、レジェンド隊もべろべろに酔っ払っていた。
ちひろが船渡夫妻を引っ張り回して踊っているし、輪太郎はメガネを曇らせ、赤い顔で笑いまくっていた。完全にキャラが崩壊している。
それでも皆楽しげだったし、お腹の底から笑っていたのだ。
「まったく、みんな元気だね。雪菜も瞳も綺麗だし……ねえつかさ?」
先にみんなが壊れたため、騒ぎそこなったヒカリは、そう言って振り返る。
だが珍しい事に、つかさは隣にいなかったのだ。
「トイレかな? それともお色直し……って、花嫁じゃないよね」
ツッコミ役がいないので、ボケも自分でつっこまねばならない。大変なので、早く彼を連れ戻そう。
そう思い、目でつかさを探すヒカリだったが……そこで彼を発見した。
彼はなぜか正装だった。
古めかしい紋付袴に身を包み、静かにヒカリに歩み寄る。
「えっ、つかさ、何なのその格好……」
「…………みんなに許可は取ってるよ」
つかさは少し顔を赤らめたが、やがて高らかにうたい始めた。
古い結婚式でよく披露されていた高砂である。
神使達が箒に熊手を持ち出して、彼の歌にあわせて踊っている。
やがてつかさは呼吸を整え、再びヒカリに語りかける。
「モテない男は好き……そう言ったよな?」
「えっ? えっ?」
戸惑うヒカリだったが、つかさは目を逸らしてくれない。
男らしくこちらを見つめたまま、ヒカリがふざける隙を与えないのだ。
やめて、やめてよ。そんな目で見ないでよ。
そんな願いも空しく、つかさはこちらを見つめ続ける。
ヒカリが首を縦に振るまで、てこでも目を逸らさないつもりだ。
ヒカリはとうとう観念し、恐る恐るつかさに尋ねる。
「ぼっ……ボクは、面倒臭い女だよ……?」
「……知ってるさ」
つかさは懐からバンダナを取り出し、ヒカリの頭に被せたのだ。
「面倒は……牛の世話で慣れてるよ」
ヒカリはもう前を向いていられなくなった。
俯いて、くしゃくしゃになった顔を見られないように必死だった。
周囲がどっと盛り上がって、みんなが好き放題な事を言っているのを聞きながら、ヒカリは早く泣きやもう、と必死で努力するのだった。
ちひろが船渡夫妻を引っ張り回して踊っているし、輪太郎はメガネを曇らせ、赤い顔で笑いまくっていた。完全にキャラが崩壊している。
それでも皆楽しげだったし、お腹の底から笑っていたのだ。
「まったく、みんな元気だね。雪菜も瞳も綺麗だし……ねえつかさ?」
先にみんなが壊れたため、騒ぎそこなったヒカリは、そう言って振り返る。
だが珍しい事に、つかさは隣にいなかったのだ。
「トイレかな? それともお色直し……って、花嫁じゃないよね」
ツッコミ役がいないので、ボケも自分でつっこまねばならない。大変なので、早く彼を連れ戻そう。
そう思い、目でつかさを探すヒカリだったが……そこで彼を発見した。
彼はなぜか正装だった。
古めかしい紋付袴に身を包み、静かにヒカリに歩み寄る。
「えっ、つかさ、何なのその格好……」
「…………みんなに許可は取ってるよ」
つかさは少し顔を赤らめたが、やがて高らかにうたい始めた。
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神使達が箒に熊手を持ち出して、彼の歌にあわせて踊っている。
やがてつかさは呼吸を整え、再びヒカリに語りかける。
「モテない男は好き……そう言ったよな?」
「えっ? えっ?」
戸惑うヒカリだったが、つかさは目を逸らしてくれない。
男らしくこちらを見つめたまま、ヒカリがふざける隙を与えないのだ。
やめて、やめてよ。そんな目で見ないでよ。
そんな願いも空しく、つかさはこちらを見つめ続ける。
ヒカリが首を縦に振るまで、てこでも目を逸らさないつもりだ。
ヒカリはとうとう観念し、恐る恐るつかさに尋ねる。
「ぼっ……ボクは、面倒臭い女だよ……?」
「……知ってるさ」
つかさは懐からバンダナを取り出し、ヒカリの頭に被せたのだ。
「面倒は……牛の世話で慣れてるよ」
ヒカリはもう前を向いていられなくなった。
俯いて、くしゃくしゃになった顔を見られないように必死だった。
周囲がどっと盛り上がって、みんなが好き放題な事を言っているのを聞きながら、ヒカリは早く泣きやもう、と必死で努力するのだった。
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