154 / 160
~グランドフィナーレ~ もう一度、何度でも!
高砂。最近はやらない式も多いけど
しおりを挟む
当然の事ながら、レジェンド隊もべろべろに酔っ払っていた。
ちひろが船渡夫妻を引っ張り回して踊っているし、輪太郎はメガネを曇らせ、赤い顔で笑いまくっていた。完全にキャラが崩壊している。
それでも皆楽しげだったし、お腹の底から笑っていたのだ。
「まったく、みんな元気だね。雪菜も瞳も綺麗だし……ねえつかさ?」
先にみんなが壊れたため、騒ぎそこなったヒカリは、そう言って振り返る。
だが珍しい事に、つかさは隣にいなかったのだ。
「トイレかな? それともお色直し……って、花嫁じゃないよね」
ツッコミ役がいないので、ボケも自分でつっこまねばならない。大変なので、早く彼を連れ戻そう。
そう思い、目でつかさを探すヒカリだったが……そこで彼を発見した。
彼はなぜか正装だった。
古めかしい紋付袴に身を包み、静かにヒカリに歩み寄る。
「えっ、つかさ、何なのその格好……」
「…………みんなに許可は取ってるよ」
つかさは少し顔を赤らめたが、やがて高らかにうたい始めた。
古い結婚式でよく披露されていた高砂である。
神使達が箒に熊手を持ち出して、彼の歌にあわせて踊っている。
やがてつかさは呼吸を整え、再びヒカリに語りかける。
「モテない男は好き……そう言ったよな?」
「えっ? えっ?」
戸惑うヒカリだったが、つかさは目を逸らしてくれない。
男らしくこちらを見つめたまま、ヒカリがふざける隙を与えないのだ。
やめて、やめてよ。そんな目で見ないでよ。
そんな願いも空しく、つかさはこちらを見つめ続ける。
ヒカリが首を縦に振るまで、てこでも目を逸らさないつもりだ。
ヒカリはとうとう観念し、恐る恐るつかさに尋ねる。
「ぼっ……ボクは、面倒臭い女だよ……?」
「……知ってるさ」
つかさは懐からバンダナを取り出し、ヒカリの頭に被せたのだ。
「面倒は……牛の世話で慣れてるよ」
ヒカリはもう前を向いていられなくなった。
俯いて、くしゃくしゃになった顔を見られないように必死だった。
周囲がどっと盛り上がって、みんなが好き放題な事を言っているのを聞きながら、ヒカリは早く泣きやもう、と必死で努力するのだった。
ちひろが船渡夫妻を引っ張り回して踊っているし、輪太郎はメガネを曇らせ、赤い顔で笑いまくっていた。完全にキャラが崩壊している。
それでも皆楽しげだったし、お腹の底から笑っていたのだ。
「まったく、みんな元気だね。雪菜も瞳も綺麗だし……ねえつかさ?」
先にみんなが壊れたため、騒ぎそこなったヒカリは、そう言って振り返る。
だが珍しい事に、つかさは隣にいなかったのだ。
「トイレかな? それともお色直し……って、花嫁じゃないよね」
ツッコミ役がいないので、ボケも自分でつっこまねばならない。大変なので、早く彼を連れ戻そう。
そう思い、目でつかさを探すヒカリだったが……そこで彼を発見した。
彼はなぜか正装だった。
古めかしい紋付袴に身を包み、静かにヒカリに歩み寄る。
「えっ、つかさ、何なのその格好……」
「…………みんなに許可は取ってるよ」
つかさは少し顔を赤らめたが、やがて高らかにうたい始めた。
古い結婚式でよく披露されていた高砂である。
神使達が箒に熊手を持ち出して、彼の歌にあわせて踊っている。
やがてつかさは呼吸を整え、再びヒカリに語りかける。
「モテない男は好き……そう言ったよな?」
「えっ? えっ?」
戸惑うヒカリだったが、つかさは目を逸らしてくれない。
男らしくこちらを見つめたまま、ヒカリがふざける隙を与えないのだ。
やめて、やめてよ。そんな目で見ないでよ。
そんな願いも空しく、つかさはこちらを見つめ続ける。
ヒカリが首を縦に振るまで、てこでも目を逸らさないつもりだ。
ヒカリはとうとう観念し、恐る恐るつかさに尋ねる。
「ぼっ……ボクは、面倒臭い女だよ……?」
「……知ってるさ」
つかさは懐からバンダナを取り出し、ヒカリの頭に被せたのだ。
「面倒は……牛の世話で慣れてるよ」
ヒカリはもう前を向いていられなくなった。
俯いて、くしゃくしゃになった顔を見られないように必死だった。
周囲がどっと盛り上がって、みんなが好き放題な事を言っているのを聞きながら、ヒカリは早く泣きやもう、と必死で努力するのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる